島根銀行との提携を発表したSBIは、地銀再生を成功させることができるか?

1. 島根銀行がインターネット金融大手のSBIグループの支援受入れを発表

2019年9月6日付で、SBIグループと島根銀行との資本業務提携が発表された。
SBIグループは島根銀行に対して20億円超を出資する方向のようだ。

少子高齢化と過疎化に伴う地方経済の疲弊、超低金利による運用難といった事情から、全国的に地銀経営が厳しいことは経済界では良く知られているので、この島根銀行との提携を含めたSBIグループの一連の地銀再生策が成功できるのかについて関心度が高まっている。

2. 「フィンテック」によって地銀を再生させようとするSBIグループ

SBIグループの北尾社長が地銀再生策の柱と考えているのが、「フィンテック」の活用だ。
フィンテックの活用によって、システム費用を低下させ、地銀の固定費のかなりの割合を占めるシステム費用を減少させる(変動費化する)というのが一つの狙いだ。

また、これは必ずしもフィンテック関連というわけではないが、地銀の資産運用に関するサービスやノウハウが不足しているという問題意識から、SBIグループの金融商品を提供することによって地銀の収益力を底上げすることも企図している。
https://www.sankeibiz.jp/business/news/190821/bse1908210500002-n1.htm

3. 地銀の問題点の抜本的な「フィンテック」によって本当に解決可能か?

①地銀の実店舗とそれに伴う人員にはどう対応するのか?

地銀の抱える構造的な問題点として、コストに関する問題と、収益に関する問題とがある。
このうち、コストに関する問題としては、ネットバンキングの進展に伴う実店舗と、それに係る人員の余剰感ということが指摘できる。

店舗と人員については、地銀だけの問題ではなく、メガバンクも同様であり、三菱UFJ銀行ですら、大幅な店舗リストラプランを公表している。

この問題については、地銀については尚更深刻である。
例えば、SBIグループと提携をした島根銀行の場合、島根県内だけで29店舗、鳥取県内に4店舗ある。3メガバンクでさえ、島根県・鳥取県に店舗があるのはみずほ銀行の松江支店の1店舗だけである。また、島根銀行は第二地銀であり、島根県と鳥取県には第一地銀である山陰合同銀行の店舗が数多く存在する。

今後のネットバンキングの進展や少子高齢化を考えると、島根銀行の33店舗というのは多すぎではないだろうか?

この点、SBIグループは何も触れていない。当然、日本の金融機関であるので、抜本的な店舗閉鎖や人員削減策は最後まで取りたくないだろう。

フィンテックによってシステム費用の削減は期待できるかも知れないが、店舗と人員の問題についてはどう対応するのか、今のところ見えてこない。

②地域マーケットの縮小についてはどのように対応するのか?

地銀の抱える収益面の問題は、何といっても、少子高齢化、過疎化に伴う地域経済の疲弊である。SBIグループは自社グループが金融商品の供給を手助けすると言っているが、需要が喚起できなければ供給を充実させても収益増にはつながらない。

特に、このエリアは高齢者が多いので、投資信託等の変動商品については慎重な売り方をしないとコンプライアンス面がクリアできない。

また、これといった大企業が無いので法人向けのローンのニーズ増加は期待できないし、今後、このエリアでの住宅ローンのニーズが高まるとはあまり考えられない。

このあたりも、フィンテックによっては直接解決できなさそうな課題であるので、気になるところである。

4. 「フィンテック」を徹底させて地銀をチャレンジャーバンク化できないか?

チャレンジャーバンク(デジタルネイティブ銀行とも言う)とは、実店舗は一切持たず、場合によってはPC向けのウェブサイトすら持たない、スマホアプリ専用の銀行を言う。
さらに、コールセンターすらも持たず、顧客とはスマホアプリでの接点のみという徹底ぶりである。

究極の効率化によるローコスト経営によって、高めの預金金利を提供でき、高度な生体認証技術で本人確認を行い、AIを駆使したローン商品や金融サービスの提供を行う、究極のフィンテックに依拠した銀行である。

こういったチャレンジャー銀行は、金融業を主要産業の1つとする英国政府の後押しもあって、アトム銀行(Atom Bank)やTandem Bankなどは既に数百億円規模の資金調達を実行済で、2016年からサービスが開始されている。

「フィンテック」の徹底ということであれば、小規模な地銀については、いっそのこと、チャレンジャーバンクに転換すれば面白いのであるが、店舗や人員の大幅な削減が事実上制限される日本においては、なかなか採りにくい戦略であろう。

もっとも、SBIグループは、住信SBIネット銀行というネット専業銀行を既に有している。
そして、この住信SBIネット銀行は順調に成長拡大しているようである。

こういったネットバンキングのノウハウを地銀にも提供できれば面白いので、いずれ、提携した地銀に対しても体制整備をしていくのであろう。

最後に

地銀の経営難というのが、金融業界、経済界において主要な課題の一つとなってきている。
少子高齢化による国内市場の縮小というのは、日本経済・日本企業全体が抱える大きな課題なのだが、地方はその進行が特に早いので気になるところである。

SBIグループの北尾社長は強気のようで、「(再生には)1年もかけるつもりはない」と述べ、早期に対応できる自信があるようだ。

島根銀行の経営成績が今後どうなっていくか、大変注目されるところである。

  • ブックマーク