就活ルール廃止、新卒採用多様化の環境下、大学の就職課に期待されること

1. 早期化と多様化の高まり。ますます大学の就職課の仕事は増える。

少子高齢化の進展に伴い、21世紀に入ると、大学の多くは優秀な学生を確保するために様々な施策を講じている。その中でも特に重要なものが、就職のサポートだ。

例えば、明治大学は21世紀に入って受験者数ナンバー1になり、MARCHという学校群の中でもトップの位置を確保する等、評価を上げてきているが、その背景としては手厚い就職サポートというがあげられるだろう。

そうした中、いわゆる経団連の就活ルールは今年度の就活生(2020/3卒)を以て廃止となり、今後は就活の更なる早期化が見込まれている。

更に、終身雇用の廃止とも関連するのかも知れないが、新卒採用における多様化の動きも見られる。有名なのは、くら寿司の初任給1000万円コースやソニーの初任給730万、NECの初任給1000万円など、新卒の採用条件に関する多様化も見られる。

日本企業は横並び意識が強いので、こういったケースはまだまだ例外的であるが、業界トップ企業が始めると一気に浸透する可能性はある。

このように就活に関するルールや環境が変わると、大学の就職課に期待される役割やサービス内容も変容していくと予想される。

2. 今後、大学の就職課に期待される役割やサービス内容について予想

①就活時期の早期化対応

形骸化していたとは言え、経団連の就活ルールが存在している間は、起業と就活生との接触解禁が大学4年生の前の春頃で、内定時期が4年生の夏頃というタイミングであった。

もちろん、外銀とか外コンとかは大学3年生の夏から冬位の期間に採用活動をやっていたし、経団連企業でさえ大学3年生を対象にインターンといった名目で事実上採用活動を実施していたことは知られている。

それでも、建て前の就活解禁時期が大学4年生になる前の春休みということであったので、のんびりしている学生や地方在住の学生等の場合には、真剣に就活を開始するのは大学3年生の冬休み頃ということも少なくは無かった。

ところが、2021/3卒以降の学生はそういう風にのんびりしていられなくなるだろう。
大学全体の就職力をアップして、優秀な学生を囲い込もうとすれば、そういったのんびりした学生も早期に就活するように誘導する必要が生じるのである。

これについては、大学2年生をも本格的な就活サポートの対象に加えて、スタート時期を前倒しすればいいだけという見方があるかも知れない。

しかし、大学というのは「勉強をするところ」というのが建前であるので、極端な就活サポートの前倒しは、学問の場としての位置づけから難しいところもある。

この点、割り切って就活サポートを前倒しするべきか、学問の場としての建前を堅持していくべきかについては、戦略的な判断が迫られることになろう。

②新卒採用の多様化に伴う、専門職・エリート職向けのサポート

終身雇用が背景にあるのかも知れないが、大企業の場合は新卒一括採用が基本であり、新卒の場合の雇用条件は同一(平等?)であった。

ところが、終身雇用という前提が崩れると、新卒採用の雇用条件同一化というのも変容し、中途採用の様に、新卒でも給料等雇用条件が人によって異なってくる可能性がある。

そうなると、従来のように就活の成否は企業名だけでは判断できなくなり、どういった雇用条件で採用されるかも加味する必要が生じて来る。

新卒採用の「多様化」というと聞こえはいいかも知れないが、学生としても就職課としても判断軸が増えることになるので、対応策が難しくなる。

要するに、企業のレベルが同一であれば、他の同期よりも高額な初任給が保証される専門職・エリート職の方が格上のようになるし、業界上位企業の総合職と業界企業の専門職・エリート職とではどちらが良いかということを考えなければならなくなるのである。

他の同期よりも好条件の専門職・エリート職で採用されるようと思えば、プログラミング、英語(中国語)、会計力といった専門スキルを磨く必要があるが、大学は専門学校では無いので、これにどのようなサービスを提供できるかは難しい問題だ。

くら寿司、ソニー、NEC、ユニクロのようなケースが近いうちにどれ程でてくるかは不明だが、10年も経つと、すっかり定着化している可能性がある。

そうなってくると、就職偏差値とか就職人気ランキングというのはあまり意味をなさなくなるかも知れない。

英語力強化のサポートのための留学制度の充実化というのは、国際系学部の新設の他、各大学が既にいろいろな対策を講じている。
今後は、これに加えて、プログラミング講座とか、会計・ファイナンス講座といったサービスを提供する大学が出て来るかも知れない。

③ベンチャー/起業関連のサポート

こちらも終身雇用の廃止と関わってくるものであるが、終身雇用が廃止されると、転職できるためのスキルがより重要となってくる。

今ではかなりの少数派だろうが、自分が将来生き残れるスキルを重視する観点から、人気企業から内定をもらえる実力があるにも関わらず、あえて最初からベンチャー企業を選択する学生が増える可能性はある。
(なお、ここでいうベンチャー企業とは、サイバーエージェントとかメルカリのような大手企業ではなく、従業員が10人にも満たないような狭義のベンチャー企業をいう)

もちろん、それでも多数の学生は大企業を選択するのであろうが、選択肢としてベンチャー企業への就職や、起業のサポートを提供できれば大学の差別化につながるかも知れない。

経済/商学部系が強い大学の場合には、既に成功した起業家やVCともタイアップすることができるので、ベンチャー企業に対する就職のカウンセリングとか起業関係の講座、学生起業組織の支援というサービスを提供できる余地はあるだろう。

最後に

就活ルールの廃止、終身雇用の廃止というのは、かなりインパクトのある制度改正である。
IT/AIの進展等、テクノロジーを中心に変化の激しい世の中となっている中、学生の就活のための負担は高まる一方である。

大変なのだろうが、ここでは頑張るしか無いので、大学側がこういった環境変化に対応した就活サポートを適切にできるかできないかによって、大学の評価とか人気が変わってくる可能性があるだろう。