副頭取に元金融庁幹部を迎えた南都銀行は厳しい地銀経営をどう乗り切るのか?

1. 44歳の若さでコンサバな大手地銀の副頭取に就任?

奈良県の第一地銀である南都銀行は、副頭取に元金融庁幹部を迎えた。
これは異例の人事ということで、地銀業界において注目されていた。
https://diamond.jp/articles/-/197699

最も、副頭取に起用された石田諭氏は、元金融庁といってもいわゆる官僚キャリアの人ではない。石田氏は旧第一勧業銀行出身で、2003年に半官半民の産業再生機構に参加し、その後コンサル会社の経営共創基盤で働いていた経歴を持つ。

金融庁では地域金融企画室長というポジションについていたため、地銀経営に対する深い知識と経験があるという。そして、44歳という若さで副頭取というのが、この人事が注目される所以でもある。

2. 「純血」主義は限界で、新しい知見獲得が狙いの様であるが…

この南都銀行の橋本頭取のコメントが本日、2019年7月24日の日経新聞朝刊で紹介されていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47676170T20C19A7EE9000/

橋本頭取は、改革を起こさなければ持たないという問題意識をお持ちの様だが、改革を起こそうとすると既存勢力の抵抗が出て来る。しかし、功罪を考えた上で、思い切った意識改革をしたいため、今後の5年先、10年先を見据えて「軍師」として迎え入れたという。

そもそも、南都銀行は地銀によくある純血主義で中途採用はほとんど無かったという。南都銀行の独自の人材だけでは限界があるというのが、石田氏を副頭取として迎えた最大の理由だという。

3. しかし、画期的な施策というのが簡単に出て来るわけではない…

日経新聞のインタビューによると、どういった改革をするのかについて、その施策案が橋本頭取から語られている。

一概に規模を拡大することを是としているわけではなく、店舗の機能を見直して、地域エリアに応じて課題やニーズを把握するブロックエリア体制を採用したというのがその一例である。

また、4月からは目標について本部からの指示を一切なくしたという。

そして、事業承継やM&Aの仲介というソリューションを通じて他行との差別化につなげたい。特に、成熟期の地元企業に対して、「第二創業」を手伝いたい。それによって、適切な金利をもらえるようなソリューションを顧客に提供したいという。

しかし、上記のような施策例は果たして「改革」と言えるのだろうか?
営業エリアの再編というのは、既存の大手金融機関においても時々実施される施策であるし、本部からの指示を無くすというのは三井住友銀行の追随ではないだろうか?

また、ソリューション営業の強化と言っても、具体的にどうやって強化できるのだろうか?既存の行員のレベルを上げるというだけなら、今まででもできていたはずだ。M&Aの仲介が例に挙げられていたが、その分野に強い人材は他から厚遇されるので地銀の給料では集められないだろう。そうなると、給与体系とかを変えて対応するのか?

そのように考えてみると、改革しようという意識はうかがえるものの、具体的な施策となると、名案が簡単に出てくるわけではないのである。

4. そもそも地銀の構造的な問題点は解決可能か?

そもそも地銀の経営状態や将来性が厳しいのは、構造的な問題があるからだ。
第1は、日本企業に共通の問題であるが、少子高齢化による市場の縮小だ。南都銀行の場合、地元が奈良県なので四国や山陰地方と比べるとまだ恵まれているものの、首都圏と比べると厳しい状況にある。

だからといって、メガバンクの様に海外で稼ごうということは難しいし、証券ビジネスとか運用ビジネスに手を拡げる力もない。

地元の融資業務だけではジリ貧となってしまう。この点は、店舗の組織換えとかソリューション強化という施策では解決できそうにない。

第2の問題点は、ゼロ(マイナス)金利による金融収益の提言だ。かなり前から、地銀は地元企業や個人への融資だけではやっていけないので、公共債とか投資信託からの収益で稼いでいた。しかし、ゼロ(マイナス)金利によって、金融収益が激減してしまった。
これは、グローバルマクロ経済や国内の金融政策等にかかる大きい問題なので、自行だけで解決できるような問題ではない。

結局、地銀が将来生き残るためには、もっと思い切った「改革」が必要になるのではないだろうか?例えば、店舗については、機能をどうこういうのではなく、8割位を閉鎖して、本店と高収益店のみを残して、後はフィンテックの活用で、オンラインバンキングに切り替えていくというやり方だ。

運用が厳しくなったのであれば、高給で運用会社から専門家を引っ張ってきて対応することが求められるが、そうなると給与体系も抜本的に改革する必要がある。

また、海外でも稼がざるを得ないということであれば、メガバンクとか保険会社がやっているように、インドネシアとかベトナムあたりの小さい銀行を買収することも考えなければならない。そのようなグローバル人材は自行にはいないだろうから、結局高給で外から引っ張らないと行けなくなる。

それぐらい、地銀は厳しい状況にあるし、それは既に株価にも反映されている。(例えば、南都銀行の2019年7月23日時点でのPBRは何と0.26倍である)

従って、現状では、とても地銀を就活生に勧められるような状況では無いと考えられるが、いかがだろうか?