就活生も知っておきたい?運用会社の投信直販戦略についてどう考えるか?

1. 運用会社の間で投信直販の動きが拡がる?

2019年7月23日の日経新聞朝刊で取り上げられていたが、運用会社の間で投信直販の動きが拡がっているという。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47635410S9A720C1EE9000/

投資信託の直販とは、運用会社が自社のホームページを通じて投資信託を主として個人投資家に販売することをいう。

通常、投資信託の販売は、販売会社と言われる証券会社、銀行、保険会社の対面販売によってなされるのがほとんどなのだが、そうすると営業プロモーションは販売会社に依拠することになるし、また、手数料を販売会社と折半することになるので、運用会社の取り分は減ってしまうという問題点がある。

とはいえ、証券会社や銀行と違って、個人投資家からはあまり縁の無い運用会社のホームページで販売しても、誰も買いに来てくれないのが現状だ。
このため、運用会社による投資信託の直販というのは長年マイナーな存在であり続けていた。

2. 実は大昔、運用会社による投信直販が注目された時期があった?

実は、大昔、運用会社による直販が注目され、直販を実行した運用会社がいくつかあった。
それは、第1次インターネットバブルの2000年前後である。

第1次インターネットバブルが日本に到来する少し前の1998年に金融ビッグバンという大きな制度改革があり、銀行の店頭における投資信託の販売が認められ、株式手数料自由化による株式手数料の低下があり、証券会社においても投資信託のプライオリティが高まったのだ。

このため、証券会社では地味目な商品であった投資信託が急に脚光を浴びる形となり、第1次インターネットバブルによる好況とも相俟って、運用会社は当時調子に乗っていたとも言える。

ところが、前述した通り、一般投資家からするとまだまだマイナーな存在に過ぎない運用会社のホームページで投資信託を販売したところで、それをわざわざ見つけて買ってくれる個人投資家はほとんど存在しなかった。

そして、投資信託を直接販売すると、証券会社や銀行と同様の販売インフラが必要となる。目論見書や運用報告書等法定の書類を全て、各個人投資家に交付する義務が生じ、ITシステム負担がバカにならない。

このため、運用会社による投資信託の直販は収益性が極めて悪く、直販を途中で辞めてしまった運用会社はいくつもある。

なお、現時点で日本の投信販売における直販の割合は1%にも満たない。
日本での投資信託の販売というのは、銀行や証券会社という販売会社の対面販売が無いと売れないのだ。

3. 今は運用会社が投信の直販を強化するタイミングと言えるだろうか?

運用会社が、今になって投信の直販を強化しようとする背景には、証券会社や銀行の業績不振に伴う販売力の低下があるようだ。

投資信託の販売について頼りにしてきた銀行や証券会社が、リストラで店舗や営業社員を削減すると、投資信託の販売力もそれに比例する形で低下するのではないかという懸念だ。

そして、直販の場合には販売等に掛かる報酬を販売会社と折半する必要が無いので、運用会社としては分厚い収益が可能となる。

しかし、考えるべきは個人投資家側の事情である。
買い手である個人投資家からすると、運用会社というのは馴染みの無い存在である。
投資信託を売買するのは、販売会社の営業社員が、直接自分に「この投信を買え」「この投信を売れ」と進めて来るからであって、自主的にネット検索を掛けて投信を買う個人投資家がほとんどいないという状況は何も変わっていない。

また、グローバルで見ても、投資信託の直販というのはマイナーな手段である。
アメリカやイギリスでも直販の比率はせいぜい1割程度である。アメリカの場合は、独立系のファイナンシャル・アドバイザー(IFA)が投資信託の銘柄選択をすることも多く、やはり投資信託は対面販売がメインである。

アメリカやイギリスの様に、個人資産に占める有価証券の比率が高く、投資家教育が進んでいる国でも投信の直販比率は1割程度であるのに、環境の異なる日本で投信直販を始めてもあまり期待はできないのではないだろうか?

むしろ、運用会社は魅力的な商品の開発やコストカットの推進とか、販売会社とのタイアップによる投資家教育の実行など、まだまだ他に優先順位が高い課題が残っていると思われる。

なお、就活生は面接等でこの直販の問題を突っ込まない方が賢明である。
何故なら、直販を強化しようとしている運用会社に上記のようなネガティブなことを言うと、感じが悪い。

だからと言って、知ったかぶりで「これからは直販ですね。」というと、本音では直販に冷めた見方の社員も多いので、「この学生わかっていないな」と思われかねないので、触れないのが無難だ。

直販というのは運用会社にとっては、マイナーなイシューなので、これについてディスカッションする必要は無いだろう。