ヘッジファンドも運用だけでなく営業も重要?運用資産規模(AUM)も欲しい?

1. ヘッジファンドは主として運用における成功報酬で稼ぐのが基本

ヘッジファンドというのも、運用会社のうちの1形態なのであるが、一般的な運用会社とはビジネスモデルが異なっている。

一般的な運用会社というと、グローバルではブラックロック、フィデリティ、ピムコあたりが最大手であり、国内だとアセットマネジメントoneとか野村アセットマネジメントが最大手となる。

このような一般的な運用会社のビジネスモデルは、
運用資産総額(AUM :Asset Under Management)×(平均)運用報酬率、
で求められる。要するに、運用報酬率の高い運用サービス案件(ファンドとか一任運用)をなるべく多く獲得すればいいということだ。

大雑把に言うと、質(運用成績)よりも量(運用資産規模)が重視されるビジネスモデルである(もちろん、質(運用成績)が悪いと解約されるので、長期的には量(運用資産規模)の縮小につながってしまうのだが)

他方、ヘッジファンドの場合は、その逆で、量(運用資産規模)よりも質(運用成績)が重要になる。

ヘッジファンドの場合は、運用成績に関係なく一定の報酬を徴収できる固定的な運用報酬と、運用成績に応じてもらえる成功報酬の2本立てになっている。

例えば、100億円の運用資産総額があって、固定的な運用報酬が2%、儲かった金額に対してのみ20%もらえる成功報酬でスタートした場合、1年後に20%儲かったとすれば、
固定的な運用報酬が100億円×2%で2億円、成功報酬部分が20億円×20%で4億円、合計6億円の報酬を得ることができる。

そして、成功報酬部分というのは青天井なので、上の事例で1年後に50%儲かった場合には、成功報酬部分は10億円、倍になった場合には20億円という巨額な成功報酬を手にすることができる。

このように、ヘッジファンドのビジネスモデルは、いかに運用成績を上げるかというのがポイントということが理解できるだろう。

2. しかし、運用で勝ち続けるのは大変なので、成功報酬だけではツラい?

ヘッジファンドのメイン収益は、上記の通り、成功報酬で稼ぐモデルであるので、稼ぎ続けることが出来れば、運用資産総額(AUM)を増やさなくとも問題無いということになる。

ヘッジファンドは、プレゼン(ハッタリ?)が得意なので、外向きには「自分たちは何時でもどんな相場状況でも稼ぐことができるよ」と涼しい顔をしているのだが、実態はそれほど甘くはない。

その理由は以下の通り。

①相場が悪い時に運用で儲けることは、相場が良い時に運用で儲けるよりも遥かに難しい

これは、意外にも証券会社の人でもわかっていない場合が多い。
確かに、ヘッジファンドというのは、空売りとかデリバティブを自由に使用できるので、下げ相場でも稼ぐことが得意だと思われていることが多い。

しかし、買いと違って売りの場合には、予想通り値下がりを続け1円で買い戻せたとしても、MAX稼げるのは2倍までである。他方、買いの場合には青天井なので、買った銘柄が5倍~10倍になることもある。(例えば、アベノミクス相場の時は、パズドラのガンホー株は20倍位に跳ね上がった)

また、買いの場合は誰でも簡単に買うことができるが、売りの場合には借株が自由にできるわけではないし、コストもかかるので、買い易さと売り易さは同じでは無いのである。

したがって、ヘッジファンドの成功の秘訣というのは、下げ相場でコツコツと売りで儲けるというよりも、上げ相場でドカンと儲けることが勝ちパターンなのだ。

例えば、売りが得意で下げ相場に強いヘッジファンドがあれば、リーマンショックの時は大儲けできたはずだが、実際はそんなヘッジファンドなど無かったはずだ。というか、リーマンショックで吹っ飛んだヘッジファンドの方が圧倒的に多い。

教科書的、理論的には、買いで儲けることも、売りで儲けることも同じであるはずなのだが、運用実務上は売りで儲けることの方が買いで儲けることよりも遥かに難しいというのが運用業界における共通認識である。

このため、相場低迷期になると、ヘッジファンドでも儲けることは大変なのだ。

②ハイ・ウォーター・マークの存在

ハイ・ウォーター・マークというと、かなりテクニカルな用語であるが、儲ければ儲ける程、それ以上儲けることが難しくなるということである。

ハイ・ウォーター・マークについては、各金融機関の証券用語集で解説されているが、結構細かくてこれを読んだだけではわかりづらいであろう。
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ha/J0171.html

大雑把に言うとこういうことである。
例えば、基準価額10,000円スタートで1年ご12,000円になったとする。そうすると、儲かった金額である2,000円の20%が成功報酬としてヘッジファンドの手に入ることは前述の通りである(成功報酬率20%の場合)。

ところが、その後、運用が上手くいかずに、基準価額が11,000円まで下落したとしよう。この場合の成功報酬はゼロというのは明らかである。

そして、その翌年、少し盛り返して基準価額12,000円まで持っていったとしても、12,000から11,000円の1000円分については成功報酬はもらえない。
何故なら、既に12,000円は達成済みであり、その分の成功報酬については既に支払い済みだからである。

このように儲けた場合には、次に成功報酬をもらおうと思えば、過去に付けた最高値を更に上回って初めて成功報酬が発生することになる。これをハイ・ウォーター・マークという。

当然と言えば当然であるが、過去に成功すればするほど、その過去の高値を上回って儲けなければ成功報酬は発生しなくなってしまうのである。

相場環境に関わらず儲け続けるのがヘッジファンドの仕事と言えば、それまでであるが、上記①のように相場低迷期に入ってしまうと、ハイ・ウォーター・マークを上回る運用成果を出すのはほとんど不可能な気分になってしまうことがある。

3. そこで、運用資産規模の拡大を企図して強い営業が欲しくなる…

ヘッジファンドが成功すると、人員を増やしたり、立派なオフィスに引っ越したり、税金対策も兼ねて海外にも拠点を作りたくなったりするのが人情である。

成功を収めたヘッジファンドの固定は上昇しがちであり、そうして損益分岐帝が上がった状況で、相場低迷期に入ると、ヘッジファンドの収益は厳しくなる。

そういう時に、ヘッジファンドが目を付けるのが、運用成果と関係なくもらえる固定報酬部分である。

ヘッジファンドの報酬は2本立てになっていて、運用資産規模に比例して運用成果に関係なくもらえる固定報酬と、運用成果が生じた場合だけ発生する成功報酬があると述べたが、全社の固定報酬に頼りたくなるのである。

そうすると、方向性は運用を託される資産規模を増やすしかない。
そして、運用資産規模を増やすには、機関投資家等に営業をかけて運用の仕事をもらう他ない。そこで活躍するのは、ポートフォリオマネージャーではなく、営業マンなのだ。

従って、運用がメインのヘッジファンドにおいても、腕のいい営業マンが活躍できる余地は十分あるのだ。

営業マンは、多くの場合、外資系の運用会社或いは外銀の機関投資家営業のプロを引き抜くことが多い。

ヘッジファンドの過去の実績にもよるが、営業マンはポートフォリオマネージャー程ではないにせよ、結果を出せば、5000万から1億位の年収が可能であるので、結構魅力が高い職業と言える。

グローバル・マーケッツ部門で機関投資家営業の職に就けたものは、将来、ヘッジファンドの営業という選択肢も出て来る場合があるから、頑張れば明るい未来が拓けるかも知れない。