関関同立には辛い?デジタルの本命?2019/3卒の伊藤忠の採用実績校について

1. 2019.8.5号のAERAが「人気企業100社が選んだ大学」を特集

AERAの2019.8.5号の特集は、50大学「採用者数」徹底調査である。ここでは、2019年3月の卒業生を対象とした、人気企業100社の大学別採用者数を発表している。

なお、基本的に採用側である企業は大学別の採用者数を公表してくれないので、AERAの集計は大学通信の調査や、大学の公表分、「東京大学新聞」「京都大学新聞」等をソースとして、独自に集計をしている。

このため、多少の集計漏れはあるかも知れないし、総合職と一般職の区分の言及が無いので、完璧なデータではないかも知れないが、大体のトレンドを知るには十分ではないかと考えられる。

2. 2019/3卒業生対象の伊藤忠の大学別採用者数ランキング

因みに、三菱商事と三井物産のランキングについてはこちらをご参照下さい。

<2019/3卒業生対象の三菱商事の大学別採用者数ランキングとコメント>
https://career21.jp/2019-07-30-132532

<2019/3卒業生対象の三井物産の大学別採用者数ランキングとコメント>
https://career21.jp/2019-07-30-161018

〇2019/3卒業生対象、伊藤忠の大学別採用者数ランキング

順位 大学名 就職者数
1 慶應 25
2 早稲田 20
3 東大 12
4 京大 8
5 一橋 7
6 大阪 6
上智 6
8 神戸 5
9 九州 4
10 明治 3
立教 3
関西学院 3
13 東北 2
東京外国語 2
学習院 2
青山学院 2
中央 2
ICU 2
同志社 2
20 北海道 1
名古屋 1
筑波 1
東京工業 1
国際教養 1
関西 1

<出所:AERA2019.8.5号。AERA編集部が、大学通信、大学公式HP、東京大学新聞、京都大学新聞等を基に独自に集計>

3. 非財閥系であるが故の面白い立ち位置

総合商社はトップ就活生においても、国内系人気ナンバー1の業種であるし、特に三菱商事においては外銀・外コンにも負けない特有のブランド力を持っている。

総合商社においても就活生の間では、序列があるようで、三菱商事は別格として、三井部産がナンバー2、そして、その次に来るのが財閥系(要するに住友商事が加わる)という見方もある。

<トップ就活生における総合商社の序列>
https://career21.jp/2019-03-24-074220

伊藤忠は、丸紅と並んで非財閥系という分類をされたり、単に五大商社という枠に留まる評価しかされない場合もある。

しかし、2019年7月時点において、利益水準や株価時価総額において、住友商事どころか三井物産を上回る位置に伊藤忠はいる。定量的な側面では、三菱商事に次ぐナンバー2のポジションだし、2016/3期決算においては総合商社中、利益面においてトップに立ったこともある。

従って、非財閥系ということで、総合商社内の3番手グループに位置づけられるのは妥当でないだろう。

特に、非財閥系でないが故の野武士集団としての強みや個性があり、デジタル・トランスフォーメーションという切り口では、他の商社を凌駕できるポテンシャルも有している。

<総合商社のデジタル戦略>
https://career21.jp/2019-07-30-103614

また、今後まだまだ経済成長が期待できる中国とタイに思い切った重点投資をしているため、アジア重視の特有のポジショニングを取っていて、エネルギー・金属資源の割合が低い。

このため、考えようによっては、大変面白い会社だと考えられる。

4. 2019/3卒業生対象の集計の特徴

①三菱商事とは異なり、三井物産と同様に早稲田が強い?

全体的に、早慶が圧倒的であり、この点は三井物産とかなり類似している。
三菱商事の東大の強さは、やはり、外銀・外コン内定持ちとブランド・就職偏差に拘りの強い優秀層が挑戦しに来る、ナンバー1特有の事情によるのだろう。

伊藤忠の場合には、本年度は早稲田から20人、東大から12人となっている。前年度も早稲田から23人、東大から15人だったので似たような傾向である。

②とにかくコンサバで偏差値順である

採用実績校については、偏差値順に並んでいるイメージで、明確にMARCH、関関同立のところで学歴フィルターが作動しているようである。
この点は、三菱商事や三井物産と同様である。

③かなりの国立バイアスがかかっている?

早慶が強く、後は国立勢という傾向は、三井物産というか、他の総合商社とも似通っている。
それ以外は、東大、京大、一橋、地方旧帝大、神戸、東京外国語、筑波というラインナップである。MARCH、関関同立からは、各校から1~3名というのは他の総合商社も同様である。

しかも、MARCH、関関同立の場合は、一般職も含まれていると推測されるので、実質的には更に少ない可能性もある。

総合商社においては、完全に国立優位である。

④関西バイアスは無い?関関同立をもう少し採ればどうか?

伊藤忠は、近江商人、関西起源ということもあり、関西枠があるという噂もある。
しかし、このランキングを見る限りでは、京大8人(4位)、大阪大学6人(6位)、神戸大学5人(8位)、関西学院3人(10位)、同志社2人(13位)、関西1人(20位)である。

立命館に至ってはゼロである。関関同立合わせて6人しかいないので、もう少し関西系を優遇してもいい気もするが、どうなのだろうか?

もっとも、滋賀大学、大阪市立大学、和歌山大学、兵庫県立大学(旧神戸商科大学)というローカルの過去の採用実績校は、このAERAの集計には入っていないので、ひょっとしたらこのあたりから就職者がいるかも知れないが、その点は不明である。

最後に:中国、タイというアジア重視、デジタル・トランスフォーメーションへの期待

前述した通り、伊藤忠は他の財閥系に無い魅力がある。
非資源・エネルギー、中国重視というのは、三菱商事や三井物産とは全く異なるポジショニングであるし、インターネットバブル時の対応を考えると、デジタル・トランスフォーメーションでも勝者になれる可能性がある。

東京本社は青山という丸の内エリアとは異なる好立地という点も、個性的である。
このあたり、東京の有力校の学生からは好き嫌い分かれるところだろうが、大変面白みのある会社だと思う

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