新卒採用の多様化により、5年後に総合商社の人気が低下しているかも知れない理由

1. 新卒採用の多様化が進展していくことが予想される

経団連の終身雇用廃止宣言に伴い、終身雇用とセットになって日本の雇用システムを支えてきた新卒一括採用にも変化の兆しが見え始めた。

例えば、いわゆる就活ルールの廃止に伴う新卒採用時期の多様化の動きがそうだし、くら寿司やNECの初任給1000万円といった給与面で多様化するという動きも出てきた。

もともと外資系では当然であった部門別・職種別採用というのも、一部の金融機関は導入しているが、今後は拡がっていく可能性がある。

2. 新卒採用の多様化で人気を集める2つのパターン

新卒採用の多様化の手段で、特に就活生の人気を集めることができるのは以下の2つのパターンであろう。

①配属部署・職種確約型

外資系は昔からそうであるが、国内系金融機関も、IBDとかグローバル・マーケッツ職に関して別採用を始めている。既に、この手の金融プロフェッショナルコースの難易度は極めて高く、外銀に準じるレベルになっている。

これが浸透していないのは、メーカーとか金融以外のサービス業に多いが、マーケティング職限定、経営企画限定、IT企画部門限定といったコースが事業会社で導入されると一気に人気が出る可能性が高い。

②別枠の年俸・給与提供型

これは、最近注目を集めている、くら寿司とかNECの新卒年俸1000万円別枠採用コースである。過去には、DeNAとかグリーが年収1000万円も「あり得る」という募集の仕方をしたことがあったが、実際に該当する社員がいたのかどうかは不明である。

これは従来にはほとんど見られなかったパターンであり、かなりの競争力を有するのではないだろうか?

また、上記①の部署・職種確約型が、この別枠の年俸供与制度と組み合わせると、少しばかりの上乗せ年俸でもかなりの魅力のあるコースとなり得るだろう。

例えば、今は文系学生を対象とした採用枠は無いが、三菱電機とか富士通が、AIビジネスの企画・事業開発向けの新卒を年俸600万円で募集をかけると、今までに応募しなかったような優秀な文系学生が殺到するかも知れない。

お金自体は驚くほどの金額でなくても、今の就活生はスキルや転職可能性も重視するので、IT、AI、Web系業種のような転職力を伴う部署・職種について別枠で募集を掛けると、面白いだろう。

3. 総合商社の新卒採用における課題

とにかく今は、総合商社の人気は高いので、総合商社は「採ってやる」的な立場にあるので、新卒採用における努力は見られない。

典型的なのが、配属先が全く保証されない点であるが、これが見直される兆しはない。せっかく難関を突破して総合商社に入っても、配属先が気に入らなくて早期に転職する社員がいるようだが、配属先における柔軟性の欠如は総合商社の弱点であろう。

また、新卒ではないが、総合商社は生え抜き重視であり、あまり中途採用は得意ではない。第2新卒採用のようなものを例年やっているが、三菱商事と三井物産は毎年決まった時期(春から夏)にしかオープンにならない。これは本来中途採用とは呼ばないのであるが、それでも新卒でいい人材を採れるからなのだろうか?

いずれにせよ、現状では総合商社の人気は高いため、新卒採用方法をいじらなくても問題無いというように見える。

4. 新卒採用の多様化によって、総合商社を逆転することは可能?

就活における企業名だけで比較すると、総合商社は業種としてトップであろう。
しかし、新卒採用の多様化の対応法によっては、他の業種・企業が総合商社を逆転することも十分可能である。

これは、既に起こっていることだが、国内系金融機関のコース別採用は職種が確約されるという魅力があり、給与水準も高いため、野村證券のIBDコース>三菱商事、ということはあり得る話である。

三菱商事は別格かも知れないが、給与水準や得られるスキルを考慮すると、国内系大手証券会社のIBDコース>総合商社、という図式は既に成立している可能性もある。

このため、他業種が初任給の多様化と配属先確約を組み合わせると、就職偏差値や人気度は企業名だけでは測れなくなる。

例えば、ドコモとかKDDIがAIビジネス企画職を年俸600万円で若干名別枠募集すると、そこに集まる学生の質は、総合商社のそれと変わらなくなるのではないだろうか?

また、くら寿司の年俸1000万円コースには、10人の募集枠に既に、東大早慶の学生が160人以上応募しているということらしいので、多額の初任給の効果は絶大である。

そうすると、外食、小売り、塾といった不人気な業界でも、初任給を上げると、総合商社を抜くことさえ可能であろう。

終身雇用廃止や年金2000万円足りない問題によって、会社名だけではなく、稼げるスキルというものの価値が高まっていくだろう。そうなれば、ますます職種別・年俸別採用というのは人気が出ていくのではないだろうか。

最後に

就活というのは、ビジネスマンとしての入り口に過ぎない。
総合商社というのは入り口時点では最高の勝ち組かも知れないが、わずか3~5年位もすれば、他の業界・職種の者に逆転されているということは十分にあり得る。

そもそも、就活時点における人気ランキングというのは時代によって変わるものなので、将来どうなるかはわからない。

総合商社はコンサバで従来の制度を変えることには消極的なのだろうが、配属先確約や高額初任給制度によって相対的な人気が低下し始めると、重い腰を上げて追随するかも知れない。

新卒採用の多様化というのは要注目の流れである。