1. LINEのワンコイン投資が登場
楽天、メルカリ、LINEなど、ネット系企業の大手は金融事業に注力をしている。
そうした中、LINEはスマート投資ということで、「月々3000円から」とか「ワンコイン(500円)から」投資が可能という少額投資サービスの広告・宣伝を始めている。
これに対して、少額投資をしたところで、大して儲からないから少額投資をわざわざ始める意味はないという声もあるようだ。
少額投資の意味を考えるに当たっては、サービスの供給側である金融機関の立場と、サービスの受け手側である個人ユーザーの立場があるので、以下、場合分けをして検討したい。
2. 少額投資サービスを提供する金融機関にとっての意義
金融機関が少額投資サービスを提供するのは今に始まった話ではない。
30年、いや、50年位前から少額投資サービスというのは存在した。大昔のキャッチフレーズは投資信託について「1万円から株式投資が可能」ということで広告宣伝を打っていた。
株式の少額投資サービスは「るいとう(累積投資)」とも言われ、何十年前からも各証券会社は提供している。
証券会社にとって、少額投資のインフラを作るのは、ビジネス的には儲からないのであるが、それはあくまでも長期的な投資としてやっているのだ。
日本の個人金融資産は半分以上が預貯金であり、諸外国と比べ、預貯金に偏っている点が何十年も前から指摘されてきた。
銀行に口座を持っていない人はいないであろうが、証券会社に口座を持っていない人は珍しくない。
例えば、証券会社最大手の野村證券の場合、個人の口座数は約530万口座であるが、メガバンクの口座数は最大手の三菱UFJ銀行だと4000万口座というレベルで、桁が違う。
何とかして、証券取引の裾野を拡げたいがために、証券会社は目先は赤字でも少額投資のインフラを整備してきたのだ。
特に将来を考えると、少子高齢化の影響で、このままだと既存顧客が超高齢化してしまう。75歳超の高齢者と積極的なリスク資産への投資は制限されてしまうので、この事態を避けるためには若い世代の開拓が不可避なのだ。
その点、LINEの場合は、証券取引以外については非常に多くの若い世代のユーザーを抱えているので、そこからほんの一部でも証券取引に誘導することができれば、将来に向けての顧客基盤を持つことが出来る。
これが、LINEにとっての少額投資のPRの意味である。また、LINEの場合は、他のLINEにおけるサービス履歴を合わせて、AIを用いたビッグデータ分析ができると、より効率的な証券取引サービスの案内・収益向上策が実現できるという狙いがあるのかも知れない。
3. 個人にとっての少額投資を始める意味
①確かに、少額投資のままだと大して儲からない
例えば、月々1万円を10年間、リターンを3%と想定した場合、10年後の最終積立金額は約139.7万円である。投資元本の累計額は120万円なので、10年間でもわずか20万円弱しか運用による収益は得られない。
リターンを5%としても、10年後の最終積立金額は約155.2万円なので、収益は35万円程度なので大した金額ではない。
この数字だけを見ると、確かに、少額投資をしたところで経済的には大した意味はないということになる。
②しかし、少額投資を始めることによって金融リテラシーが高まればそれは意味がある
しかし、まだお金がない人達が少額投資を始めた場合には、金融リテラシーが向上する可能性がある。
実際に、投資の本を読んで何もしないのと、実際に少額でも証券取引を始めてみるのとでは投資に関する関心度が大きく異なるはずだ。
少額投資を始めるに当たっては、証券口座開設手続きを行うという経験が必要となり、投資を始めると残高明細が証券会社から発送されるので、定期的に自分の投資状況をチェックする習慣ができる。そうなると、経済とか投資に関する関心度が高まるので、金融リテラシーを高めやすい。
金融リテラシーが高まると、最低限の効果として、安易な詐欺的な投資話に引っかかりにくくなる。そんなに簡単に儲かるわけがないということを体感できているからだ。
また、年収が大幅に増えなくても、大企業とかに勤めている人の場合には、401Kに加入している人達もいるだろう。そういう人達は、数十年後を見据えた上で、投資対象を再考してみることができるようになるだろう。
さらに、有価証券投資では無いが、収入が増えてくると収益不動産投資というのも選択肢となる。この場合も、金融リテラシーを磨いておくのは有用である。
特に、今は若くてお金はそれ程無いが、将来成功したいという人はいろいろな意味で自分の能力を高めておくことが有用であり、金融リテラシーを磨くというのは決して無駄にならない自己研鑽であろう。