東京理科大学の進路(大学院進学)、就職先について

1. そもそも東京理科大学とは?

①首都圏では誰でも知っている大学だが…

東京理科大学は地味目な印象はあるものの、理系に特化した私立大学で、首都圏では誰でも知っている大学である。

他方、首都圏以外に行くと、東京理科大学の知名度は極端に落ちるので概要を説明しておきたい。

東京理科大学の歴史は古く、明治14年に前身となる東京物理学校が設立された。
現在では、1学年3,700人強の大学であり、同じく理系に特化した東京工業大学が1学年1,100人であることを考えると、かなりの規模であることがうかがえる。

また、少々意外かも知れないが、東京理科大学の女子学生の比率は約1/4である。東京工業大学が約12%なので、比較すると倍である。「リケジョ」という言葉が知られてきているので、女子学生に訴求できるということは今後重要になるだろう。

難易度についても、早稲田や慶應の理工学部とほぼそん色のないレベル(せいぜい1ノッチ程度低い位である)であり、かなりの難易度となっている。

<パスナビ:東京理科大学の偏差値>

https://passnavi.evidus.com/search_univ/2880/campus.html

②著名な卒業生は

地味目ではあるが、歴史のある実力派の大学だけあって、産業界や学術界において多くの人材の輩出している。

学術界では、何といってもノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智氏が有名である(但し、大学院のみ)。

産業界では、花王の中興の祖である常盤文克氏、富士通前社長(元会長)の田中達也氏、リコー前社長の三浦善司氏、ヤフー元社長の井上雅博氏、サイゼリヤの創業者の正垣泰彦氏、istyleの吉松徹郎氏等、大企業の経営者から起業家まで、多くの人材を輩出している。

政治家や芸能界にはあまり卒業生がいないのが弱みであるが、最近では、ムロツヨシさんが有名である(但し中退)。

2. 東京理科大学の学生の進路について

①他のトップ校の理系の学生同様、多くが大学院に進学

東大、東工大、早慶の理工学部の場合、多くの学生が大学院に進学する。
特に、授業料が安い国立大学の場合は顕著であり、東大の理系学部は約8割、東工大に至っては約9割が大学院に進学している。

東京理科大学の場合、私立大学なので相対的に授業料が高いという弱みがある。例えば、2021年5月時点において、東京理科大学の修士課程の授業料は施設設備費を含めると約100万円である。他方、東京工業大学は、2019/4入学生より授業料を値上げしたが、それでも63万5千円である。このため、東大工学部や東京工業大学と比較すると大学院進学率は低くなっている。もっとも、私立大学の理系ということを考えると、決して授業料は高くはないだろう。このため、ほぼ半分の学部生が大学院に進学しているので、私立大学の中では決して低い大学院進学率ではないと思われる。

<東京理科大学の授業料>

https://www.tus.ac.jp/admis/expense/

このため、東京理科大学の学部生で就職する者はほぼ半分位である。

なお、公務員と教員になる者は就職者のうちの約1割程度であり、民間企業に就職する者の割合が高い。

②東京理科大学の主要就職先について

気になるのは、東京理科大学の学生の就職先企業である。
これについては、1社につき6名以上の入社実績のある企業について、大学側が公式HPで開示をしてくれている。
https://www.tus.ac.jp/career/shuyou.html

ここからイメージを掴むために、上位30社を抜粋すると以下の様になる。
なお、これは学部生・大学院生を合わせたデータである。

(2020年3月卒業生)
順位 企業名 就職者数
1 パナソニック 26
2 ソニー 25
3 キャノン 23
4 日本電気 22
野村総合研究所 22
6 本田技研工業 20
7 日立製作所 19
8 東京都 18
SCSK 18
10 清水建設 17
トヨタ 17
TIS 17
13 富士通 16
NTTデータ 16
アクセンチュア 16
日本IBM 16
三菱電機 16
東京電力ホールディングス 16
19 ソフトバンク 15
20 シミック 14
20 日本総合研究所 14
20 IQVIAサービシーズジャパン 14
23 鹿島建設 13
24 東日本電信電話 12
25 東日本旅客鉄道 11
23 デンソー 11
NECソリューションイノベータ 11
メイテック 11
NTTドコモ 11
村田製作所 11
りそな銀行 11
29 NTTコミュニケーションズ 10
伊藤忠テクノソリューションズ 10
大成建設、凸版印刷、大和総研、三菱ケミカル、日本製鉄他 10

(出所:東京理科大学公式HPより抜粋)

③東京理科大学の就職状況の評価

上記の主要就職先企業名からうかがえるように、東京理科大学の就職状況は極めて良好である。

当然、東京理科大学の学生がESで跳ねられることはなく、面接会場に行くと、周りは、東大、東工大、早慶ばかりという状況が珍しくない。

実際、東京工業大学の就職先と比べても特に遜色は無いのではないだろうか。

<東京工業大学の就職と課題>

https://career21.jp/2019-01-27-094225/

東京理科大学の学生はよく勉強するというイメージがあり(実際そうらしいが…)、企業からの評価も良好だということだ。

3. 東京理科大学の就職における課題

①文系的な人気企業にも就職させるべきか?

東京理科大学の就職先については、理科系の学生が好む大手の一流企業に対しては極めて良好であり、とくに課題は無いだろう。

もっとも、少子高齢化の将来の状況を考えると、東京理科大学とは言え、優秀な学生を確保するためには現状に満足すべきではない。

特に、極めたコンセプトの東京工業大学が上位に位置しているため、何らかの差別化戦略も採りたいところだ。

そうなると、現在はあまり就職者が多くはない、文系的な人気企業にも卒業生を送り込むのが望ましいのではないだろうか?

具体的には、総合商社、金融、マスコミ、大手ネット系ベンチャーである。
今は、とにかくAI、デジタル・トランスフォーメーションということで、典型的な文系企業でもIT周りに強い学生に対するニーズはすこぶる強い。

例えば、総合商社を見ると、東京理科大学からは、三菱商事に1名、住友商事に1名、丸紅に2名、双日に1名就職しているが、まだまだ増やすことは可能であろう。

また、トップティアの金融機関もフィンテック人材ということで、理科系の学生に対するニーズは強い。東京理科大学からは、東京海上日動火災に2名、日本生命に2名、野村證券に3名送り込んでいるが、このあたりも増加させることはできるだろう。他にも、クオンツという切り口から、金融機関のリサーチ部門や運用会社の運用部門等への就職の可能性もあるので、金融部門を強化すると面白いのではないだろうか。

特に、課題があると思われるのは大手のネット系ベンチャー企業である。
2019/3卒については、ヤフー3名、楽天2名、サイバーエージェント0名というのは、寂しい限りである。この点、東京工業大学の場合は、ヤフー20名、楽天2名、サイバーエージェント2名である。

確かにサイバーエージェントはキャラ的に合わない気がしなくもないが、ヤフーは創業者の井上雅博氏が東京理科大学の卒業生でもあるので、もう少し頑張りたいところだ。

②ベンチャー起業について

ここは、テクノロジーのスキルが求められるので、まさに東京理科大学が頑張るべきところである。

古くは、サイゼリヤの創業者の正垣氏や、ヤフーの創業者の井上雅博氏が有名であるが、残念ながら比較的最近の、ネット系ベンチャーで東京理科大学出身者の名前をあまり聞かない。

ベンチャー起業で成功すると、メディアでも取り上げられやすく、大学の知名度を上げるにはもってこいである。

現時点でも、「東京理科大学 研究戦略・産学連携センター」が大学発ベンチャーの起業家支援を行っている。

<東京理科大学:大学発ベンチャー>

https://www.tus.ac.jp/ura/venture/index.html

しかし、まだまだ顕著な実績は無く、このままでは不十分である。そこで、ここではOB会に頑張ってもらって、ファンドを作るとか、VCと連携するといった施策を積極的に採用することが望ましいと思われる。

③大学の知名度アップのための諸施策

東京理科大学の最大の弱みは、全国的な知名度であろう。
もちろん、全国的な知名度が無くとも、東京がビジネスの中心であるので無理する必要は無いという考え方もあるだろう。

しかし、少子高齢化という流れを考えると、もう少し知名度があった方が大学全体としてのブランド価値が高まるだろう。

早稲田大学でさえ、推薦入学とかで芸能人を採用したりしているので、東京理科大学もジャニーズジュニアを推薦で入学させる位の大胆な打ち手を考えたいところだが、流石に難しいかも知れない。

それが難しいのであれば、明治大学が成功したような、イメージアップ策を取るべきである。
明治大学も昔はバンカラなイメージがあったが、洗練された都会的なイメージアップに成功し、女性からの人気度が向上する等、全体的な底上げに成功している。

東京理科大学の場合、メインキャンパスが、理学部は都心の神楽坂、工学部は葛飾区に分かれているためプロモーションの仕方が難しいが、都心の一等立地と最新設備(葛飾キャンパスは2013年に開設)のそれぞれの良さを上手くアピールすればいいのではないか。

<東京理科大学:キャンパス>

https://www.tus.ac.jp/info/campus/

4. コロナ後の時代と東京理科大学の評価と対応

2020年初頭に発生したコロナウイルスの問題は、景気や雇用に深刻な影響を及ぼしている。22卒についてはほぼ当初の採用計画の通りに採用が行われたという見方があるが、2021年5月時点においてまだまだコロナが収束する気配はない。このため、23卒以降の採用状況については不透明な部分が残る。

もっとも、長期的に見ると、これは東京理科大にとってネガティブになるとは限らない。リモートワーク化が浸透し、テクノロジーが更に脚光を浴びる時代となってきた。もともと、IT関係で優れた人材が不足していたわけなので、東京理科大学及び学生の評価を上げるチャンスと捉えることもできる。

その際、従来通り、理系だけの枠で戦うとした場合、国立大学や早慶の理系とメーカー系で戦うとなかなか相対的な順位・評価を上げることは難しいかも知れない。

しかし、今後は、金融、商社、ベンチャー企業等においてますます優秀な理系の人材が必要になる。このため、院卒の場合でも、あえて文系就職を狙ったり、或いは、フリーランスや起業を目指すところに勝機があるかも知れない。

理系だからといって、研究一辺倒である必要は無く、ビジネスや年収にも関心を示してみるのも面白いのではないだろうか?

実際、東大工学部においても、そのような動きが見え始めているので、東京理科大の学生も視野を少し拡げてみるのもいいだろう。

<東京大学工学部でも年収にこだわり?>

https://career21.jp/2018-11-20-124311/

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