金融機関からの、HRテックの雄、SmartHRへの転職について考えてみた

1. 何故、SmartHRか?

①HRテックとは?

HRテックとはHR(Human Resource:人事部等)とTech(テクノロジー)とを掛け合わせた造語で、米国のベンチャー企業を中心に注目されている新規事業領域の1つである。

21世紀に入ると、従来のような土地、資本、労働(ここでいう労働は単純作業に近い)よりも人の知識・知恵が企業活動において最も重要な役割を果たすと考えられている。

そして、AI/IT、クラウドサービスの進展に伴い、その人を取り扱うHR(人事部門)が事務作業から解放され、採用、配置、教育といった高付加価値の戦略的な人事業務にフォーカスすることが期待されるようになってきた。

このような背景の下、Zenefits, OneSource Virtual, Blue Board, Culture Amp, SmartRecruiter等の企業が米国において多額の出資を受けるなど、注目されている。

日本においては、少子高齢化による人材不足が顕著であるため、企業の人事部門がコアな戦略的な人事業務にへの集中を手助けしてくれるHRテックサービスには大きな期待が寄せられている。

②何故、SmartHRが注目されているのか?

日本でも、他のX-Techと同様に、これからはHRテックが来るということでいくつものHRテックを対象としたベンチャー企業が登場してきている。

その中で、SmartHRは従業員の労務管理業務を中心とした人事のバックオフィス業務をクラウドで支援するサービスを提供し、既に多くの企業からの受注に成功している。
現時点では、毎月1,000社以上が導入をするなど、ビジネスは順調に拡大している模様だ。

そして、資金面においても、2019年7月には約61.5億円もの資金調達を公表し、累計の資金調達額は約82億円にもなっている。
https://smarthr.jp/release/15279

このため、将来注目されるであろうHRテック分野において、SmartHRが頭一つ抜け出したような形となっており、一昔前のメルカリの様にほぼ勝ちが見えている状況まで到達してきているのではないだろうか?

2. 金融機関からの転職について

①終身雇用が廃止されると、転職も視野に入れる必要性が…

金融機関はスキルが付くようで、実はあまり付かない。
IBDとかグローバル・マーケットというのはほんの一部の社員に過ぎず、大半の社員はリテール関連とかバックオフィスである。

また、金融機関⇒経理・財務が得意⇒事業会社には幹部社員として引く手あまた、ということは現在では有り得ず、30代、40代、50代と年を取るにつれ、転職価値は落ちていくばかりである。

もっとも、従来は終身雇用が保証されていたので、転職はできなかったとしても会社にいる限りは高給を定年(銀行の場合は50代半ばくらいまで)までもらい続けることができた。

しかし、終身雇用が廃止されてしまうと従来のモデルは通用しないので、チャンスがあるならば転職も視野に入れる必要が生じてきた。

②フィンテックよりもHRテックの方が先に流行る?

それでも、今のところ、メガバンク、大手生損保、大手証券の場合には、それなりの社会的評価がある。また、そういった大手金融機関の者は総じて高学歴であるから、若い間であれば業務経験や確固たるスキルが無くてもポテンシャル採用をしてもらえることも可能である。

そうした中、金融機関であればフィンテックというのが最初に思い浮かぶのであるが、フィンテックベンチャーの存在感はまだまだ薄い。預貯金中心の日本においては、ロボアドバイザーのような有価証券投資を対象としたビジネスは難しいかも知れない。AI活用による与信サービスも、金融機関が過剰な日本においてはそれほどニーズがあるとも限らない。

他方、HRテックに関しては、日本企業の人事部門が総じて力が強く予算もあるため、早々にHRテックベンチャーが早く活躍できる可能性はある。

従って、今のタイミングで、金融機関の若手社員がSmartHRに転職することができれば、上手くキャリアチェンジを図ることができる可能性がある。

③目先の年収は下がりそうな点に留意する必要はある

転職を考えるにあたっての問題点は、給料の高い大手金融機関からベンチャー企業に行くと、年収が大幅に下がってしまうことである。

ベンチャー企業の場合、例え勝ち組であっても、年収1000万円をもらえることはかなり珍しい。従って、ストックオプションをもらいたいところであるが、こういった勝ち組ベンチャーは外部のVCが既にかなりの株数を持っており、どの程度ストックオプションを付与してもらえるかは要確認である。

3. 金融機関からSmartHRへの転職を考える際に、どのポジションであれば採用をしてもらえそうか?

<募集中のSmartHRのポジション>
https://smarthr.co.jp/recruit

①開発(エンジニア職)

ネット系ベンチャー企業の場合、最も多い求人は総じて開発(エンジニア職)である。
SmartHRについても例外ではなく、数多くのエンジニアを募集している。

金融機関の場合は、金融機関のIT職以外は、このポジションで応募することは不可能であろう。

②ビジネス職

いわゆるB to B的な営業職とマーケティング系のポジションである。
営業職については、「フィールドセールス」という名称での募集がある。

「必須要件」についてみると、単なるセールスの実務経験だけで、
「歓迎要件」として「B向けSaasのセールス経験」「システムのセールス経験」とあるのみで、特段専門的なスキルや経験は必要とはされていない。

ある意味、Saasを売るよりも投資信託や保険を売る方が大変であり、金融機関の営業職はタフな仕事であるので、押しが強ければ営業職で採用してもらえるかも知れない。

他には、マーケティング(コンテンツマーケター)という、いわゆるオウンドメディアを通じたマーケティング業務が面白そうであるが、Webメディアの全般的な運営経験が無いと不可能なので、残念ながらこちらのポジションでは応募できなさそうである。

もっとも、ベンチャー企業の場合は社内異動は銀行と違って簡単なので、入社後この種の業務に関与できる可能性はある。

③コーポレート職

いわゆる人事、経理、法務、総務系のバックオフィス職である。
わざわざ大手金融機関からバックオフィスをやるためにベンチャーに転職するのはどうかという考えもあるかも知れないが、事業会社の場合は、金融機関程もフロントとバックの格差が無い。

また、一旦バックオフィスで採用されても社内異動でフロント業務に就くことは十分可能性がある。それに、バックオフィスと言っても、経営企画、IR、ファイナンス職であれば単なる事務職ではなくビジネス職に近い側面もある。

いずれにしても、プログラミングやWebメディア運営が出来ない金融機関の者を採用してもらうには、コーポレート職しか無いので、ここを中心に物色することになる。

大手金融機関のプライドとしては、コーポレートだと経営企画をやりたいと考えるかも知れないが、実は結構ハードルは高い。

必須条件を見ると、上場企業での経営企画経験、アナリスト経験、ファイナンス周りの基礎知識が求められている。事業会社の企画部門の人やコンサルの人が応募してくると、リテール経験しかない金融機関のキャリアだと太刀打ちできないかも知れない。

証券会社の若手であれば、IRのポジションの方が狙いやすいかも知れない。株式というものを取り扱うポジションなので、証券市場に強い証券マンには向いている。もっとも、IRの場合は必須要件として「ビジネスレベルの英語力」が求められているので、ここはTOEIC800位は取っておくなど、何らかの対応が求められる。

経理は、大昔であれば銀行員は重宝されたかも知れないが、必須要件として「経理実務経験」「監査法人等の実務経験」「SaasなどのIT周りのリテラシー」「ビジネスレベルの英語力」と結構要求水準が高い。監査法人勤務の公認会計士とかが応募してくると、なかなか厳しい戦いになりそうだ。

「人事」についてはほとんど全てのネット系ベンチャー企業の求人はあるが、金融機関の若手社員としては応募しにくい。何故なら、金融機関で人事というとエリートが人事ローテーションの過程で行くところであるので、多くの一般社員は配属されないからである。
そもそも金融機関で人事にいればエリートコースなので、あえてベンチャー企業に行くことは考えないかも知れないが…。

最後に

ネット系ベンチャー企業といってもピンキリであり、ほとんどのベンチャー企業は失敗するが、中にはメルカリのように上場前からある程度勝ちが見えている企業もある。
そういうところに、IPO前にうまく入りこめれば、ストックオプションでそれなりのお金を得ることができるかも知れないし、将来ネット系ベンチャー企業でのキャリアを確立することができる。

もっとも、ベンチャー系企業とは言え、勝ち組ベンチャーに入るのは競争も激しく、単に学歴や金融機関としての会社名だけでは不十分な場合も多い。

金融機関からキャリアチェンジを図るのであれば、英語、ファイナンスの勉強の他に、Webコンサルタント周りの学習やプログラミング・スクールに通って理解を深める等、相応の追加的な対応策も求められる。