外資系金融に全落ちする就活生の特徴と対応策

1. 内定率は数%程度というのは承知の上だが…

言うまでもなく、外資系金融というのは就職における最難関の業種である。
1社あたり数百通の応募があって、最終的に内定が出るのは若干名という世界であり、内定率は数%である。

もっとも、内定率数%というのは珍しくなく、総合商社とか人気消費財メーカーであれば同じかもっと厳しいところは少なくなく、率だけで語っても仕方が無い。

外資系金融について、大学3年生のインターン選考とか、或いは、中途採用について相談を受けることはしばしばあるのだが、全落ちする就活生は珍しくない。

外資系金融は最難関であり、最終選考では好き嫌いとか運の要素も排除仕切れないので、必勝法というのは難しいが、他方、全落ちする就活生のパターン、特徴というのは明らかに存在する。

全落ちする就活生の特徴も、そのレベルに応じて、松竹梅の3類型位に分類できるので、ここではそれについて検討したい。(梅⇒竹⇒松、の順でレベルは上がる。)

外資系金融の内定を取るためには、先ず、全落ちするグループから抜け出すことが前提となる。

2. 外資系金融に全落ちするパターン「梅」:記念受験、憧れ受験であることを本人も認識しているタイプ

外資系金融が難関であることは誰でも知っているので、最初から憧れで記念受験的な意味合いで応募する就活生はいる。数の上では結構存在している。

しかし、宝くじと一緒で「ひょっとしたら」と思っているフシはある。もちろん、外資系の選考において宝くじは無いので、このカテゴリーであれば全落ちする。

このカテゴリーの特徴としては以下のものがあげられる。

(1)大学は一応、早慶以上
(2)英語はできなくもないが、TOEICで860点に満たないレベル
(3)そもそも、外資系証券の職種の違いをよくわかっていない
(4)金融ビジネスに対する関心が薄い

このうち、(3)というのは論外なのだが、必ず存在する。
もちろん、セールス、トレーディング、リサーチ、オペレーション、IBD位の違いはわかるが、IBDでいうと、ECM、カバレッジバンカーの職種の違いも良くわかっていないケース。

そして、(3)はクリアできたとしても、よくあるのが(4)の金融ビジネスに対する興味があるとは思えない場合である。

外資系金融と言うのは厳しい競争を経てようやく内定した精鋭が、入社後もクビ・リストラのプレッシャーの中、激務を強いられる職業である。金融ビジネス、金融市場が好きじゃないとやっていけない世界である。

それにも関わらず、日経平均株価、NYダウ、ドル円為替の水準がわからないようでは話にならない。また、直近だと、アサヒが1.2兆円の巨額の買収案件を発表したが、それについて何も知らない様では真っ先に落とされてしまう。
(そもそも筆記試験/ESを通過できるかがわからないが…)

3. 外資系金融に全落ちするパターン「竹」:自分自身では十分Competitiveな人材だと思っているが、採用側からすると話にならないパターン

こちらは、先ほどの「梅」レベルの就活生よりは明らかにレベルが高いし、本人も自分に自信があり、それなりの準備もしていて、本気で内定をもらえる可能性があると思っているパターンである。

確かに、1990年代であればこのパターンでも内定をもらえた場合もあるかも知れないが、現在では明らかに落とされるカテゴリーである。

この全落ちするパターン「竹」の特徴としては、以下のものがあげられる。

(1)学歴は早慶以上である。
(2)英語は問題ない(帰国子女、留学経験有り、或いはTOEIC900以上)
(3)体育会
(4)金融、ファイナンスに関する知識が不十分
(5)実務に対する具体的な関心・アイデアを持っていない

このパターンは、外形的に見ると内定をもらってもおかしくないように見えるが、結局ポイントは(4)(5)の金融ビジネスに対する関心・分析が甘い、基本的な知識を持っていても、最優秀層の候補者には明らかに劣るという場合である。

例えば、(4)の金融・市場に関する知識については、一通り勉強しているが、表面的にしか見ていない就活生が多い。先程の、アサヒのオーストラリアのビール事業の買収のニュースは知っているが、「それについてどう考えるか。賛成か反対か。そしてその理由」或いは「武田薬品のシャイアーのM&Aと比較してどう思うか?」と突っ込まれると、「・・・」としか答えられないケースである。

また、(5)については内定を取れるかどうかという視点ではなく、実際に実務に出てどのように働きたいかまで真剣に考えた上で、普段生活を送っているかということが試される。

グローバル・マーケッツ系の場合だと、日経平均株価の今年の高値・安値・その理由位は考えておくのは当然だとして、少しだけ捻って、「ボリス・ジョンソン氏が英国首相に就任したが、それによって市場はどう動くか?その中でどういった商品を君なら営業したいか?」とか、「米中の貿易戦争の行方と、営業活動への影響は?」と聞かれると、待っていましたとばかりに延々と自分の考え・相場観・ビジネスアイデアを話せるくらいになる必要がある。

或いは、IBDのアサヒの例だと、「アサヒのオーストラリアのビール事業の買収のニュースを受けて、君なら、どういう企業にどういったM&Aの提言をしたいか?」といった話ができるレベルが求められる。

これをクリアしようと思うと、学校のファイナンスや会計の授業を真面目にやるだけでは到底不十分であり、毎日日経新聞を読みこなし、自分で株式投資を行ったり、常日頃から投資銀行脳になっておく必要がある。

もちろん、そのようなレベルの学生はほとんどいない。応募している就活生のうち、1割、いや、5%もいないのではないだろうか?反対に考えると、この「竹」レベルを抜け出すことができれば、内定をもらえる確率は高いということだ。

4. 外資系金融に全落ちするパターン「松」:致命的な欠点がある場合

学歴、英語、金融知識、ビジネスに関する質問もクリアし、本来ならば少なくとも1社からは内定をもらえそうに見えるが、それでも、全落ちしてしまうパターンがある。
それは、主として、以下の2つの致命的な欠点があり、それで最後に落とされてしまうケースである。

(1)英語力が弱い
(2)協調性が無い。自意識の高さが表面に出るタイプ

わかりやすいのは、(1)の英語力が弱いケースである。もちろん、TOEICは900以上あるが、留学経験が無く日本で勉強しただけで、会話力に穴があるケースである。
総合商社と違って、外資系金融の場合は英語での面接が行われるケースが多い。そして、外国人はKYなところがあるので、英語が弱いと感じると遠慮なく×印を付けてしまうことがある。
これは、新卒採用ではなく、中途採用でもあり得るので、やはり英語力には要注意だ。

あと、これは最近は就活生の情報収集能力が高まっているのか、あまり見かけない。
外資系だとOKのように見えて、NGなのが、自己アピール過剰で協調性を欠くタイプである。もちろん、外資系金融の社員の中にはこのタイプは実在するが、就活のプロセスで表面化するとアウトである。

具体的には、ジョブで他人をあからさまに攻めたり、人の発言を遮って自らの意見を通そうとするタイプである。このタイプは真っ先に落とされてしまう。外資系金融も客商売なので、クライアントに失礼な言動をしそうなタイプは最も採りたくないのだ。
この点は、外コンとは微妙に異なる点かも知れない。

なお、上記2点については、予め注して準備をすると是正が可能なので、事前に修正しておきたい点である。

5. 外資系金融でマグレが起こりにくい理由

外資系金融の場合、マグレで内定を得るケースは少ない。
その理由は、面接回数が異常に多く、たまたま数人と相性が良かったということが起こり得ないからである。

また、面接においても、営業、トレーディング、バックオフィス、外国人といろいろなタイプを絡ませてくるので、大きな弱みがあるとどこかで露呈しやすい。

特にゴールドマン・サックスの面接回数は多く、10人以上は当たり前で、20~30人と会わされることもある。これは、20世紀もそうであり、変わらぬ伝統である。パートナーシップを採用していたという事情もあるのだろう。

このためか、外資系金融は超難関にも関わらず、内定を取る学生は全勝するということが多い。能力・性格的に外資系金融の条件を満たしている学生は極めて少ないし、規制産業であるので、似通ったタイプの学生が選好されるのであろう。

6. 外資系金融を記念受験するのは悪いことではない

以上のように、外資系金融は超難関で、全落ちするのがほとんどでマグレは無い。
しかし、だからといって記念受験は悪い話ではない。

トップクラスの応募者達から刺激を受けたり、知り合いになったりするのは良いことだし、今はダメでも将来中途採用で外資系金融にリベンジできるチャンスはあるからだ。

むしろ、最初から外資系金融は難関と諦めて何もしないよりは、あえて挑戦して、モチベーションアップやスキルアップに繋がるよう積極的に行動する方が望ましい。

従って、準備とか面倒かも知れないが、金融機関志望の就活生は一度は覗いておきたい業界だ。

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