1. 外銀、外コン、総合商社から内定を取るには何か武器が欲しい…
新卒市場においては、売り手優位と言われているが、特定の人気業種・企業に対して過度に就活生が集中するため、外銀、外コン、総合商社については、トップ校の学生でも内定を取るのは容易ではない。
そこで、他の学生と書面上で差別化できる有力な何かが欲しいところだ。
そうした中で、トップ就活生からすると、本末転倒かも知れないが、内定を取りやすくするために難関資格に挑戦しようという考えも浮かんでくる。
そうした難関資格の筆頭となるのは、公認会計士資格であろう。
いくら、外銀、外コン、総合商社とは言え、就活段階で公認会計士資格を持っていたらさすがにインパクトがあるであろう。
特に、慶應大学は長年公認会計士試験で合格者数トップの位置にあり、自分に自信のある学生は就活目的で公認会計士試験に挑戦しようと考えるかも知れない。
2. 公認会計士試験に要する費用と合格の可能性
①公認会計士試験に合格するための費用
まず、公認会計士試験に挑戦しようと思うと、独学ではほぼ合格は不可能であるので、どこか予備校に通う必要がある。
公認会計士試験に関して実績のある予備校の1つのTACに聞いてみると、最も標準的なコースはゼロから合格まで1年半のコースであり、受講料は70万円代ということである。
そして、1年半かけて合格できなかった場合には、上級コースというのがあり、その受講料は約40万円程度だということだ。
そうすると、1年半合格コースと上級コースとを合わせて120万円ほど用意しておけば、少なくとも学生時代には3年生と4年生の2度、論文試験に挑戦することができることとなる。(短答試験に合格できた場合)
②公認会計士試験に合格できる可能性
公認会計士試験の合格率は10%程度である。
もっとも、10%というのは平均値なので、TACの人によると、慶應の学生の場合にもう少し高く15%程度はあるのではないかということだ。
そうすると、大学入学して直ぐにTACの1年半合格コースに申し込むと、2年の秋か3年の春に短答試験に挑戦し、3年の夏の論文試験に合格できればベストである。
また、3年生の夏の論文試験で落ちた場合も、上級コースに通って、4年生の時に合格できればまずまずであろうか。
しかし、10%という合格率なので、3年生か4年生のうちに合格できる可能性は、せいぜい2~3割というイメージなので、決して楽なものではない。
③就活の時期の前倒しの問題
経団連の就活ルールの廃止によって、就活の実質的な開始時期がどんどん前倒しになっていくことが予想される。2019年の時点では、外銀とかは3年生の夏ぐらいにインターンが実施されるので、そうなると、公認会計士試験の論文式の合格発表時期は秋(11月)であるので、間に合わなくなってくる。
もちろん、就活の時期に公認会計士試験合格という栄誉を見せにくくなるだけでなく、論文式の試験が8月中にあるので、現実的には就活と公認会計士試験の受験とが両立できないような状況になる。
もっとも、短答式試験の合格発表は1月と6月であるので、公認会計士試験の短答式合格という点はアピールできるだろうが、それだと最終合格と比べてインパクトは半減してしまう。
3. 公認会計士試験に挑戦することに伴うリスク
①英語力を向上させる余力が無くなる
公認会計士試験に本格的に挑戦すれば、仮に合格できなくとも、それなりの財務・会計に関する知識は身に付くし、短答試験だけでも合格できればある程度の箔付には使えるだろうから、公認会計士試験に挑戦することは無駄ではないという考え方もある。
しかし、公認会計士試験に本気で合格しようと思うと、学生生活のほとんどを試験につぎ込むことになるので、他のことに力を振り向ける余力が無くなることが懸念される。
特に、一番厄介なのは英語力の向上だ。
外銀、外コン、総合商社の内定が欲しければ、TOEICは少なくとも800点台は欲しいところだ。しかし、公認会計士試験に没頭すると、なかなか英語力向上にまで手が回らなくなってしまい、そうなると、入口で跳ねられてしまうリスクが生じてしまう。
②企業研究、インターンなどの活動を阻害
また、今の就活においては、外銀、外コン等の場合は、ファイナンス、フェルミ、ケース対策といった固有の対策が求められる。また、インターンとか企業訪問といった活動も重要なので試験勉強を重視すると、そういった就活が疎かになってしまい、下手をすると共倒れのリスクが生じてしまう。
このように、公認会計士試験に走ってしまうと、本来求められる就活対応が十分できなくなってしまうデメリットがある点を留意しなければならない。
4. 就活に使える公認会計士試験以外の代替案はあるか?
上記の通り、公認会計士試験と難関企業の就活とを両立させることは難しく、下手をすると両方とも中途半端になって、最悪の結果を生じてしまうリスクもある。
このため、就活を重視するのであれば、公認会計士試験を就活に利用しようというのはあまり得策でないと思われる。
そういった場合、何か公認会計士試験の代替案はあるのかが気になるのところであるが、その例としては、証券アナリスト試験(CMA)とかUSCPAあたりが挙げられる。
証券アナリスト試験は1次試験合格で良く、外コンじゃあまりアピールできないかも知れないが、外銀や国内系証券会社の専門職コースだとそれなりの効果はあるだろう。もちろん、資格取得に伴うインパクトは大してないが、金融専門所億コースとか外銀のジョブにおいては基本的なファイナンス・会計知識が必要となるので、無駄になりにくくコスパの良い資格と言える。
5. 公認会計士試験を就活に利用できる特殊なケースとは?
上記の通り、合格率や対策に必要な時間と労力を考えると、一般的には公認会計士試験を就活目的で受験するというのはあまりおススメではない。
ただ、例外があるとすれば、早稲田や慶応の付属校で力が有り余っている優秀な学生であろう。このような学生は大学受験をする必要が無いので、高校時代に簿記1級を取っていれば、大学1年の冬に短答式試験に合格し、大学2年に最終合格を狙える可能性がある。
そのようにスタートを早められる場合には、選択肢となりうるだろう。もっともその場合には英語は必要となるので、付属校の間に短期留学する等して対応を済ませておきたい。
あと、これはかなり特殊なケースであるが、進学校から東大文Ⅱに余裕で合格し、特に数字に自信のある学生の場合だと、大学2年次に一発合格を狙うことも可能であろう。
しかし、一般的には、公認会計士試験はまだまだ難易度が高く負担が高い試験なので、就活対策ということであれば、証券アナリストかUSCPAにしておくのが無難であろう。