慶應と早稲田の就活生が、ES(エントリーシート)について考えておきたいこと

1. ESという「書き方」と「内容」ばかりが気になるのは問題?

①ESについて気になった、ある就活サイトの記事

ある就活サイトのESに関する記事をたまたま見て、気になったことがあった。
ESというと「書き方」とか「内容」に関するコンテンツばかりが出回っているが、トップ就活生はこの種のマニュアル的なESの書き方を実際に参考にするのだろうか?
(もっとも、キャッチコピーはインパクトがあり、その点は素晴らしいと思ったが…)

<永久保存版:受かるESはここが違う!内定に直結するエントリーシートの鉄則>
https://www.onecareer.jp/articles/1524

②就活とか転職で成功するためには戦略的な「思考」が必要

何が気になったかというと、就活とか転職というのは本来、多面的で長期的な戦略に基づく「思考」が必要である。

従って、この種の「この通りにやれば成功する!」というマニュアル的なものは、就活とか転職においては本来存在しないはずで、仮に就職はうまく行ったとしても、「思考」力が無いとマニュアルが存在しない転職・中途採用の世界では通用しなくなってしまう。

③慶應や早稲田の学生であれば、マニュアル的なESの「書き方」ではなく、ESとは何かについて「思考」した上で、戦略的な対応ができるようになるべき

慶應と早稲田クラスのトップ就活生の場合には、マニュアル的なコンテンツに依拠した対応は採らないものと思料される。もっとも、将来の転職等のキャリアアップのためにも戦略的な思考を習慣化するという、高次なレベルを目指した方が良い。その場合、ESについても幅広い観点から思考し対応できるようにしておくことが望ましい。

2. 慶應や早稲田の学生であれば知っておきたいESについての考え方

①WhatよりHow、HowよりもWhy

TEDのプレゼンの手法として、Why⇒How⇒What、という流れで話すのが良いという考え方がある。いきなり、中味の話であるWhatを持っていくよりは、そのテーマの本質であるWhyから入っていった方が深いところに焦点をあてることができるからである。

このフレームワークは、ESについても適用したい。
多くの平均的な学生は、ESというと最も気になるのが何を書けばいいかというWhatの部分である。だから、ESの書き方とか、内定者のESというコンテンツが拡がり、そういったものが欲しがられる。

しかし、内定者のESを参考にしてESを書くと、大抵の場合は落ちるとも言われる。
その理由としては、ESについてのWhyとHowの考察ができていないことが指摘できる。

②ESにおけるWhy

余裕がある就活生であれば、最初に考えて欲しいのが、ESにおけるWhyである。
そもそも、何故ESという制度があるかということだ。

この質問に対しては、企業は物理的に全ての応募者と面接をするわけには行かないので、ESとWebテストを絡めて、一定数の応募者を門前払いしたいからだという回答が返って来るだろう。

そして、日本の場合は形式的な平等主義が尊重されるし、企業もレピュテーションリスクを気にする(就活で悪者になりたくない)ので、応募もさせずに最初から特定の学校だけを対象に新卒採用活動をやるというわけには行かないからだ。

或いは、学歴フィルターなんてあるに決まっているのだが、学歴だけで選別すると企業が悪者にされがちなので、応募位はさせてあげて、ESとWebテストで落とされたと納得してもらえるために実施するという見方もできる。

そうであれば、慶應とか早稲田の学生の場合には、基本ESで落とされることは無いということがわかってくる。慶應や早稲田の学生でも面接に行く前に落とされるとすれば、Webテストである。外銀と外コンがその典型であり、特に外コン(MBB)の場合だと、9割位がWebテストではねられるという。

企業側からしても、似たり寄ったりの退屈な情報で、読む労力がかかるESで選別するよりも、Webテストで選別した方が合理的である。

このように考えると、慶應や早稲田の学生が気にすべきは、ESよりもむしろWebテストであるということがわかってくる。

もちろん、Webテストで慶應や早稲田がバシバシ切られるのは、外銀とか外コンレベルでそれ程多くは無いだろうが。

また、人気の消費財メーカーやマスコミ関係においては、志望動機を気にする会社もあるので、その場合には、慶應や早稲田でもESにある程度気を遣わないといけないケースもあるが、ESは基本その程度である。

そして、重要なのは、ESというのは何故中途採用では使われないかということだ。
ES、ESというのは就活生位なのだ、社会人になって試されるのは、職歴や業務経験であって、ESのような白々しい作文は不要ということだ。

③ESにおけるHow

実はこれは極めて大事なのだが、ESとHowを意識している就活生はどれだけいるだろうか?ほとんどの学生は、Howを通り越して、Whatに飛びつきがちだ。

要するに、これは、ESをどのように書くべきかということなのだが、答えは極めてシンプルで、わかりやすく論理的に書くということだ。

「そんなこと意識しているよ」という就活生がいるかも知れないが、実は、これが出来ていない社会人は中途採用のレベルでも結構多い。

採用担当者には刺さるとも限らないのに、自分の表彰とか過去の営業実績とかを長々と職務経歴書に書く人達は、外資系金融の世界でも珍しくない。

それは、学生におけるESと似ていて、少しでもよく見られたいがために、相手の立場を考えずに、とにかく自分のことを盛りたがるということだ。

しかし、それでは何を書いているか通じないし、あまり賢く見えない。
それに対して、自分の特性、ポジションとのフィット感を簡潔に記載した職務経歴書の方がよほど、書類通過できる可能性が高い。

この点は、将来転職エージェントと相談したり、自らが採用する立場になるとわかってくるのだが、とにかく社会人でもこれができていない人たちが多いので、就活段階で実践できるとそれだけで武器になるだろう。

簡潔にわかりやすく、論理的にという意識は、中味よりも重要なのだ。

④ESにおけるWhat

さんざん、Whatは最優先事項では無いと述べて来たのであるが、もちろん、就活段階でもWhatについて気にすべきところはある。

過去の内定者のESを真似ると落ちるという話をしたが、内定者のレベル感を知る上での参考にするのは構わないだろう。多くの場合、過去の内定者といっても、大した内容のESは書けていない。それを確認できれば、無用なプレッシャーを避けて平常心で臨めるという心理的な効果はある。

また、ESとWhyの個所で言及したが、ESの目的は採用側である企業が効率的な採用のために足切りをすることであり、ESの内容が優れた就活生を抽出することではない。

このため、ES(或いはWebテストと合わせ技で)で足切りされるかどうかは、当該就活生のスペック(学歴、留学、体育会等)と応募企業の人気度合いによって決まる。

従って、自分自身のスペックと応募企業の人気度・難易度を考慮の上、非本命企業とか参考として応募している企業については、就活生が自分の効率的な活動のために敢えて過去の内定者のESをコピペして対応するというのはありであろう。
ひょっとすると、これが最も有用な、他人のESの参照法かも知れない。

なお、冒頭の就活サイトのESの書き方については、その内容自体を特に否定したり非難するつもりはない。より重要な点は、ESのWhatだけを見るのは一面的であり、WhyやHowの側面も考慮した上で戦略的に考えて行動することである。

3. 何故、過去の内定者のESを参考にすると落ちるのかについて考える

最後に、この点について考えてみたい。
乱暴な言い方をすると、過去の内定者のESをコピペするような思考力を欠く就活生はそもそも優秀じゃないからということも言える。
しかし、ここでは上記のESのWhy、How、Whatに即して考えてみたい。

まず、ESのWhyについて考えてみると、ESの目的は企業が効率的に就活生を足切りすることにある。そして、その際に重視されるのは、学歴、留学、資格、体育会といった定量的な側面であり、一言でいうとスペックということになる。

人気企業・難関企業の場合には、多くの応募者を足切りすることになるので、過去の内定者のESを参考にしようがしまいが、割合的に多くの就活生はES段階ではねられる結果となる。

次に、ESのHowについて考えてみると、これは結構重要かも知れない。
他人のESを真似ると言っても、そっくりそのままコピペをするわけには行かない。
そうすると、就活生は他人である過去の内定者のESを自分流に多少アレンジすることとなる。

ところが、これが良くない。ある程度、既にまとまっている文書を中途半端にいじると、ツギハギ的になって、流れが悪くなる。

要するに、わかりやすく論理的な記載という要件を充足できなくなりがちだからだ。

従って、他人のESを参考に、自分の頭の中で整理した上でゼロから書いてみると、論理的で流れの良い文書が書けるかも知れないが、コピペを中心に微調整すると論理性・一貫性をキープしにくくなるという技術的な問題が生じるのだ。

このように、過去の内定者のESを真似すると、Howの観点から良い文章が結果的に作成できなくなっている可能性がある。

そして、ESのWhatであるが、最初のWhyとも関連するのだが、実は過去の内定者のESだからといって、実は中味(What)が優れているとは限らないのだ。

就活の場合、内定するかどうかというのは結局スペックによって大方決まってしまう。
結局、スペックが高い就活生であれば、ESの内容の如何に関わらず、通過する場合が多い。

例えば、東大で留学経験があって体育会の学生であれば、余程の難関企業以外は、ESなんてフリーパスであろう。従って、その手のハイスペック学生の場合には手抜きの適当なESでも内定が出るので、内定が出たからESの中味が優れていることにはならないのだ。

このように内定者のESは玉石混交である場合があるので、それを真似したところで、それは模範答案・参考答案を写したことにはならないのだ。

最後に

ESは転職/中途採用では使われない、日本式の新卒一括採用のために生み出された奇妙なゲームである。志望動機、自己PR、ガクチカで悩むのもいいが、就活はスペック勝負なので、スペックを上げる努力をした方がいいのではないだろうか?