穴場?東大からの就職者数が何故か少ない企業5社について考えてみた

1. 東大からの就職者数が少ない企業の特徴とは?

タテマエ論は別として、今でも大学名というのは就職において最も重要なファクターである。歴史的な実績とか、役員等幹部社員に東大出身者が多いといった理由もあるが、勤務経験の無い就活生の力を図る最も普遍的でわかりやすい基準が、学歴なのだ。

このため、東大生の就職力は高く、競争力、ネームヴァリュー、給与水準、獲得できるスキルの質といった観点から、収益力の高い業界で、その中でもトップ企業への就職者が多くなる。

そして、日本の場合は新卒の採用条件は基本的に同一であるので、収益力の低い業界とか相対的に業界下位の企業の場合には、他と比べると待遇は良くない。

従って、東大生は中小企業とか、いわゆる就職人気ランキング・就職偏差値の高くない企業には就職したがらないのは理解できる。

もっとも、AERAの2019.8.5号の特集記事を見ると、収益力、待遇、ステータス等に魅力があるにも関わらず、何故か東大からの就職者数が少ない企業が散見された。

そこで、今回はそこから5社を取り上げて考えてみたい。

2. 豊田通商

これは、AERAの2019.8.5号では調査対象外であったが、昨年(2018/3卒業生)においては、東大からの就職者はゼロであった。基本的に新卒採用において、歴史的にも東大からの就職者数は少ない会社である。

しかし、豊田通商は就活生の間で最人気の総合商社である。
総合商社の中では5大商社では無いかも知れないが、株価時価総額・利益の額においては、双日を遥かに上回っている(2019年8月2日現在)。

その双日においては、東大から5人(昨年は3名)も就職しているのであるから、不思議である。

もちろん、思いつく理由はいくつかある。
先ず、豊田通商はトヨタグループ内の商社ということで、歴史的には専門商社としての位置付けであった。旧総合商社であったトーメンと合併することによって、総合商社として取り扱われるようになったので、総合商社としての歴史は浅い。

これに対して、双日は、列記とした総合商社であった日商岩井の地を引く会社なので、業界内ステータスは高いという見方もある。

しかし、豊田通商の業績は好調であるし、給与水準についても双日と遜色は無い。業務内容も広範であり、自動車関連業務が大半というわけでもない。むしろ、バックにトヨタがついているという点で安心感はあるし、今なら自動運転関連の最新の業務にも関与することができ、面白みはあると考えられる。

従って、外銀・外コン・国内系金融機関のプロフェッショナルコース・総合商社の大手等に悉く落ちてしまった場合において、仕方なくメガバンクとか保険会社に行くくらいであれば、豊田通商も検討してはいかがだろうか?

<就活生における総合商社の序列>
https://career21.jp/2019-03-24-074220

3. ファーストリテイリング

要するに、ユニクロの運営会社であるのだが、何と東大からの就職者はこちらもゼロである。
収益性も高く、オーナー系企業であるので、優秀な人材を採用するのには苦労を厭わない会社であるので、東大生がゼロというのは結構意外な気がした。

もちろん、東大生は流通系とか現場系の仕事には就きたがらないであろうが、メガバンクとか保険会社に就職しても総合職採用の場合には、最初はリテール店に配属されてしまうのが原則である。

くら寿司の初任給1000万円に対して、ファーストリテイリングも入社3年目で年収3000万円も有り得るということを公表した。

何か特技があるのであれば、配属先とか年俸について交渉してみることは可能であろう。
消費系ビジネスに興味があるのであれば、勉強も兼ねて会社研究とか会社訪問とかをやってみても面白いのではないだろうか?

4. 損害保険ジャパン日本興亜

大手損保の中では業界3位であるが、何と東大からの就職者数は1名である。
早稲田から23名、慶應から20名も就職者がいるのと比べると、東大から1名というのは寂しい限りである。

こちらは、豊田通商のケースとは違って、旧安田火災が母体なので、一貫して損保業界の中では大手である。

もちろん、給与水準等の待遇面は業界内でダントツトップの東京海上日動の8掛けくらいかも知れないが、三井住友海上とは基本的に同水準である。その三井住友海上には東大から10名も就職しているので、尚更不思議である。

名前が長すぎる、PMIが上手くなく、一国三制度、四制度となっているといった問題点はあるかも知れないが、会社としても採用をもっと頑張るべきであろう。

これほど東大生が少ないと、配属でも有利な交渉が可能である。就活時にグローバル要員だったり、運用部門とか企画部門への配属について確約してもらえばどうだろうか?

新卒一括採用における多様化は進展していくだろうから、相対的に業界下位の会社については、将来的には新卒採用においても個別的な配属とか給与に関する交渉ができるようになるのではないだろうか?

5. 第一生命

第一生命への東大からの就職者数は5名である。
損保ジャパンの1名と比べると、それ程少なくないのではと思う人がいるかも知れない。

しかし、第一生命は長年、日本生命に次ぐ業界ナンバー2企業である。
そして、給与水準は業界最高水準の日本生命には若干及ばないかもしれないが、業界3番手の明治安田生命よりは高水準である。
しかも、第一生命は上場企業である。

そういった点を考慮すると、東大から日本生命に16人、明治安田生命の7人と比べると、少ないように思われる。

もちろん、大手生命保険の場合には配属先の確約という制度は無いが、今後は個別的に交渉可能となるかも知れない。そうしないと、職種別採用をやったり、くら寿司の様に初任給で差を付ける企業に勝てなくなってしまうからだ。

6. サイバーエージェント

最後は大手ネット系ベンチャーの雄、サイバーエージェントだ。
東大からの就職者数は3名であり、他の大手ネット系企業の、ヤフー(29名)、楽天(16名)、DeNA(21名)と比べると、妙に少ない気がする。

大手ネット系ベンチャーの場合には、どこも特段給与水準が高い訳ではないので、将来的なスキル獲得を企図しての就職であろう。この点、サイバーエージェントの場合は転職力はつきやすいし、実際に独立する人も多い。

もっとも、社風が東大生からすると、華美(チャラい?)過ぎて入って行きにくいという面はあるのかも知れないが、既に大きな組織であるので、適した部署はあるはずだ。

企画・営業系に抵抗があるのであれば、経理・IR・法務・人事といったバックオフィスから入っていく手もある。サイバーエージェントの場合、社内異動は極めてフレキシブルなので、当該部門で高評価であれば、他の部門に将来異動できるチャンスは十分にある。

ここはまだまだ面白い会社だと思うので、ネット系企業志望者だけではなく、他業界志望者も話を聞きに行く価値は十分あるのではないだろうか?

<内定者数の出所:AERA2019.8.5号。AERA編集部が、大学通信、大学公式HP、東京大学新聞、京都大学新聞等を基に独自に集計>

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