大手法律事務所がベンチャー事業に乗り出す?若手弁護士の起業を支援の意図は?

1. 大手法律事務所がベンチャー事業に乗り出す?

本日、2019年7月24日付の日経新聞朝刊に、ぱっと見、理解できないような記事が載っていた。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO4765773023072019TJ1000?s=2

TMI総合法律事務所や森・濱田松本法律事務所などがベンチャー事業に乗り出すというのだ。ちなみに、日本を代表する大手法律事務所として、「四大法律事務所」という言葉がある。最近では、「五大法律事務所」という言い方をする場合もあるようだ。

<四大(五大)法律事務所>
https://ja.wikipedia.org/wiki/四大法律事務所

〇アンダーソン・毛利・友常法律事務所
〇長島・大野・常松法律事務所
〇西村あさひ法律事務所
〇森・濱田松本法律事務所
(〇TMI総合法律事務所)

いずれにせよ、日経新聞で取り上げられているTMI総合法律事務所も、森・濱田松本法律事務所も日本でトップクラスの質と規模(弁護士数)を誇る法律事務所であることは間違いない。

TMI総合法律事務所は、この8月に所内コンペを開いて、有望な事業に人材や施設を提供したりするそうだ。TMI総合法律事務所は、更に、集めたアイデアのうち、本体ではできない有望な案件については事業家に向けて別会社を設立して、所属する弁護士個人による出資などの手立てを検討するという。

他方、森・濱田法律事務所は、「リーガルテック」と呼ばれる定型的な法律業務をITで効率化する仕組みについて開発していくという。

これでは、まるで、法律事務所が投資銀行とかVCのようなことを手掛けるように見えるのだが、何故だろうか?

2. 若手活躍の場を確保?

日経新聞の記事によると、大手法律事務所が所内コンペを開いたり、新規事業を開拓したりするのは、事務所を出て起業したり転職している弁護士が増えている中、若手で優秀な弁護士を繋ぎとめる手段だという。

確かに、弁護士ドットコムの元栄弁護士とか、四大法律事務所からメルカリ、DeNAといったネット系ベンチャー企業に社内弁護士として転身したケースはある。

しかし、母集団を大手法律事務所とすると、そういった若手弁護士の数は多いとは言えず、パートナーになるのが難しかったり、ワークライフバランスの観点から、民間企業に転職してインハウスローヤーになるケースが圧倒的に多数であろう。

TMI総合法律事務所のことはよくわからないが、他の四大法律事務所については、パートナー以外の若手・中堅弁護士は、朝から深夜までの期限を切られた激務に追われており、とてもじゃないが、起業など考える余裕も無いし、勉強する時間的体力的な余裕は無いだろう。

それに、起業などリスクが高くて面倒なことを考えるよりは、パートナーになった方が遥かに高確率で高収入を得ることが可能であろう。

起業を考えるとしたならば、インハウスローヤーとして民間企業に転職して、時間的余裕ができてからではないのだろうか?

3. ベンチャー事業に注目するのは経営センスに長けたパートナーの嗅覚?

これはうがった見方かも知れないが、現在の四大(五大)法律事務所のシニアパートナー達は、2000年前後の第1次インターネットバブル、2004~2006年位の第2次インターネットバブルを見てきている。大手法律事務所はIPOとかVCのビジネスにも精通しているので、タイミングが良ければ、いかに簡単にベンチャー事業で儲けることができるかについて知っているはずだ。

企業法務がメインの四大(五大)法律事務所は、時給ベースの報酬体系なので、米国の弁護士物のTVドラマのように、勝訴金額にスライドした報酬で一攫千金というわけにはいかない。このため、ベンチャー投資で成功した場合の投資効率の高さに憧れていた面はあるかも知れない。

いずれにせよ、これは憶測の域を出ないが…。

4. 弁護士でも医者でも成功している人は経営感覚が優れている

大手法律事務所のパートナーも、FC化した美容外科においても、成功するためには人を雇って大規模化する必要がある。そうなると、職人としての個人の腕だけでは限界があり、経営者としてのスキルを備えていないとうまく行かない。

最近では、医者の場合も若くして開業しようという人が増えてきているという。また、副業や起業を始める若手の医者も増えてきたそうだ。

稼げる人達程、更に問題意識が高く、貪欲に稼ごうという姿勢は恐れ入る。

5. サラリーマンこそ、経営感覚を身に着ける必要がある

それに対して、サラリーマンの場合は、エリートと言われる人達でも経営者的なセンスは全然無いのではないだろうか?

これは副業/兼業、情報発信が著しく制限してきたからやむを得ない一面もあろうが、終身雇用が崩壊し、副業が緩和されてくるとそういうわけには行かなくなる。

経営者は一般社員に対しても「経営感覚を持て」というが、現状は全然できていないだろう。
しかし、これだと若手起業家やフリーランスだけではなく、医師や弁護士といったプロフェッショナル達からも、経営力という点において取り残されてしまうだろう。

経営感覚を磨くためには、本を読んだり勉強会をやっても不十分であり、自ら会社を興すなり、ネットビジネスでも副業でやってみることが一番であろう。

そのうち、エリートサラリーマンを対象とした起業/独立スクールが出来てくるかも知れない。