外資系運用会社(バイサイド)への転職に必要な、経験、年齢、資格等について

1. 外資系運用会社(バイサイド)の魅力

外資系運用会社は、外銀(外資系証券会社)と比べると、若干マイナーな存在で、年収水準も同じ職種・タイトルで比較すると、外銀に敵わない。

しかし、外資系運用会社でも、30歳でフロント部門のVPであれば年収2000万円程度は期待できるし、40歳前後になれば年収3000~4000万円は可能である。

また、45歳定年とも言われる外銀と比べると、50歳を過ぎてもポジションがあり長く働くことができるし、ワークライフバランスも優れている。

このため、リスク・リターン的に、国内系金融機関と外銀との中間的な位置にあり、魅力のある業界であると考えられる。

<運用会社の年収、将来性等について>
https://career21.jp/2019-01-09-072810

2. 外資系運用会社に転職するために重要なのは、業務経験と年齢

どこの業界も同じであるが、転職するために重要なアイテムは、当該ポジションに対する「業務経験」と、当該ポジションに適した「年齢」の2つである。

外資系運用会社の場合、「業務経験」というと、運用経験(ポートフォリオ・マネージャー)、営業経験、ミドル・バックオフィスの経験ということになり、基本的に運用会社における当該ポジションについての経験が求められる。

業務経験さえあれば、後は「年齢」のフィット感が求められる。
外資系企業といっても、運用会社の場合は役職員のほとんどが日本人であるため、年功序列である。したがって、若すぎてもダメだし、年を取りすぎていてもダメ、年下の上司・年上の部下というのも成立しにくい。

このように、外資系運用会社に転職するには、「業務経験」を有し、「年齢」に適したポジションを探すことが必要となる。

「業務経験」ということについては、運用業界(バイサイド)での経験が求められる。
この点、業務経験が有りとして取り扱ってもらえるかどうかが微妙なのは、証券会社(セルサイド)の場合である。

また、証券会社以外の、事業会社出身となると「業務経験」有りとは認められないので、かなり難しくなる。

このため、以下、運用会社、証券会社、事業会社と現在いる業種ごとに分けて検討することとする。

3. 運用業界からの外資系運用会社への転職について

①20代(VP未満)での転職はおすすめできない

ここでは、国内系運用業界から外資系運用会社への転職に絞って検討する。
既に運用業界にいるのであれば、同じ職種についてであれば、外資系運用会社への転職はそれほど難しくはない。

しかし、留意したいのは、20代(VP未満)での外資系運用会社への転職はお勧めできないということだ。

というのは、外資系運用会社の場合、外銀と比べると平均年齢はかなり高い。
40代がボリュームゾーンであり、50代もごろごろいる。反対に、20代はかなり珍しい。この理由としては、小規模な組織が多く(社員数50~100人)、新卒採用は基本やらない業界なので中途採用がメインになっているからである。

そういう社会に、20代で入ると、可愛がられるかも知れないが、パシリとして扱われる可能性が高い。

また、20代であれば、アソシエイト、要するにVP未満としてしか採用されないケースが多いだろうから、そうなると、年収における妙味も無い。
外資系運用会社でアソシエイトだと、基本給が1000万円に満たないケースも多く、国内系大手運用会社と比較しても余り意味がない。

外資系の場合、入社してからの昇格には時間がかかるので、最初からVP以上で行った方が有利である。VPであればベースは少なくとも1200~1300万円位は期待できるため、ボーナスを含めると年収1600~2000万円にはなるだろうから、既に国内系運用会社の執行役員レベルにはなる。

既に運用業界にいるのであれば、焦らずとも外資系運用会社には転職できるのであるから、満を持してVP以上で採用されることを前提に転職すべきである。
(もちろん、20代でも28~29歳であればVPとして採用されるケースもあるだろうから、そういったケースであれば20代でも構わない。)

②転職活動の方法はもうちょっと考えた方がいい

さて、国内系運用会社から外資系運用会社に転職するには、焦らず、VP以上のポジションを探すべきだというのが最初のポイントである。

もう1つのポイントは、転職活動の方法を考えた方が良いということだ。
転職活動の方法については、

(1)転職エージェントの活用法
(2)職務経歴書(レジュメ)の書き方

の2点がポイントとなる。

(1)転職エージェントの活用法については、既に外資系にいて転職経験が複数回ある人でも不十分なことが多い。それには、量の問題と質の問題とがある。

量の問題については、付き合いのある転職エージェントの数が少なすぎるということである。多くの人の場合、2~3社位しか付き合いが無いのではないだろうか?

確かに、日頃から多くの転職エージェントと接するのは、レジュメを更新したり、コミュニケーションを時々取らないと行けないので、面倒かも知れない。

しかし、本気で転職をしようというタイミングにおいては10社位には登録をしたい。
というのは、外資系運用会社の場合には、日本で営業活動をしている企業数が非常に多く、50社はあるだろう。これに、ヘッジファンドなどを加えると更に多くなる。

そうなると、数件の転職エージェントだけでは全体をカバーしきれないので、エクスクルーシブ案件(特定の転職エージェントがその案件を独占的に扱うこと。この場合には自ずと競合が少なるので有利である。)に遭遇する機会が減ってしまう。

このため、Google検索でいいので、「外資系運用会社 転職」で良さそうな転職エージェントをなるべく多く見つけて、登録してみることが重要だ。

質については、エグゼクティブ・サーチ・ファームをよく知らない、活用できていない人が多いという点が問題だ。

エグゼクティブ・サーチ・ファームというのは、求人企業とほぼ独占的な契約をして、ピンポイントで候補者を見つけるプロフェッショナル・ファームだ。こういったところから案件が紹介されると、最終的に内定がでるかどうかは別として、面接の最終プロセスまでには辿り着ける可能性が高い。

エグゼクティブ・サーチ・ファームの場合、他の転職エージェントが持っていないポジションを紹介してくれる可能性があるので、登録しておくべきだ。

金融関係であれば、ラッセル・レイノルズとハイドリック&ストラグルあたりには登録しておきたい。

<エグゼクティブ・サーチ・ファーム>
https://www.russellreynolds.com/ja

http://www.heidrick.co.jp/page/33/

(2)職務経歴書(レジュメ)については、転職経験者でも工夫が足りないケースが多い。
社外の人が読んでもあまりよくわからない過去の業務経験を長々と書いているものが結構多いのである。

職務経歴書については、長いものは不要で、2p位にまとまっていて、読みやすい方が差別化しやすい。他の人達は、ひどいと5p以上あって、ごちゃごちゃでわかりづらいケースが多いからだ。

書き方のポイントとしては、冒頭に、自分が当該ポジションにフィットしている点を2つほど簡潔に箇条書きをすることだ。そうすると、採用者に対して非常に刺さりやすい。

このあたりは、転職エージェントが教えてくれなかったりするので、是非試してみることをお勧めする。

4. 証券会社からの外資系運用会社への転職について

①以前と比べると業務経験を問われるようになってきている

業界外の人間からすると、証券会社も運用会社も同じようなものに見えるかも知れないし、昔(といっても10年以上前)は結構、証券会社から外資系運用会社に転職している人もいたので、何とかなりそうに見えるが近年では難しくなっている。

機関投資家営業、リサーチ、バックオフィスだと、業務経験を評価してくれる場合もあるが、ポジションがシニアになればなるほど、職務経歴書の段階で落とされてしまうようになってきている。

やはり比較すると、運用業界にいる人材の方が優位なのである。

②転職するのであれば、20代?

先程の国内系運用会社から外資系運用会社に転職するケースとは矛盾するように見えるかも知れないが、証券業界から運用業界に転職するには、20代のうちにやっておいた方がいいだろう。

何故ならば、30歳を過ぎれば過ぎる程、他業界からの転職ということで競争力が劣るからである。

そもそも、証券業界で上手くいっているのであれば、外資系証券会社に転職すればいいだけの話である。給与水準も外資系証券会社の方が外資系運用会社よりも一般に高給である。

しかし、敢えて証券業界から運用業界に行きたいと考えるということは、何かしらネガティブな要因があるからである。

例えば、外銀は業界全体が不調であるので将来が不安であるとか、ワークライフバランス的に外銀は厳しいという事情である。

そうであるならば、転職し易さを考慮して、20代のうちに動いた方がいいだろう。

外銀疲れの場合、国内系証券会社とかBig4系のFASに転職することが可能だが、それよりは外資系運用会社の方が給与水準は高いし、長く働くことは可能であるので、外資系運用会社を狙うというのは合理性があるのだ。

営業とかバックオフィスの場合、うまく探せば外資系運用会社のVP以上のポジションで転職できる場合もあるので、上述した通り、転職エージェントに数多く登録して、しっかりと活動したい。

5. 事業会社からの外資系運用会社への転職について

①そもそも事業会社から金融機関への転職は難しい

外資系、証券業界、運用業界を問わず、事業会社から金融機関への転職は難しい。
業務経験が無いということに加えて、カルチャーも大きく異なるからである。

そもそも、何故事業会社から金融機関への転職を希望するのかということが問題になりそうであるが、これは明らかに給与水準の違いであろう。学生時代にはあまり意識をしなかったが、社会人になって見て、給与水準の差を認識して、金融業界に転身したいというパターンであろう。

その中で、業務経験を特に重視する外資系運用会社への転職は極めて難しい。
それを実現するには、以下の様な方策を採るしかないだろう。

②留学(米国MBA等)

一番手っ取り早いのはこちらであろう。
お金を貯めて、米国のトップクラスの大学でMBAを取得して、BCF(ボストン・キャリア・フォーラム)のような機会を利用して外資系運用会社に転職するパターンだ。

もっとも、これには費用が2000万円くらいかかるので、奨学金を利用できるかも知れないが、かなりの経済的な負担がキツイ。

それに、有名大学のMBAを取得したのであれば、外資系運用会社に限らず、外銀とか外コン或いは、GAFAのようなIT系も可能なので、単に年収アップが目的であるならば外資系運用会社に拘る必要は無いかも知れない。

なお、費用や労力の点から、国内系のMBAも気になるところである。
その場合、夜間は転職を前提としておらず大学の就職に関するサポートが無いので、選択肢があるとすれば、慶應ビジネススクールとか一橋大学のビジネススクールあたりだろうか?

この場合においては、国内系の金融機関であれば十分可能性はあるものの、「運用会社」に絞るとそれは保証の限りではない。

③第二新卒として、一旦国内系の運用会社に転職する

これは、事実上年齢制限がある手段であるが、もっともリスクが低い。
社会人経験が3年未満、年齢で25歳以下であれば、第二新卒として国内系運用会社への転職は可能性がある。

もっとも、転職活動は上手く行う必要がある。
例えば、現在(2019年8月)、野村アセットマネジメントとかアセットマネジメントoneといった大手のHPの中途採用コーナーを見ても求人情報が無い。

しかし、ここで諦めてはいけない。
HPに載っていないからと言って求人需要が無いわけではない。
そこで、転職エージェントをフル活用することが必要だ。国内系運用会社の場合には、国内系大手の転職エージェントとは付き合いがあるので、片っ端から登録すれば、何かしらの情報が掴めるはずだ。仮に、今空きポジションが無くとも、将来オープンになると、紹介してもらえるはずだ。

国内系の運用会社の場合には、外資系と比べると、新卒採用が中心で教育システムも充実しているので、第二新卒で入社したからといって、パシリで終わるということにはならない。

以上から、第二新卒としての応募が可能な年代であれば、リクルート、JAC、DODA、エン・ジャパン、マイナビあたりは全て登録して準備をしたい。

なお、その際には後述する証券アナリスト(CMA)試験の少なくとも一次試験位は合格してやる気を示したいものだ。

6. 外資系運用会社に転職するに際して有用な資格

外資系運用会社の転職に汎用的に使える資格として、証券アナリスト資格がある。
これには、米国のCFA(Chartered Financial Analyst)と、日本のCMAとがあるが、CFAは格段に難しい。

他方、CMAは簡単なので半年もあれば1次試験には合格できる。
いずれにしても知っておいて損はない内容なので、他業界から運用業界を真剣に目指すのであれば、これくらい取っておく必要があるだろう。

費用は数万円位で、日本証券アナリスト協会の通信教育をやればいいのであるが、TACなどの予備校を使っても構わない。
https://www.tac-school.co.jp/kouza_analyst.html

6. ヘッジファンドについて

ヘッジファンドも広い意味での運用会社である。
外資系運用会社に転職できれば、将来はヘッジファンドに転職することも可能となる。

ヘッジファンドは、成功報酬がメインであるので、運用成果さえ上がれば報酬は青天井ということになる。そうなると、ポートフォリオ・マネージャーのボーナスも青天井なので、今でも年収5億円レベルも可能となる。

流石に年収5億円クラスは日本においてはトップクラスであろうが、年収1~2億レベルであれば、珍しくないだろう。

ヘッジファンドの場合は、本当にピンキリなのであるが、儲かっているヘッジファンドの場合だと、ポートフォリオ・マネージャー以外の職種でも、かなりの高給が期待できる場合がある。

営業職であれば年収1億円、バックオフィス(経理、コンプライアンス、IT)でも年収4000~5000万円位は出る場合がある。

このように、外資系運用会社の場合、そこそこの年収で長く働く選択肢もあるし、ヘッジファンドのようなところで高収入を追求する等、いろいろなキャリア上の選択肢があり得る。
証券業界とか事業会社から外資系運用会社に転職できれば、今までとは違った将来が拡がるはずなので、じっくりとキャリアプランを練って、多くの転職エージェントをあたるなどして万全の対策をした上で挑戦したいところだ。

<ヘッジファンドの年収と就職について>
https://career21.jp/2018-11-12-132108

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