NewsPicksの「年収が高い企業」ランキングの問題点と、真の高年収企業とは?

1. NewsPicksがopenworkとのコラボ記事で「年収が高い企業」ランキングBEST30を発表

2019年7月9日現在、NewsPicksのプレミアムサービスに登録しないと読むことはできない記事ではあるが、10日間は無料で閲覧も可能だそうなので、興味がある方は登録してみてはいかがだろうか?

<NewsPicks:【社員が証言】「年収が高い企業」ランキングBEST30>
https://newspicks.com/news/4033370/?ref=index

2. ランキング内容は言うまでもなく、外銀、外コン、外資IT系がメインであるが…

一応、プレミアムサービスの登録が必要な記事なので、ネタバレはしないが、Pickerのコメントを見ると明らかなように、トップ10の過半数は外資系金融機関であり、それ以外のランキング業種は外コン(但し戦略系)、外資IT(GAFA)+シスコシステムズ他となっている。

これ自体にサプライズは無い。

3. しかし、外資系企業は従業員の給与格差が著しいので平均値にはあまり意味が無い

これは、国内系企業にいるとピンと来ないかも知れないが、外資系企業、特に外資系金融機関の場合には従業員の給与格差が激しすぎて、平均値にはあまり意味が無い。
例えば、最も従業員間の給与格差が激しい外銀(外資系証券会社)の場合には、以下のような給与格差が存在する。

①職種間格差:フロントオフィスとバックオフィス

外銀の場合、フロントオフィスと呼ばれる直接収益を産みだす部門と、そうではないバックオフィスとの間には別会社と思われる程の給与格差が存在する。

フロントオフィスとは、例えば、トレーディング、セールス、IBD、リサーチ(アナリスト)等が該当する。

バックオフィスというのは他の事業会社と近いイメージだろうが、人事、経理・財務、法務コンプライアンス、IT、業務(オペレーション)等がこれに該当する。
ITとか業務をひっくるめてミドルオフィスという言い方をする場合もあるが、給与テーブル的には他のバックオフィスと類似している。

フロントオフィスとバックオフィスとでは、そもそも初任給の段階で違っているし、その後の昇給ペースも異なる。基本給はそれ程差は無いが、ボーナスが大きく異なる。

もちろん、フロントオフィスの方がリスクも高く、クビ、リストラのリスクは相対的にフロントオフィスが高い。(もっとも、バックオフィスも安全では無いが…)

②フロントオフィス内格差、バックオフィス内格差の存在

外銀の場合、フロントオフィス、バックオフィスの内部でそれぞれ部署によって給与テーブルが異なる。

フロントオフィスの場合、当該部門が収益を上げているか否かによって年収の水準、特にボーナス水準が大きく異なる。一般的には、トレーディングとかセールスの方がIBDよりはアップサイドはあるであろう。他方、厳しいのは収益性が大幅に落ちているリサーチ部門(アナリスト)である。

バックオフィスの中においても、部門間の給与格差は存在する。社内弁護士が多いということもあって、バックオフィスの中では法務コンプライアンス部門がアップサイドは高いであろう。他方、人事とかITはMDクラスでも年収5000万円が限界であり、最も低いのは内部監査ではないだろうか。

③タイトルによる格差の存在

これは良く知られた話かも知れないが、同じ部門でも、アナリスト(平社員)、アソシエイト、VP、MDとタイトルによって年収レンジは大きく異なる。
リーマンショック前はともかく、今では、アソシエイトだとフロントオフィスでも年収3000万円というのは厳しく、欧州系とかであれば年収2000万円に満たないセールスは普通に存在する。

他方、フロントオフィスでMDになれば、いくら少なくとも年収5000万円以上はあるだろう。とは言え、昔と比べるとMDのベースの水準は上がっているが(3500~4500万円)、ボーナスの水準は大幅に下がっており、MDと言えども年収1億円に到達するのはかなり難しい状況になっている。

バックオフィスの場合はフロントオフィス程の差は無いが、アソシエイトだと年収2000万円に到達するのは難しい。一人前と言えるVPになると年収2000万円に到達できるが年収3000万円位がいいところである。MDになると年収4000~5000万円位が期待できるが、バックオフィスの場合、MDというのは各部門に1~2人なので、ここまで昇格できるのはごくわずかである。

以上のように、外銀の場合、フロントとバック、各部門・部署、タイトルによって給与体系・給与水準が全く異なるので、平均値はほとんど意味をなさないのである。

4. 意味をなさない平均値であるが、真の高年収企業について考えると…

外資系、特に外銀の場合は平均年収というのはほとんど意味が無い。
しかし、「平均値」というのであれば社員数が少ない企業の方が高くなりがちである。

そうなると、平均年収ベースで比較をすると、年収ランキングのトップはヘッジファンドとなるだろう。何故なら、社員数は10~30人とかなりの小規模のものが多く、年収で見るとPM(ポートフォリオ・マネージャー)で稼ぐ人の場合は数億円レベルなので、平均値が吊り上げられる。バックオフィスでも部長(とはいえ部下がいない、いても1~2人)だと年収3000~4000万円くらいあるだろうから、全体の平均値ではゴールドマン・サックスやUBSよりも高い数値となるだろう。

もちろん、大した意味は無いのであるが…

5. この年収が高い企業ランキングを見て感じたこと

外銀、外コン、外資ITが上位を占めるというのは想定通りであるが、外コンというのは就活で内定を取ることの難しさと入社後の生存競争や労働環境の厳しさを考えると割が合わない気がする。

学業優秀なトップ就活生だと、「難しいからいい」という偏差値至上主義的な価値観があるようだが、もう少し外資ITに目を向けてもいいのでは無いだろうか?

また、国内系IT企業或いはベンチャー企業がランクインしていないことが残念である。規模が小さいと平均値を上げやすいので、国内系の小規模な優良企業がランクインしても不思議ではない。

日本のIT、ネット関連企業はそもそも、就活時点における人気ランキングにすら登場しない。くら寿司が初任給1000万円を打ち出したのであるから、ヤフーとか楽天あたりも特定の社員には思い切った高給を提示してもいいのではないだろうか?