過剰なコンサル人気?東大の就活生は志望業種をそろそろ見直す時期か?

1. コンサル人気は行きつくとこまで来てしまった?

毎年、就活メディア運営企業のワンキャリアが公表している東大・京大の就活生の就職人気ランキングであるが、今回はMBBを抑え、総合系コンサルのアクセンチュアがトップになった。
https://www.onecareer.jp/articles/1907

ここ数年間、総合商社を抜いて、業界人気ナンバー1はコンサルであったが、それはMBBのような戦略系コンサルの人気が高かったのであるが、遂に総合系のコンサルがトップになったのだ。

2. コンサル人気の背景

①消去法による、コンサルの相対的地位が浮上?

東大生の人気ナンバー1業種にコンサルがなったのは、多分に、消去法的な要素があったのではないだろうか?

少し前は、給与水準で他の追随を許さない外銀がトップだったのであるが、リーマンショック以降の慢性的な投資銀行の業績不振によって、じわじわと人気は下がっていった。(といっても相対的なもので、まだまだ人気が高く超難関であることは間違いないが…)

そして、次にトップに立ったのが総合商社である。
もっとも、配属先が入社するまでわからないことや、バリバリの年功序列で若い間は雑用的な仕事多いとか、実は普遍的な専門スキルが身に付きにくく転職能力は高くないというデメリットが伝わったため、人気は少し下がった(落ち着いた?)感はある。

外銀と総合商社が、それぞれ異なる理由で人気がダウンしたため、代わって浮上したのがコンサル業界という面はあるだろう。

②AIとかデジタルトランスフォーメーションは絶好調

これだけ、AI、AIと騒がれていたら、既存企業も対応せざるを得ない。
金融機関ではフィンテック、総合商社だとデジタルトランスフォーメーションと言った言い方の違いはあるが、全業種においてAI化IT化を促進しなければならないプレッシャーに満ち溢れている。

このような恵まれた環境下、もともとIT周りが得意であった総合系コンサルファームは順調にビジネスが発展し、それに応じて、採用枠も急速に拡大させた。

そして、上記リンク先のワンキャリアのコメントもそうだが、コンサルファームの供給が需要を増やした側面がある。

日本人、そして、学生は特に横並び意識が強いので、身近な先輩たちが採用枠を増やしたコンサルに行くようになると、「自分も行きたい」と思うようになるのである。

3. 今から総合系ファームに行くことのどこがマズイのか?

別に今からでも総合系ファームに行くこと自体が問題ではない。
まだまだ、AIとかデジタルトランスフォーメーション周りの仕事は増えるだろうし、コンサルにおけるスキルは普遍的に評価される。
そして、ハードワークを強いられることによって、ビジネス筋力のようなものは鍛えられる。

ただ、何がマズイかというと、コンサルにいくことの妙味が薄れていくリスクがあるということである。人気が高騰化しているので入るのが高くなる割には、得られるものが減っていくおそれがあるため、就活先としてのコスパが悪くなるのではないかということだ。

その理由は以下の通り。

①コンサル人材の供給増に伴う相対的価値の低下

これは当然なのだが、モノの価値は需要と供給で決まる。
人材としての価値も同様で、総合系コンサルファームの場合、需要に比して供給が急速に増えすぎていることが懸念される。

総合系ファームは、新卒だけではなく、第2新卒や中途採用も積極的に行っている。
このため、見た目以上にコンサルが増えていて、既にこの傾向は数年間は続いているので、市場にいるコンサルの総数は明らかに増えているのだ。供給増はまだ数年は継続すると見込まれるので、人材の需給についてはますます厳しくなる。

歯科医師とか弁護士の年収が以前より大きく下がったため、両者とも最近では人気が落ち気味であるが、その原因は単に供給を増やし過ぎたからである。このため、コンサルも例外ではないので、最近の供給増(採用増)にはそろそろ注意すべきタイミングでは無いだろうか?

②コンサルとして得られるスキルの低下?

コンサルの継続的な大量採用というのは量的な側面であるが、それに伴い、質の低下も懸念される。

人数が増えすぎると、少数な優秀な者同士で切磋琢磨するという状況ではなくなるし、先輩達も大量採用なので、指導力の低下も否めない。

また、コンサルとは言え、増えた仕事の大半はAI/IT関連なのであるから、ピュアな戦略コンサル的な仕事の割合は減少してきている。

既に、総合系コンサルファームの管理職の人達の中には、最近の若手のコンサルの質の低下を懸念している人もいる(もっとも、年寄りは何時の時代も若手を批判しがちなので真実かどうかはわからないが)。

以上のように考えると、せっかく難関を突破してコンサルに入っても、思っていたほどのスキルとかネームヴァリューを得られない可能性がある。

まだ、MBBであれば別、さらにグローバルネットワークのあるアクセンチュアとかデロイトのような旧Big4系ならまだしも、アビームコンサルティング、ベイカレントコンサルティング、シグマクシスあたりになってくると、ネームヴァリューが落ちる。

コンサルというのは目に見えない専門サービスなので、ブランドとか箔というのが重要な世界であるので、独立系ファームの評価が高すぎないか気になるところである。

3. それでは志望を変えるとするとどの業界か?

コンサルに行くことによる価値が相対的に減少するのではないかということなので、別にコンサルを目指すべきではないという話ではない。

しかし、実態としては「とりあえずコンサル」という学生も少なくないようなので、もともとコンサル業界への執着が強くない学生は、他の選択肢を検討する価値はあるだろう。

その際の、判断軸としては、以下の2つを考えてみた。

(1)終身雇用ではなく、転職することによってキャリアップを図れる可能性が欲しい

要するに、JR各社、通信キャリア、デベロッパー、消費財系メーカー(但し、マーケティング専門職は除く)は対象外ということである。

何らかのスキルを身に着け転職できるようにしたいということと、アップサイドも欲しいということである。

(2)自ら起業したり、ベンチャー企業に行くような不安定な途は避けたい

「とりあえずコンサル」という志望者が多いことから、自ら起業したり、ベンチャー企業に行ったりするリスクが高い途はいきなりは選択したくないということである。

また、少し前に流行ったDeNA、グリー、ミクシー等の大手ベンチャー系も回避することとしよう。結局、少し前に大量にエリートの学生がこちらに就職したが、それ程その選択が正しかったようには見えないからだ。

要するに、安定性を確保しつつ(リスクはなるべく取りたくない)、アップサイドも狙いたい(お金はもらえるなら沢山欲しい)という、極めて勝手な希望かも知れないが、これは大いに理解できるところである。

①大手電機系メーカーのAI業務ポジションや、AIに強いVCを狙う

こちらは、コンサルではなく、より直接的にAI分野を攻めるということである。
とりあえず若いうちに何らかのAIの専門性と業務経験を持っておけば、次はどこにでも行けるだろうという魂胆だ。

この路線については、2019年7月26日の日経新聞朝刊の1面記事に関する、こちらの記事をご参照ください。

<AI投資12兆円。ソフトバンクG、2号ファンドと就活のヒント>
https://career21.jp/2019-07-26-090516

②総合商社

「何で、総合商社?」と思うかもしれない。
これは逆バリ的な発想である。人気が高騰したコンサルをやめて、人気が落ち気味の総合商社にした方がコスパがいいということである。

「総合商社だと転職スキルが付かないのでは?」という疑問があるだろう。
しかし、それは年齢とポジションによる。20代であれば、ポテンシャル採用をしてもらえるところは多いので、総合商社というネームヴァリュー、20代で海外経験できることによるグローバル経験、米国有名MBAへの留学可能性等を考えると、選択肢にはなり得る。

そもそも、総合系コンサルファームに行っても、20代で転職することを想定しているのではないだろうか?20代の転職ということに限ると、総合商社に行っても選択肢は多い(但し30歳を過ぎると厳しくなる)。

それに給料とかワークライフバランスは明らかにコンサルよりも良いので、その間次の転職に向けてじっくりと準備をする余裕は商社の方が良い。

総合商社の内定の難易度についても、三菱商事や三井物産は東大生でも難しいかも知れないが、それ以外だと、十分に内定を狙えるのではないだろうか?

<トップ就活生と総合商社の序列>
https://career21.jp/2019-03-24-074220

実は、明確にやりたいものは決まっていないが、スキルや給料も欲しいという意味において、
全く別の業界ではあるが、総合商社とコンサルとは親和性が高いのだ。

③金融機関のデジタル・フォーメーション要員

これは、穴場と言うより、そもそも表立っては文系を対象には募集をしていない。
具体的には、メガバンク、大手生損保のデジタル・フォーメーション関連の部署の別枠採用である。どこも、理科系を対象としたエンジニア職について、別枠で新卒採用をしているのだが、敢えて、非エンジニアである文系にも関わらず門戸を叩いてみるのである。

これは東大だからこそできる技なのだが、大昔から、表立っては募集していない職種であっても、東大生で特に優秀な場合には、所属部署を確約して採用すると言ったことは普通に行われてきた。

厚かましいようにも見えるが、企業側に需要があればWIN WINなので、聞いてみること自体は悪くない。

これが出来れば、同じく金融機関のグローバル・マーケッツ職のようなレッドオーシャンを避けることが出来る。

そもそも中途採用になれば、周りとの公平性とか一貫性といったものは関係無くなるので、遠慮せず、そういう交渉はやってみるべきだ。

もっとも、東大生というだけでは不十分で、何かしらアピールできるものを持っておきたい。
ネット関連企業の起業経験でもあればいいのだが、無ければ、ベンチャー企業での長期アルバイトとかでそちらに詳しいことをアピールする方法などが考えられる。

最後に

コンサルというのは、本来「戦略」を売る仕事なので、自分のキャリア選定においても「戦略」的であるべきだ。

ただ、皆が追いかける、流行っているという理由だけで自分も乗っかるというのは、それ自体が「戦略」的な企業選びとは言えない。

東大生ともなれば、外部環境や、ライバルの就活生を踏まえた上で、自分自身にフィットした選択肢を独自に考えて「戦略的な」企業選びをやりたいものだ。

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