1. 大企業のサラリーマンは恵まれている?
日本の大企業のサラリーマンは恵まれている。
終身雇用制度は維持できないということではあるが、令和元年の時点で50歳になっていたら、逃げ切ることは可能であろう。
大企業の場合は年功序列型であるので、50歳であれば管理職で年収1000万円に到達している人は少なくないだろう。
そして、数千万円にも上る退職金があるし、加えて、確定給付型か確定拠出型かは企業によってことなるが、企業年金制度も充実していることが多い。
2. しかし、お金とは別に、50歳からのキャリアは大変厳しいものがある?
①役員コースの人以外は、尻すぼみで、役職定年によってとどめを刺される?
上記の通り、従来の大企業のサラリーマンは終身雇用と年功序列に支えられて、中小企業のサラリーマンや自営業者と比べると、経済的安定性において恵まれていたと言えるだろう。
他方、お金とは別に、50歳を過ぎてからのキャリア、やりがいを求めるとかなり厳しい現実がある。
50歳を過ぎて役員コースに乗っていない場合には、キャリア的には先細りになっていく。
そして、55歳とか57歳になると役職定年制度によって、タイトル(ライン管理職)は剥奪され、年収も2~3割カットされてしまう。
周りからは、定年を待つだけの名実ともに、自他ともに、完全な窓際族になってしまう。
経済的には困らないので、その点は恵まれているかも知れないが、仕事におけるやりがいとか周りからのリスペクトという面においてはハッピーとは言えない立場になることが多い。
②社内では活躍できないからといって、転職しようとすると更に厳しい現実が…
50歳を過ぎて、このまま役職定年を迎えたくない場合には、転職というのも選択肢となる。
既に何回か転職経験がある50代のサラリーマンはわかっているかも知れないが、今まで一回も転職を経験していないサラリーマンは、50代での転職がいかに厳しいものかをわかっていないかも知れない。
ネットなどを見ていると、「経営人材」「ベンチャー幹部」「顧問」といった人材系企業の情報は溢れているが、そういうところに登録したり、転職エージェントに話を聞きにいったところで、50代の場合だと、とにかく年齢で門前払いにされてしまう。
自分は有名大学を出て、大企業の管理職に就いているので、中小企業なら経営幹部としての
ポジションが見つかるだろうと思って見ると、とにかく書面落ちの連続に衝撃を覚える。
今流行りのプログラミング・スキルでも持っていれば別だが、これといったスキルの無い50代のサラリーマンに対して、とにかく転職市場は厳しい。
とにかく人手が欲しいベンチャー企業はどうかということで、Wantedlyで片っ端から申し込みをしても、話すら聞きに行けない。
ベンチャー企業は人手不足かも知れないが、全体的に若いので、自分たちの父親位の年齢の人と一緒に働きたいとはなかなか思ってもらえないのだ。
AI系のプログラミングができるとか、フィンテックに関して金融系の専門知識があるといった例外的なケースでなければ、30歳までのロースペックな若手に負けてしまうのだ。
もちろん、条件を落とせば、採用の可能性もあるが現状年収1000万円以上ある大手のサラリーマンが年収500万円位の中小企業のポジションではなかなか満足できないだろうし、条件を落とした分だけやりがいがあるとも限らない。
3. メインシナリオは今いる会社で働き続けること?
このまま同じ会社にいてもこれ以上の出世は望めないし、数年後には役職定年でタイトルを剥奪されてしまうという問題はあるものの、転職するよりはベターというケースが多いのではないだろうか?
もちろん、相続とかそれまでの倹約生活等によって十分な資産形成ができていれば、テレビ朝日の「人生の楽園」のように、あくせく働かずに趣味の生活をするという選択肢もある。
しかし、世の中の50代の多くは、住宅ローンが残っていたり、子供の教育費がまだ必要だったり、貯金が不十分だったりで、50代で余裕をもってセミリタイアするというわけにはなかなかいかない。
結局、衝動的に余り納得のいかない転職をする位であれば、今の会社に残っている方が手堅く、それをベースとしたキャリアプランを考えた方が得策ではないだろうか?
なお、注意しなければならないのは、早期退職制度に安易に飛びつかないようにすることである。いわゆるリストラの一環としての早期退職制度の場合には、割増退職金が基本給の数年分位上乗せされることがある。
飛びつきたくなる気持ちもわからないではないが、割増の退職金の額と、転職による年収ダウン×数年分とを比較した上で、本当に得かどうかを冷静に考える必要がある。
例えば、1997~1998年の金融危機の際に、当時47歳位の都市銀行の銀行員(次長クラス)に対して割増込みで7000万円の退職金が支払われたというニュースが飛び交った。
しかし、当時の都市銀行の47歳の銀行員(次長クラス)の年収は1700~1800万円位あり、転職したところで年収1000万円の職を見つけることは難しく、トータルでは残った方が正解であったという話がある。
以上の通り、例外的な転職可能なスキルを持っている少数のサラリーマンを除くと、50歳を過ぎるとそのまま今の会社に残るのが良いということになる。
4. しかし、これからは副業という選択肢がある
以上は、50代の大企業サラリーマンにとっては明るい話ではないかも知れないが、そうでもない。
何故なら、今後は副業を磨いていくという選択肢があるからだ。
本業で仕事・収入を確保しつつ、ノーリスクで副業に集中するというのは大企業サラリーマンの特権である。
いいのか悪いのかは別として、役職定年まで残り数年のサラリーマンに対しては、会社や周りの人達は過大な期待はしない。従って、今さらバリバリ働くことは期待されておらず、副業に打ち込めるような時間的・心理的な余裕がある。
中小企業のサラリーマンとか、自転車操業の自営業者には、副業をやるような時間的・精神的な余裕は無いし、退職金・企業年金のような経済的な保証もない。
この点は大変恵まれていると考えるべきであって、副業を模索していけばいいのだ。
ベストセラーになった楠木新著の「定年後」でも書かれているが、定年後に問題となるのはお金ではなく「自分の居場所」ということである。
お金については、副業で月8万円も稼げれば余裕ということであり、この程度の金額であれば大企業で長年働いてきたサラリーマンであれば難しいことでは無い。
従って、ずっとサラリーマンをやってきて、50歳を過ぎて、ベンチャーとか起業ということで一発狙いをするよりも、面白そうな副業を見つけた方がいいだろう。
5. 自分に適した副業が見つかれば、定年後の居場所もできる?
50歳を過ぎるまでずっとサラリーマンをやってきたので、副業と言っても何をやればいいかわからないかも知れない。
その場合には、ランサーズとかクラウドワークスに登録して、できそうなものから始めればいいのだ。
大企業サラリーマンの場合だと、文章を書く機会が多かったであろうから、Webライティング周りが取っ付きやすかったりする。また、ネットIT系に関心度があればプログラミング・スクールに通うのもありだ。月に数万円程度であれば、難しくないだろう。
理想を言うと、ブログ・SNS等を使った個人メディアビジネスを展開することが望ましい。そうすると、情報発信を通じて、いろいろな人と新たに繋がることができるので、新しい世界が拡がっていく。
定年後の最大の課題である「自分の居場所」を確保できるようになる。
また、海外勤務経験があり、英語が得意な場合には更に可能性はあるだろう。
本来は、こういった選択肢は会社が福利厚生の一環として、紹介してあげればいいのであるが、それは今後の課題であろう。
最後に
転職とか起業を煽る情報は多いかも知れないが、大企業のサラリーマンを50歳を過ぎるまでずっとやってきた人が、突然、そういうことをやっても上手く行かないことが多い。
そこをネガティブに捉えるのではなく、給料・ポジション・退職金・企業年金が確保されつつ、ハードワークを強いられないという事情を、大変恵まれた境遇だとポジティブに考えて副業に挑戦するのが合理的な選択肢の一つであろう。
定年後にあくせくと稼ぐ必要は無いというのは強みであるので、自分の居場所や新たな趣味を見つけるという観点から、いろいろな方向性を模索していくべきであろう。