1. ブログ界のカリスマ、イケダハヤトさんがセミリタイアを宣言
元祖プロブロガー、或いは、ブログ界のカリスマである、イケダハヤトさんが資産1億円を超えたということでセミリタイアを宣言され、注目を集めている。
http://www.ikedahayato.com/20190819/79938424.html
イケダハヤトさんは、まだツィッター、YouTube、フェイスブックが普及していない2009年からブログを始め、2014年には高知に引っ越しをしたことで知られている。
彼はまだ大してブログでは稼げない(年収数百万円程度)時代から、元祖プロブロガーとして活動を始め、その後徐々にブログ関連の収益増大に成功し、仮想通貨バブルの2017年にはブログで年商1億5000万円を達成した。
ところが、仮想通貨バブルが崩壊しアフィリエイト収益が減少し、また、最近では「これからは動画だ」ということで主戦場をブログからYouTubeにシフトしていた。
そうした中、突然、資産が1億円を超えたので、セミリタイアする旨宣言されたので、彼のファンを始め、ブログ界においてはニュースとなっている。
ちなみに、このメディアを始めるにあたっても、イケダハヤトさんのコンテンツを参照し、以下の様な有料コンテンツも複数購入した。特に、開始初期の、最初の半年くらいは大いに参考になり、順調に月間PVも増加させることが出来た。
<イケダハヤトさんのブログ運営の教科書>
https://note.mu/ihayato/n/n8ee74b9b0eb6
そういった事情もあり、ブログ界隈では、「資産1億円」とか「セミリタイア」という話題が盛り上がっているのである。
2. それでは、貯金1億円あれば本当にセミリタイアできるのだろうか?
①そもそも想定が無理?
「資産1億円でセミリタイア」というと優雅な響きであり、うらやましく感じる人も少なくないかも知れない。
しかし、最初に気になるのは、そもそもゼロ金利の環境下、1億円で本当にセミリタイアできるのかということだ。
特に、家賃・不動産価格の高い東京に在住している人であればすぐにわかる話であるが、資産(貯金)1億円位でセミリタイアしようというのは無理な話である。
1億円を数%の利回りで運用して、賃料と物価水準の低い田舎暮らしで地味な暮らしをすることが前提になっているようだが、多くの場合、家族の事情があり、簡単に田舎暮らしを始めることは現実的ではない。特に、お子さんがいらっしゃる場合には、子供の教育の問題も生じるので、なおさら、ローコストの田舎暮らしと言うわけには行かない。
②それに、1億円を貯めることができる様な人は、田舎暮らしに耐えられない?
資産(貯金)1億円でセミリタイアといっても、退職金とか相続に頼らずに1億円を貯めるのはかなり大変である。1億円を貯めるには高収入が前提となるが、高収入の場合には税率が高くなるし、生活コストも通常高いので それなりに時間がかかる。
年収3000万円の場合だと、手取りは1800万円程度なので、かなりの節約をしたとしても1年間の貯金額は1000万円程度である。
そうすると、1億円を貯めるには、10年くらいかかってしまう。
年収2000万円だと、当然、それ以上時間がかかってしまう。
年収数千万円を稼ぐには、多くの場合は、東京等の大都市に在住する必要がある。
そのような大都市に在住して、数千万円を継続的に稼ぐことができるような有能な人達が、突然、田舎で年収数百万円の生活に耐えられるとは考えられず、資産(貯金)1億円貯まったぐらいでは、セミリタイアには不十分と思っておいた方が良いだろう。
3. そもそも1億円を3%で運用するということの問題点
①グローバルで低金利の環境下、円ベースで3%の利回りを確保するのは容易ではない
この手のセミリタイアの話の前提になっているのが、資産運用によって数パーセントの利回りを確保し、それを生活費に充てるということである。しかし、グローバルに超低金利な環境下においては、3%の利回りを実現するのは至難の業である。
国内の預貯金、公共債だと、3%はおろか、1%の利回りさえ確保できない。
そうなると、リスクを取って、桐谷さんのように国内株式の配当利回りと優待券で生活しようとしても、東証一部上場企業の配当利回り(加重平均)は2.54%しかない(2019年8月時点)。
また、外貨建ての金融商品に注目しても、日本に限らずグローバルで低金利の環境が継続しているため、日本人に人気のオーストラリアやニュージーランドの国債利回りでも、1.5%に満たない(2019年9月12日時点)。
https://www.bloomberg.co.jp/markets/rates-bonds
②ETF、インデックス投信で安定運用と言うのは簡単だが…
それから、ブログ界隈では、「ETF、インデックス投信を用いた安定運用」というようなことが言われている。確かに、ドルコスト平均法を活用した積立型投資で、ETFを用いてローコストで国際分散投資を行うというのは理に適っている。
もっとも、これは長期投資で資産形成をしていくことを目的とした投資である。
既に1億円があって、これを原資としてローリスクな運用でインカムゲインを如何にして捻出するかとは別の次元の話である。
③税金も考慮に入れる必要がある
また、仮に利回り3%の運用が実現できたとしても、税金がかかることを考慮しなければならない。有価証券のインカムゲインに対しては20%の税率となるので、3%だと手取りは2.4%になってしまう。
他方、手取りで3%を達成しようとすると、税前で3.75%の利回りが必要となるが、そうなるとますます運用が難しくなってしまう。
④手元流動性も考慮する必要がある
さらに、資産(貯金)1億円といっても、現実的には100%を運用に回すわけには行かず、ある程度の手元流動性ということで、普通預金に一定額を置いておく必要がある。
例えば、1000万円を普通預金にした場合、運用原資が減ってしまうので、この場合、税引後の利回り3%を確保しようとなると、4.17%で回さなければならなくなり、ますますハードルが高くなる。
⑤本当は不動産で運用するのが現実的であるが、それには相応のスキルがいる
以上のように、1億円をローリスクで運用して、田舎で地味目な生活でセミリタイアといっても、超低金利下の現在においては、金融商品の運用で生活費を捻出するのは極めて困難である。
もちろん、リスクを高めれば5%、10%の狙うこともできなくはないが、そうすると、元本が10%、20%簡単に吹っ飛んでしまうリスクを負うことになる。
セミリタイアを謳うブロガー達は、実際に金融商品を運用して生活していることはなさそうで、金融商品の運用益で生活をするというのは机上の空論の様に思われる。
実は、1億円位の貯金額を元手に生活を考えるのであれば、収益不動産への投資を通じた賃料に依拠した生活が現実的ではないだろうか?
実際、外資系金融を40代でリタイアした人達は、多くの場合、収益不動産の運用で生活している人達は多い。(もっとも、原資はもう少し多く、2~3億円位ある。)
不動産であれば、借入によるレバレッジを効かすことができるし、(物件によるが)賃料は安定しているからである。
もっとも、収益不動産は当然それに伴うリスクもあるので、投資を始めるにあたっては相応の学習期間が必要となる。
4. 発想を転換して、セミリタイアよりも一生働ける方法を考えた方が良い?
①セミリタイアの前提が、仕事は辛くて苦痛なものとなっている
上記のように、資産(貯金)を1億円貯めて、セミリタイアを図るというのは、かなり現実性を欠くものである。1億円を貯められる能力・意欲がありながら、田舎に籠って細々と地味な生活を送りたい人などいないだろう。
それに、グローバルな低金利を考慮すると、ローリスクで3%の運用を行うという前提自体が成り立ちにくい。
そもそも、比較的若い段階でのセミリタイアを礼賛する発想自体に問題があり、労働=辛いもの、苦痛なものという前提になっている。
むしろ、1億円を貯められるような高収入な仕事についている人は、仕事をポジティブに考えている人達が多く、実際は、セミリタイアをして毎日ゴルフをするような生活は退屈で苦痛だと感じる人の方が多いのではないだろうか?
従って、1億円の資産形成が視野に入るような人達は、セミリタイアを目指すのと真逆の、生涯(健康でいる間は)働こうと思える仕事(それが副業でもいい)を見つけることを目指した方が望ましいのではないだろうか?
生涯働けるのであれば、反対に、窮屈な生活をして無理やり貯金を増やすのではなく、好きに贅沢に消費をした方が満足感の高い生活が送れるのではないだろうか?(もちろん、そこそこの貯金も必要であろうが)
②セミリタイア礼賛の裏には、サラリーマンを一括りにしてネガティブに捉えられている事実がある
セミリタイアを礼賛する前提として、サラリーマンは全員、ブラック企業で低賃金の苦役を強いられているような想定がなされていると思われる。
しかし、サラリーマンが全員、低賃金・低付加価値的な労働をしているわけではなく、かなりの差があるのが事実である。
この点、セミリタイア推奨のブロガー達は、過去、エリートサラリーマンではなかったため、お金を貯めてさっさとサラリーマンを辞めることを推奨するのではないか?
過去に、三菱商事とかゴールドマン・サックスで働いたことがあれば、そのような発想にはならなかったであろう。
したがって、現時点でブラック企業のサラリーマンであったとしても、いきなりフリーランスでお金を貯めてセミリタイアを目指すのではなく、とりあえず、より好条件のサラリーマンを目指すという選択肢もあるのではないだろうか?
③副業という途があるので、ブログ、SNS等で稼ぐ方法を磨いておくことは賛成
サラリーマンは良くないから、さっさと辞めて、ブログ、SNS等を駆使してフリーランスで稼ごうというのは、ごくごく一部の人にしか当てはまらないだろう。
しかし、仮にホワイト企業のサラリーマンであるとしても、将来に備えてブログ、SNS等を通じて稼ぐ方法も学んでおくことには賛成できる。
特に、今後は終身雇用が徐々に崩壊し、企業年金も過去の様には当てにできないことを考えると、会社のみに頼るというのはリスクが高い。
そこで、副業制度を意識して、サラリーマンもブログやSNSで稼ぐ方法も身に付けておいた方がいいだろう。ホワイト企業勤務のサラリーマンであれば、時間的にも経済的にもそれなりの余裕があるはずなので、プログラミング、英語、会計、Webマーケティング、動画編集等、選択肢は沢山あるので自己投資をしてスキルアップをしておきたいものである。