1. 何故、第二新卒としての転職がチャンスなのか?
①職務経験無しでも就職できる最後のチャンスであるから
一旦大学を卒業してしまうと、それ以降は「既卒」として取り扱われ、「職務経験」が中途採用で転職する場合の最も重要なファクターとなってしまう。
ところが、第二新卒としての中途採用の場合には、「職務経験」があれば加点対象になることもあるが、通常「職務経験」無くとも、ポテンシャルによって採用をしてもらうことができる。
これは、新卒での就活以降、最初で最後のチャンスなので大変重要な機会であり、上手く活用してキャリアアップに繋げたいものである。
②第二新卒と中途採用(キャリア採用)との違いは?
ここで、第二新卒と中途採用(「キャリア採用」という表現が使用される場合もある)の違いを確認したい。
上記①の通り、「職務経験」が採用基準となるか否かが最大の違いであるが、25歳までの若い社員の採用においては両社の差が曖昧な場合もある。
外銀とか外コンのようなプロフェッショナル職の場合には、経験が2~3年であっても、同一の職種であれば中途採用(キャリア採用)として取り扱われる場合もある。
25歳位までの中途採用は、第二新卒という取扱いがなされる場合が多いが、理屈の上では年齢ではなく「職務経験」が選考基準になるかならないかが本質であることを確認しておきたい。
2. 就活と第二新卒との違いについて
就活と第二新卒とは、年齢が比較的近い者を対象とする点では共通しているので、改めて両者の違いについて確認をしておきたい。
①学歴の重要性の違い
就活も第二新卒も、25歳位までの若い人を対象とした、「職務経験」を選考基準としないポテンシャル重視の採用という点では共通している。
このため、ポテンシャルを測る上での基準として「学歴」が重要なファクターになるという点では同様である。
もっとも、就活の場合には「職務経験」が一切無いわけなので、第二新卒と比較すると相対的に学歴の重要性は高いということが言える。
反対に、第二新卒の場合には、就活の時ほどは学歴を重要視してもらえないという見方もできる。
②職歴(会社名)が選考基準にあるかどうかの違い
就活の場合は当然ながら、職歴というものは一切無い。
他方、第二新卒の場合には、短いながらも職歴というものがある。
もっとも、ここで重要なのは、第二新卒の場合には職歴についてはその中味(スキル)よりも、外見(会社名)が評価されるということである。
従って、ベンチャー企業や中小企業でそれなりに働いたつもりであっても、総合商社、大手金融機関、大手メーカー等でほとんど仕事らしい仕事をしていない者の方が評価されるということがある。
だからこそ、ファーストキャリア(最初の就職先)が重要と言われる所以である。
就活で最終的にどの会社を選択するか迷った際には、就職ランキングや就職偏差値が高い会社を選んだ方が無難なのは、そういった評価をされてしまうからだ。
③選考プロセスが異なる
第二新卒の採用プロセスはシンプルである。
職務経歴書(レジュメ)を直接或いは転職エージェント経由で、志望企業に提出し、書類選考を通過すれば、後は面接(複数回)を受けるだけである。
就活の場合には、会社説明会、インターン、OB/OG訪問、筆記試験、ES、GDという回りくどい、選考なのか説明会なのか不透明な儀式が数多く存在する。
選考プロセスにおいては、第二新卒の方が遥かにシンプルで明確である。
④配属先(職種)が明示されるか否か
最近では、金融機関のIBDやグローバル・マーケッツ、外資メーカーのマーケティング職のような若干の例外はあるものの、就活の場合には配属先(職種)が明らかにされないまま入社式を迎えるケースがほとんどである(特に文系の場合)。
他方、第二新卒の場合には、職務経験が選考基準にはならなくても、予め配属先(職種)が指定されることを前提としての採用となる。
この点は極めて重要であり、第二新卒の大きなメリットである。
というのは、同じ会社であっても異なる事業部や異なるスキルが求められる部署への社内異動の希望が叶うことは稀であり、辞表でも出さない限り、まともに配属先の希望は聞いてもらえないことが多い。
その意味で、最初から自分の希望する配属先(職種)を狙うことができる第二新卒は大きなチャンスなのである。
⑤求人情報が明確であるか否か
就活の場合には、何故か機会の平等が厳しく問われるようであり、新卒採用の募集情報については必ず各社のHPで開示されるし、リクナビ・マイナビといった就活媒体を通じて知ることも可能である。
他方、第二新卒の場合には各社のHPで掲載される場合もあるが、必ずしもHPの情報が全てとは限らない。また、リクナビ、マイナビのような一般的な媒体も存在しない。
従って、転職エージェントの活用の巧拙とか、その業界・企業に勤めている人とのネットワークを通じた情報格差が重要になる。
これは、第二新卒に限らず、中途採用(キャリア採用)でも言えることであり、良い転職情報を掴むことができる能力というのは立派なスキルの1つと考えて良いだろう。
3. 第二新卒によるキャリアアップに際して考えておきたいこと
①どれくらいの年収を求めるか?
「やりたいことをやれ」と言われても、大学卒業後数年働いたぐらいでそれが明確になるわけではない。そもそも、同じ職種であっても、その時の景気動向、同僚の状況、給与水準によって満足度は全く異なってくる。
それに年齢や職務経験、家族構成の変化等を通じて、やりたいことはその時々で変わっても不思議ではない。
そこで、キャリアプランを考える上で重要になるのが、どれくらいの年収を希望するかということだ。学生の時は、自分はお金には拘らないと思っていても、卒業後高収入の同期を見たりするとお金が欲しいと思うこともある。反対に、新卒で外銀とか外コンに入れたものの、あまりの激務やワークライフバランスの悪さに嫌気が指して、年収水準を落としても、国内系の優良企業に転職した方が幸福だと感じるようになる場合もある。
将来はまた変わるかも知れないが、現時点での大雑把な年収に対する希望を考えてみるのが良い。例えば、30歳で600~700万円あればOKなのか、少なくとも1000万円は欲しいのか、或いはどうしても数千万円以上欲しいのかによって、キャリアプランは違って来るからだ。
当然ながら、希望する年収水準が高ければ高いほど、選択肢は狭まっていくことになる。
②将来勝負していくことができるスキルを複数考えてみる
終身雇用が廃止されると、ビジネス界で長く生存していくためには、競争力のあるスキルが必要となる。また、経理、人事、営業、ITといった単一スキルだけでは勝ち抜くことが難しかったりするので、多様な観点から、勝負できるスキルを複数持ちたいものである。(キャリアの掛け算)
<ベンチャー企業と複数のキャリアの掛け算>
https://career21.jp/2019-08-21-104144
第二新卒までは、スキルよりも学歴、会社名を中心にポテンシャルで評価してもらえるが、それ以降はスキルが無いと転職は難しくなるし、ましてや、独立・起業を考える場合にはますます競争力を有するスキルが必要となる。
このため、良い機会であるので、第二新卒での転職に挑戦する前に、自分は将来何で勝負できる人材になるのか、そのためには何が必要なのかについてじっくりと考えておきたい。
4. 第二新卒での転職に際して磨いておきたいこと
①学歴
学歴というのは大学の入り直しということではなく、最もストレートな学歴を通じたスペックアップは海外MBAの取得である。
グローバル人材に対する需要が高まっている今日において、海外の有名大学MBAを取得すれば、かなり明るい未来が見えるだろう。
もっとも、それには多額の費用が掛かり(米国だと2年間で2000万円、アジア系でもその半分位は用意する必要がある)、また、それなりの企業名や職歴が要求されるのでハードルはかなり高い。
そもそも、海外MBAを経由しての転職は、第二新卒とは言わないのかも知れないが…
そこで、現実的な方法としては国内MBAというのがある。具体的には、慶應ビジネススクール、一橋MBA(国立キャンパス)、早稲田ビジネススクールの3校で、いずれも夜間のパートタイムではなく、全日制だ。
一橋は最近競争率も高く入学するのが難しいようだが、慶應や早稲田は学部と比較するとかなり入学しやすい。
<一橋大学MBAによるキャリアアップ>
https://career21.jp/2019-03-26-170920
全日制だと会社を辞めなければならないというリスクを負うのだが、全日制だからこそ大学側の就職のサポートをしてくれる。夜間パートタイムだと、転職を前提としていないので大学のサポートはほとんど無いものと考えた方が良い。
従って、会社を辞めるというリスクを伴う行為なので、現在働いている会社が全く問題外だと感じている場合には、有用な選択肢の一つとなる。また、いわゆる学歴ロンダリングなのだが、学歴アップという副次的な効果もある。
②資格取得について
第二新卒で良い会社に行くことがゴールだとすると、あまり難関資格取得に傾倒しない方が良いだろう。
総じて、日本の場合、資格は難関なであるにも関わらず、それだけでは大して稼げないものが多いからである。
公認会計士、税理士、不動産鑑定士、中小企業診断士、社会保険労務士、弁理士、司法書士、USCPAといったところは、働きながらだとかなり大変なので、転職目的のためにはあまりおすすめできない。
狙ってもいい資格があるとすれば、証券アナリスト(CMA)か簿記2級だろう。
両者とも、まじめにやればほぼ確実に取得可能だからである。
証券アナリスト(CMA)は20世紀の時代から、国内系金融機関の専門職に転職したり、社内異動を目論んだりする場合の定番資格であった。金融機関以外でも、事業会社の財務部門やIR部門を狙う場合には有用であろう。
簿記2級は本来は就活の時にとっておくのが望ましいが、知っておいて損はない知識だし、汎用性は高い。
もちろん、証券アナリスト(CMA)や簿記2級だけではインパクトは足りないので、志望動機とかやる気を補完するものという位置づけである。
③各種スキルについて
就活力が弱い者の共通点として、以下の基本的な2つのスキルが弱い場合が多い。
(1)ロジカル(クリティカル)シンキング
(2)プレゼンテーション
この2つのスキルは、第二新卒としての転職活動だけではなく、通常業務や将来の転職・起業においても役立つ重要なスキルである。
先ずは、関連する本を買ってみて勉強するのが良い。
もちろん、本を読むだけではなかなかスキルが上がらないので、社会人向けスクールに通ってみる手がある。
一番ポピュラーな講座は、グロービスのクリティカル・シンキング講座では無いだろうか?
企業によっては福利厚生の一環で、安く受講できるところもあるようだ。12万8000円は若手のサラリーマンには安くない出費かも知れないが、無料のお試しレッスンもあるので、興味があれば挑戦してみたい。
<グロービスのクリティカル・シンキング講座>
https://gms.globis.co.jp/curriculum/crt/
④情報収集スキル
就活力が弱い人達の特徴として、情報収集・分析能力が弱いということが指摘できる。
同じ大学であるにも関わらず、外銀・外コン・総合商社全取りから、無い内定まで物凄く大きな就活結果の格差が生じてしまう。
もちろん、情報収集スキルというのはその1つに過ぎないのであるが、ここには上記のスキルアップと同様に力を入れたいところである。
第二新卒を含む転職活動については、就活と違って、大学もご両親も友達も、誰もサポートしてくれない。従って、自ら積極的に行動して情報を取りにいかなければならない。
そのためには、先ずは、リクルート、JAC、マイナビ、エン・ジャパン、DODAといった国内系大手の転職エージェントには登録すべきである。
加えて、WantedlyもDLして、試してみたいところだ。
また、経済情報や企業情報に疎いと何かと厳しい。
定期購読する必要は無いが、経済3誌(東洋経済、週刊ダイヤモンド、日経ビジネス)あたりは毎週(月曜日に販売)チェックして、面白そうなものがあれば買ってみるのが良い。
若者の新聞離れというのはあるものの、日経新聞電子版(月額4200円)あたりは購読しても悪くないだろう。特に、金融機関や事業会社の財務部門を志望する場合に、今の日経平均、NYダウ、ドル円為替、国債利回りが答えられないようではかなりまずい。
最後に
20世紀のリクルーター制の時代と異なり、今の就活はいろいろ面倒なルールがあり、就活開始が遅れると能力がありながら、満足の行く結果が得られない優秀な学生も少なくないだろう。
最初の会社がイマイチ(会社名と職種)だと、第二新卒を含む中途採用の場合もそれが足を引っ張ってしまう問題点はあるものの、若さというのが極めて大きい武器なので挽回するチャンスはまだまだ残されている。
無策のまま年を取ってしまうと、そのチャンスが無くなってしまう訳なので、第二新卒では早めの準備をして就活のリベンジを図りたいものである。