フリーランス300万人超、就業者の5%の政府の初推計の意味を考える

1. 政府がフリーランスの人数を推計するのは初めて

2019年7月24日、内閣府がフリーランスとして働く人の人数を306~341万人程度とする推計を公表した。

この341万人には個人事業主だけではなく、法人を設立した人も含まれる。
また、このうち、本業がフリーランスの人が228万人、副業としてフリーランスの仕事も行う人が112万円となっている。

フリーランスが労働者全体に占める割合は、本業が3%程度、副業を含めると5%程度となる。

米国は本業フリーランスの割合が6.9%にも及ぶということで、米国と比べると日本の本業フリーランスの割合は半分以下の段階である。

2. 何故、政府はこのタイミングでフリーランスの集計を始めたか?

今まで、日本ではフリーランスを直接の調査対象とする公的な統計は存在しなかった。
今回、内閣府はアンケート調査を活用するサンプル調査によって、上記の人数を推計するに至った。

今まで未実施だったフリーランスに関する調査を実施していなかったにも関わらず、何故、政府はこのタイミングでフリーランスの集計を開始したのだろうか?

これは穿った見方かも知れないが、年金や社会保険の財政負担の重さ、特に将来の厳しさを考え、フリーランスを後押ししたいと考えているのかも知れない。

年金の支給時期の後倒しや、支給水準の引下げなど、少子高齢化が進捗していく中、政府としては年金になるべく頼らずに、自力で何とかして欲しいと考えるだろう。

企業は定年を60歳から65歳に延長する流れもあるが、そもそも終身雇用自体が保証されなくなっていくのであれば、国民は会社に頼らず、一部でもいいので自力で稼いでくれるのが政府としては望ましい。

働き方改革の副業・兼業の緩和の流れとも合致する。サラリーマンが若い段階から副業・兼業に慣れておくと、年をとっても、自力で稼げる術を持つことになる。

年金2000万円足りない問題ではないが、サラリーマンは会社からの給料や年金だけでは不十分なので、現役の時も退職後も、フリーランスで培ったノウハウを活かして長く稼ぎ続けることが求められるのであろうか?

3. 副業でフリーランスを始めるのは悪いことではないだろうが…

最も、サラリーマンも副業であれば、フリーランスでもある程度稼げるようになることは悪い話ではない。

空いた時間を利用して、副業でフリーランス業務によって稼ぐことができれば、収入はその分アップする。そして、正社員の立場は変わらないので、リスクも増えない。

また、今まではサラリーマン自体も終身雇用と手厚い退職金と企業年金に甘え過ぎていた面もあるので、副業としてのフリーランスが推奨されると、いろいろなスキルを磨ける可能性があるし、新たな人脈ができる可能性もある。

転職市場について見ると、特に40歳を過ぎると、年収を下げない転職のハードルは一気に高まるが、その原因としては、専門スキルが不十分なゼネラリストタイプが多いということがある。

この点、副業というレベルでどの程度専門スキルを磨けるのかという課題はあるが、キャリアの幅を拡げることや、専門スキルを深めることについて、若いうちに問題意識を持てるようになることは望ましい話だ。

4. もっとも、専業フリーランスは慎重にやった方がいい…

他方、本業フリーランスへの転身となると話は別だ。
サラリーマンでいることに伴うメリット、セーフティネットを失ってしまうからだ。

終身雇用が無くなる、年金はもらえない、といった極端なことを叫ぶ人達もいるが、別に突然終身雇用や退職金・年金が無くなる訳ではない。

まだまだサラリーマン、特に大手のサラリーマンであることのメリットは大きい。

「フリーランスで月収100万円を達成!」といったメッセージが、ツィッター、YouTube、ブログ等で発信されていたりするが、フリーランスの月収100万円とサラリーマンの月収100万円とでは全然意味合いが異なる。

フリーランスの月収100万円はいつまで維持できるのかというサスティナビリティの点が軽視されがちだ。そもそも「月収」という概念がフリーランス的で、「年収」単位で考えるサラリーマンとは収入の安定性が異なっている。

結局、退職金、企業年金、収入の継続性等を加味して、総合的に考えないと、フリーランスの「月収100万円」というのは評価できない。

5. 今後は、政府からも民間からもフリーランスが推奨される?

これも穿った見方かも知れないが、政府がフリーランスの人数を初めて公表したということは、フリーランスの人数が増えれば、その流れを助長するのではないだろうか?

また、民間ではフリーランスを促進するような人材系のビジネスや、著名な個人ブロガーなどがフリーランスの魅力を強調していくのであろうから、何となく時代はフリーランス的な方向に誘導されるのかも知れない。

しかし、サラリーマンと比べて、まだまだフリーランスの方が制度上望ましいとは思われないので、副業なら良いが、専業フリーランスになることは慎重に考えた方がいいだろう。