2019年3月卒業生対象、早稲田大学の就職と課題について

1. 早稲田大学の就職状況について

2019年3月卒業生対象(2018/9卒業生も含むので厳密には2018年度卒業生対象)の、
早稲田大学の就職状況が大学公式HPで開示されたので、その分析を行いたい。

なお、慶應義塾大学と東京大学の2019年3月卒業生対象の就職状況に関しては、こちらをご参照下さい。

<2019/3卒対象の慶應義塾大学の就職状況について>
https://career21.jp/2019-08-20-125354

<2019/3卒対象の東京大学の就職状況について>
https://career21.jp/2019-08-22-100733

①大学による就職状況の開示

早稲田大学は、学部別も含めて、かなり詳細な就職状況について開示をしている。
全学部・大学院を合わせて5名以上の就職先企業名を全て学部別・研究科別に開示をしてくれているので、便利である。

https://www.waseda.jp/inst/career/assets/uploads/2019/07/2018careerdata.pdf

②主な就職先の状況

詳細な情報は上記のリンク先の通りであるが、早稲田大学の就職状況の全体的なイメージを把握するために、大学院を含む上位就職先トップ20を紹介する。

このデータは2019/3卒業生(2018/9卒も含む)を対象とした最新のものである。
なお、早稲田大学の大学院も含めた全ての就職者数の合計は、8,709名である。
また、大学院を除いた、学部卒業生の就職者数の合計は6,647名である。

いずれも、慶應義塾大学と比べると、早稲田の方が40~50%人数的に多くなっている。

全学部・大学院対象(就職者数:8,709人)
順位 会社名(団体名) 人数
1 富士通 83
1 三菱UFJ銀行 83
3 NTTデータ 76
4 東京都 73
5 三井住友銀行 70
6 アクセンチュア 66
7 日本放送協会(NHK) 64
8 みずほフィナンシャル・グループ 62
9 三菱電機 61
10 東京海上日動火災保険 53
10 アビームコンサルティング 53
12 大和証券 51
13 楽天 50
14 日立製作所 48
14 パナソニック 48
14 特別区(東京23区)職員 48
17 日本IBM 47
18 ソニー 46
19 日本航空 45
19 東京都教員 45

(出所:早稲田大学HPより)

また、業種等の特徴を掴むために、慶應義塾大学(全学部・全大学院対象)と並べて、上位20社リストを作ると、このようになる。

(早稲田大学と慶応義塾大学の就職先上位20社の状況:大学院も含めたランキング)
早稲田 慶應義塾
1 富士通 慶應義塾
2 三菱UFJ銀行 東京海上日動火災保険
3 NTTデータ アクセンチュア
4 東京都 三菱UFJ銀行
5 三井住友銀行 三井住友銀行
6 アクセンチュア みずほ銀行
7 日本放送協会(NHK) 富士通
8 みずほフィナンシャル・グループ 三菱UFJ信託銀行
9 三菱電機 野村證券
10 東京海上日動火災保険 アビームコンサルティング
11 アビームコンサルティング ソニー
12 大和証券 大和証券
13 楽天 東京都
14 日立製作所 日本放送協会(NHK)
15 パナソニック 日本IBM
16 特別区(東京23区)職員 三井住友信託銀行
17 日本IBM NTTデータ
18 ソニー 三井住友海上火災保険
19 日本航空 三井物産
20 東京都教員 電通

(出所:早稲田大学HP及び慶應義塾大学HPを基に作成)

これを見ると、早稲田と慶應とでかなり被っていることがうかがえるので、違いを更に明確化するために、両校で上位20社に入っている企業(団体)を取り除くと、以下のようになる。

(早稲田大学と慶応義塾大学の就職先上位20社の状況:大学院も含めたランキング)
早稲田 慶應義塾
1 慶應義塾
2
3
4
5
6
7
8 三菱UFJ信託銀行
9 三菱電機 野村證券
10
11
12
13 楽天
14 日立製作所
15 パナソニック
16 特別区(東京23区)職員 三井住友信託銀行
17
18 三井住友海上火災保険
19 日本航空 三井物産
20 東京都教員 電通

(出所:早稲田大学HP及び慶應義塾大学HPを基に作成)

2. 早稲田大学の就職状況の評価

世間のイメージ通り、また、上位就職先企業を見ても明らかであるが、就職状況は良好であると言える。

業種別の傾向としては、慶應と同様に、大手金融機関が目立ち上位20社中5社を占めている。

また、人気のコンサルティング・ファームについては、アクセンチュアとアビームコンサルティングが上位20社にランクインしており、この点も慶應と同様である。

なお、早稲田大学の特徴としては、上位に電機系メーカーが多いことであり、富士通、三菱電機、日立製作所、パナソニック、日本IBM、ソニーと5社がランクインしていることが指摘できる。

他に上位20社に入っている企業としては、NTTデータ、NHK、日本航空などの人気企業が見られ、ここからも就職状況の良さがうかがわれる。

3. 東大、慶應義塾と比較するとどうか?

早稲田大学は文句なく、慶應義塾と並ぶ、日本でトップクラスの大学であるので、就職状況が良好であることは誰でも知っている話である。

そこで、気になるところは、他の有力大学と比べてどうかということである。
就職については、異なる業界の企業同士を比較することは難しく、主観的な価値観によって善し悪しは分かれるので、厳密な評価を行うことは難しい。

①5大商社への就職者数に基づく比較

そこで、最も普遍的な人気かつ難関業種ということで、総合商社(上位5社)への就職データを用いて、比較をしてみたい。

これは、慶應義塾大学の就職状況の分析に際して行ったのと同じ手法であるが、今回は早稲田大学側の観点から検討したい。

早稲田、慶應義塾、東大からの5大商社への就職状況は以下の通りである。

早稲田 慶應義塾 東京大学
三菱商事 17 29 19
三井物産 30 41 13
住友商事 31 39 21
伊藤忠 20 25 12
丸紅 18 21 8
合計 116 155 73

<早稲田、慶應義塾、東大からの5大商社への就職者数(2019/3卒業生対象)>

(出所:AERA2019年8月5日号掲載データより抜粋・編集。元データは大学通信、各大学公式HP、東京大学新聞を基にAERA編集部が集計。)

これを見ると、5大商社への就職者数は、慶應が早稲田を3割以上上回っている。
そして、早稲田の方が慶應よりも就職者数の合計(母集団)が5割程度多いことを勘案すると、5大商社に関しては、慶應の方が早稲田よりも有利と言えるだろう。
もっとも、両校とも5大商社への就職する者の比率は数%のレベルであるので、いずれにしても難関であり、慶應に進学すれば内定をもらいやすいとは言えない点に留意する必要がある。

②マスコミはどうか?

もっとも、早稲田というとマスコミではないかということで、AERAのデータを基に、慶應との比較表を作ってみた。

予想通り、早稲田からのマスコミへの就職状況は良好なのであるが、慶應は全ての業種に強いので、両校とも同じ位であろうか。
ただ、電通・博報堂については慶應が若干優位か?この両社に関する慶應の就職力の強さには驚くべきものがあり、就職者数を勘案しても、東大よりも優位かも知れない。

<大手マスコミに関する早稲田と慶應の就職状況(2019/3卒業生対象)>

早稲田 慶應義塾
博報堂/博報堂DYMP 20 37
電通 26 41
小学館 4 3
集英社 5 5
講談社 3 3
KADOKAWA 7 4
日本経済新聞 13 4
朝日新聞 10 9
TBS 8 7
日本テレビ 7 9
テレビ朝日 NA 5
フジテレビ 7 4
テレビ東京 6 NA

(出所:AERA2019年8月5日号掲載データより抜粋・編集。元データは大学通信、各大学公式HP、東京大学新聞を基にAERA編集部が集計。)

4. 外銀、外コンへの就職状況

①ゴールドマン・サックスで存在感を示した早稲田

総合商社については、上記の通りであるが、外銀は採用者数が少ないために、総合商社を上回る難関企業だと言える。特に最近では、ドイツ銀行のリストラが報道されている中、欧州系が全般的に元気がなく、業界全体の枠が減ってきている模様である。

外銀というか、金融機関においては慶應の方が金融志向が強いので、外銀においては東大と慶応の2強というイメージであったが、近年では早稲田も巻き返してきているようである。

2019/3卒業生については、早稲田からゴールドマン・サックスへの就職者数は9名であり、慶應義塾の11名と拮抗してきている。

他の外銀については、早稲田は4名以下の就職先の開示をしていないので不明である。

いずれにしても、外銀は特殊な世界なので、多くの学生が志望するとは限らないし、全体でみるとほんの僅かなのであるが、ゴールドマン・サックスの状況を見ると超トップ層は東大や慶應と対等に戦えるのかも知れない。

②外コン(戦略系)への就職は?

外銀、外コン、総合商社ということで、外コンへの就職状況も気になるところであるが、ここは本当に採用する人数が少なく、国立の理系院卒が優位なようである。

早稲田大学の場合、4名以下の就職先については開示が無いので、外コン(戦略系)、要するに、マッキンゼー、BCG、ベイン、ATカーニー、アーサーD.リトル、ローランドベルガーについてはN.A.であった。

外コン(戦略系)については、特に文系の学生が内定を取るのはほとんど不可能な世界であり、どうしても入りたければ、中途で入るキャリアプランを検討した方が賢明ではないだろうか?

このあたりに関心がある人は、こちらの過去記事をご参照ください。

<文系の就活生がマッキンゼーから内定をもらうのは不可能なのか?>
https://career21.jp/2019-08-22-140957

5. 学部間の就職力の違いについて

①政経・法・商・理工とそれ以外の学部

早稲田の場合、学部数が多く、気になるところは学部間における就職力の格差では無いだろうか?

この点についても、就職先企業をスコアリングすることは不可能なので厳密な比較はできないのであるが、従来の伝統的なイメージだと、政経・法・商・理工とそれ以外の学部の間に差があり、その中でも、看板学部である政治経済学部が頭一つ抜けているというものである。

確かに、その傾向は今でもあてはまるかも知れないが、ある程度学部間の差は詰まってきているように思われる。特に社会科学部とかは偏差値的にも上位学部に追いついてきたので、就職力もそれに伴って改善してきていると思われる。

そして、注目されるのが比較的新しい国際教養学部である。
ここはほぼ政治経済学部に追いついてきたと言っても過言ではない。この点については後述する。

この辺りの早稲田大学の各学部の就職状況について関心がある場合には、2018/3卒業生対象のものであるが、以下の過去記事をご参照下さい。

<2018/3卒対象 早稲田大学政治経済学部の就職について>
https://career21.jp/2019-02-13-064734

<2018/3卒対象 早稲田大学商学部の就職について>
https://career21.jp/2019-02-17-074817

<2018/3卒対象 早稲田大学社会科学部の就職について>
https://career21.jp/2019-02-21-083822

<2018/3卒対象 早稲田大学法学部の就職について>
https://career21.jp/2019-04-15-122028

<2018/3卒対象 早稲田大学国際教養学部の就職について>
https://career21.jp/2019-02-19-064858

②総合商社への就職者数を通じた比較

早稲田の場合、学部間の就職格差がどれくらいあるかというのを定量的に示すのは難しい。学部が異なると、当然学生の志向も当然異なるので、評価が難しい。

そこで、普遍的に人気と難易度が高い総合商社(5大商社)への就職者数を基に比較すると以下のようになった。

 

三菱商事 三井物産 住友商事 伊藤忠 丸紅 合計 就職者数 就職率(%)
政治経済 6 10 10 7 3 6 801 4.5
3 2 3 2 5 15 615 2.4
教育 0 0 2 1 2 5 745 0.7
0 4 3 2 0 9 893 1
社会科学 0 1 2 1 2 6 579 1
人間科学 1 0 0 0 0 1 499 0.2
スポーツ科学 1 0 1 1 1 4 328 1.2
国際教養 1 5 2 4 3 15 442 3.4
文科構想 1 0 3 1 1 6 772 0.8
文学 0 2 0 0 0 2 531 0.3

(出所:早稲田大学HPより集計)

やはり、政治経済学部がダントツで続いて法学部と、昨年同様に、偏差値的に高い学部の総合商社への就職率が高い。

また、注目の国際教養学部については、こちらも昨年同様に、政治経済学部に次ぐ2位のポジションにつけている。

今年は、商学部が不調のようで、5大商社への就職者数が昨年から半減してしまっている。この結果、社会科学部やスポーツ科学部と差がなくなっている。この点については、来年以降の動向が注目される。

③飛躍する国際教養学部について

昨年に続いて、国際教養学部の就職の良さが目立つ。
総合商社こそ、政治経済学部についで2位であったが、外資系企業のようなグローバル志向の強い企業については、特に優位性があるようである。

今年度の場合、特に光るのがゴールドマン・サックスへの就職者数が5名ということであり、これは政治経済学部の2名を上回る。

それ以外に全体的に見ると、アクセンチュア8名、デロイトトーマツコンサルティング4名、アビームコンサルティング3名、EYアドバイザリー&コンサルティング3名、PwCコンサルティング2名、ベイカレントコンサルティング1名など、人気のコンサルにも強い。

また、マイクロソフト1名、日本ロレアル1名、Google3名、ジョンソン&ジョンソン1名など、外資系においても成果を出している。

また、電通1名、博報堂3名他、人気のマスコミにも就職実績がある。

やはり、少子高齢化に伴う国内市場縮小化により、企業が生きていくためには外で稼ぐ必要があり、そうなると必然的にグローバル人材の価値が高まる。この流れの中で国際教養学部は着実に実績をつけてきている。

6. 早稲田大学の就職における課題について

①大学側の課題

早稲田大学の就職状況は良好であり、就職者数の多さを考えると、大学にできるサポートも物理的に限界がある。

もっとも、最近では就職については、慶應>早稲田ということが定説化し始めているので、これについては何らかの手を打ちたいところである。

打ち手はそれ程無いかも知れないが、稲門会とのタイアップによって得意のマスコミに関する就職状況を更に強化したいところだ。やはり、慶應よりは優位であるジャンルを作って存在感を示したい。

また、切り口を変えて、ベンチャー起業周りを強化するというのも面白いのではないか?
もともと早稲田は大学院も含めて、起業分野については競争力がある。
それに、メルカリの山田氏の様に、こちらの世界で大成功しているOBも多い。

ベンチャー起業については、ライバルの慶應はSFCの専管事項に様になって来ており、三田キャンパスは総じてベンチャー起業系には関心が薄そうであるので、狙い目であるだろう。

②生徒側の課題

20世紀においては、早稲田と慶應とでは特に大きな就職の差は無いと考えられていた。
就職力において、慶應>早稲田という風に捉え始められたのは21世紀に入ってからのことではないだろうか?

それは、早稲田の就職力が相対的に低下したのではなく、慶應の就職力が上昇したのではないだろうか。

その理由としては、三田会を中心とする結束力の強さとか、受験における難易度の変化等言われているが、それらは本質的なものではないだろう。

21世紀に入ると、企業側の評価基準が変化し、それにフィットできているか否かの違いではないだろうか。昔は、英語力、資格、ビジネスセンス、リーダーシップといった知識やテクニック的なものは求められず、体育会、ゼミ等のコネを通じて相性のようなもので決まっていた。

しかし、21世紀に入り、徐々に日本企業の競争力とプレゼンスが低下する中で、企業側も新卒採用であるにも関わらず即戦力的なものを求めるようになったと考えられる。

そうなると、英語力、留学経験、資格、成績、プレゼンテーション能力が必要となり、相応の準備をするか否かで差がつくようになってきた。

新設学部の中でも、国際教養学部の就職力は法学部や商学部を抜いて政治経済学部と肩を並べるくらいになっているが、それは英語力、グローバル・リーダーシップという点で先行しているからではないだろうか。

そうだとすると、いわゆる人気度や難易度が高い企業から内定を取ろうと思えば、早い段階から対策を立てて実行していかなければならないので、それを十分に行うことが課題なのかも知れない。