第二東京大学構想は東大や早慶にとって脅威か?

1. 第二東京大学構想とは何か?

週刊ダイヤモンドの2019年9月7日号は、「大学激変序列」が特集である。
経済誌は定期的に大学の序列やランキング関する特集記事を掲載しているが、今回ユニークなのは、国公立大学の再編を軸に他大学への影響を検討している点である。
http://dw.diamond.ne.jp/list/magazine

少子高齢化や地方経済の衰退ということを背景に、いわゆるアンブレラ方式(持ち株会社の様に、1つの法人の下に複数の大学がぶら下がる形態)によるものであるが、小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の3つの国立が北海道連合大学機構(仮)を通じた統合について発表した。

また、東海地方では、旧帝大の一角である名古屋大学が岐阜大学とのアンブレラ方式による統合を決定した。

第二東京大学構想というのは、一橋大学、東京工業大学、東京医科歯科大学、東京外国語大学、東京藝術大学の5つの国立大学の統合の話であり、これは2000年代初頭に計画されたが、東京藝術大学の反対によって実現しなかった話である。

現在では、残りの4大学が「4大学連合」という緩やかな連携のみが実行され、単位の相互取得等が出来るに過ぎない。

第二東京大学構想が復活するかどうかはわからないが、各地で生じる国公立大学の統合によって、再び第二東京大学構想が復活し実現すると、他大への影響は大きいのではないかというのが、週刊ダイヤモンドの見立てである。

2. そもそもアンブレラ方式での統合だとインパクトはあるか?

週刊ダイヤモンドによると、第二東京大学構想が実現すると東大や早慶への影響が大きい旨、記載されているが果たしてそうだろうか?

第二東京大学といっても、アンブレラ方式での統合であれば、それぞれの大学名は残るので、受験生からすると大したインパクトは無いのではなかろうか?

他方、それぞれの大学は地味目な大学ではあるものの、それぞれ、歴史や評価は十分に高いので、「みずほ銀行」のような形で今の大学名が完全に消えてしまうのは抵抗があるだろう。

また、その際に付ける新大学の名称がマーケティング的にもかなり重要になると考えられるが、東京都立大学が「首都大学東京」というネーミングで失敗したことを考えると、新ネーミングは難しい。

さすがに、「第二東京大学」というといかにも二軍のようなイメージで有り得ないし、「新東京大学」というのもFランクぽい感じがする。

結局、企業でいう持ち株会社レベルの統合だけであれば、受験生から見た変化はあまり無く、東大とか早慶への影響は大して無いのではないだろうか?

3. 東大や早慶に影響を与えられるとしたら

①東大に無い新学部(学科)を設置して、偏差値上げをする

単なるアンブレラ方式での統合だけだと変わり映えしないように思えるが、やり様によっては東大や早慶に影響を与えるような面白い施策も取り得るだろう。

その1つが、東大に無い新学部(新学科でも良い)を起ち上げて、偏差値上げをすることだ。

例えば、東大には商学部/経営学部が無いので、一橋大学商学部の中に「国際経営学科」というものを作って、募集定員30名位を商学部と独立して募集する。
コンセプトとしては、英語で授業を行い、また、起業をサポートするなどして、将来は国際ビジネスマンや起業家を目指すというものだ。AI/IT関連については東京工業大学と連携したり、医療分野については東京医科歯科大学と連県したり、ベンチャーファンドを作ったりというバックアップがあれば、東大文Ⅱを凌ぐ偏差値を得ることができるかも知れない。

また、私立大学の成功パターンである国際系学部についても面白いことができる。
これは、新設でも東京外国語大学の既存学部の組織改編でも構わないが、国際学部を設置することである。東京外国語大学の国際性に加えて、一橋大学がビジネス面を、東京工業大学がテクノロジー面を全面的にサポートした上で、PRを積極的に行えば、返済的に東大文IIIに近づくことも夢ではないだろう。

②「質」だけでなく「規模感」を強調する

一橋大学、東京工業大学、東京外国語大学、東京医科歯科大学は、生徒数が少なく、規模でいうと東大や早慶に太刀打ちできないので、「質」とか「率」をアピールする他なかった。

有名企業への就職についても、就職者数ではなく就職「率」を強調するしかない。

しかし、本誌の名古屋大学理事・副総長の杉山直氏のインタビューでもあったが、予算、学生数、教員数、国際的なランキングなど、「規模」というものが評価の対象の1つとなることは避けられない。

そうした中、大学の統合によってこうした「規模」感を向上できるのであれば、全体的にポジティブな印象を与えることはできるだろう。

早慶の立場からすると、今でも一橋大学や東京工業大学とのW合格者については、ほとんど全員国立大学に持っていかれているのであろうが、何といっても知名度ではこれらの国立大学に圧勝している。

しかし、4大学の統合によって知名度が上がると、早慶もある程度脅威に感じるかも知れない。

③意図的な就職力の向上

受験生が気になるのは、統合によって就職力がどうなるかということだ。
元々、一橋大学と東京工業大学は民間企業への就職はトップクラスであるが、上手く大学側がサポートすれば更なる就職力アップも可能となろう。

例えば、手っ取り早い就職力アップのためのサポートが英語力の強化だ。
交換留学とか自主的な留学のサポートというのもあるが、東京外国語大学によって、就活のための英語特別講座というのも開設できるかも知れない。

今後は英語だけでなく、中国語のサポート体制が充実すると面白いかも知れない。

また、業種や企業規模の大小を問わず、もっとも人気がある職種がIT関係であろう。
この点、東京工業大学の協力で、プログラミングの基礎講座等を提供したり、文系の学生向けの講座を充実化させると何らかの効果は期待できるのではないだろうか。

さらに、グローバル人材、IT人材の他に、企業が求める人材として、新規事業創造能力がある人材があげられる。このため、起業経験のある学生はいろいろな業界で引っ張りだことなる。この点については、現在一橋大学でやり始めている学生向けのベンチャー支援制度を拡充させると良いだろう。

4大学連合の中で、就活に関して最も恩恵を受けるのは東京外国語大学かも知れない。
現時点でも就職は良好ではあるのだが、一橋大学や東京工業大学、或いは早稲田や慶應と比較すると若干就職力では劣っているのではないかと思われる。

しかし、第二東大構想に参画することによって、大学のブランドイメージが向上したり、ビジネスやテクノロジーに対する知識やスキルを磨くことができるようになると、就職力アップは期待できるであろう。

最後に

そもそも、第二東大構想が復活するかどうかはまだわからない。
実現するとしても、東大や早慶を脅かすほどのインパクトは少なくとも短期間では出せないのではないだろうか。

新大学のネーミング、学部や学科の新設や改変、就職においてサポート体制、研究開発体制の革新等、適切な対策を打って行かないと、現在よりも高い評価を得ることは容易ではないだろう。

ただし、2021年には大学入試改革が始まるのに加えて、2020/3卒業生からは経団連の就活ルールが廃止され、就活の多様化が進展する。
ここ数年で大学を取り巻く環境は大幅に変化するだろうから、各大学の打ち手が大いに注目されるところだ。