年収重視の場合、一橋大学の就活生が採るべき対策。銀行やメーカーは厳しいか?

1. 「年収」は就活における重要な判断軸である

就活というのは、各自の価値観・幸福感に基づいて行うべきものなので、その成否は就職難易度・人気ランキングによって決まるのではなく、各自の満足度によって決まるというのが建前論である。

しかし、学生の段階で明確にやりたいことが決まっている場合は多くは無いし、実際やってみたかった仕事に就いても「こんなものか」と後悔することもある。

そうした中で、「年収」というのは客観的で普遍的な職業選択における判断軸である。
外銀とか総合商社が人気なのは「仕事が面白い」「見た目がカッコいい」という理由もあるのかも知れないが、他の要素が同じで年収だけが1/3になれば、どうだろうか?

その場合、仕事の中味は変わらないにも関わらず、大抵の人は目指さなくなるだろう。また、「見た目がカッコいい」といった外部的な評価も、年収水準が大幅に下がれば失われてしまう。

このため、年収水準の如何に関わらず、この仕事をやりたいというのが明確でなければ、「年収」を判断軸として就活を行うのは間違いでは無いだろう。

また、ファーストキャリアはその後の転職とか留学する力に大きな影響を与えるため、迷っているのであれば、とりあえず新卒の段階で年収の高い会社(こういう会社は概して転職力や留学力も高い)を選択することが賢いやり方だ。

一橋の他、東大、京大、慶應、早稲田といった上位校(特に文系)の学生は、何となく、このあたりのことを直感的本能的に理解しているため、就職人気ランキングを見ると、年収の高い会社ばかりが並んでいるのであろう。
(なお、ここでの就職人気ランキングは、ワンキャリアの東大・京大生の就職ランキングのことである。)

<ワンキャリアの21卒就職ランキング>
https://www.onecareer.jp/articles/1907

2. 令和の時代も高年収であり続ける業種・企業・職種は何か?

とりあえず、「年収」の高い業種・企業・職種を目指して就活するのは悪くない戦略ということであろうが、年収水準というのは外部環境によって変化する。

例えば、現在、国内系企業で最も人気が高いのは総合商社であろうが、バブル期とか90年代は今ほど人気がなかった。21世紀になって資源価格が高騰し、総合商社の年収水準も上昇したので人気が出てきたのだ。

他方、銀行は90年代の金融危機とか公的資金注入の影響もあって、年収水準は当時よりも下がっている(課長クラスの中間管理職は大きく変わっていないが、部店長クラスは当時は年収2400~2500万円位あったが、今では1800万円位であり、アップサイドがかなり限定されてしまった。)。

また、圧倒的に高年収の外銀も、リーマンショック後にはフロント職の年収水準は半分位になってしまった感がある。リーマンショック前であればVP以上のフロント職だと年収1億円というのは珍しくなかったが、今ではMDクラスじゃないと1億円は難しい状況にある。
それでも十分高いじゃないかということであるが、そこまでに到達する期待値と、年収が維持できる期間やリタイアの時期を踏まえると、結構厳しい状況になっている。

令和の時代になると、少子高齢化により国内市場の縮小化は避けられないだろうし、AIとかIT系の技術革新によって稼げる業界・職種とそうでない業界が大幅に変化する可能性もある。

従って、「年収」といっても現状が継続するという前提ではなく、将来の変化をある程度見据えて行動することが求められる。

3. それでは、令和の時代に高年収が期待できる業種・企業・職種はどうか?

①総合商社:一橋生はもっと積極的に三菱商事の内定を取りに行くべき

総合商社のビジネスモデルの特徴は、ポートフォリオビジネスであって、世界中のあらゆる業種を展開することができる。従って、特定の業種が沈んだとしても、総合商社は生き残ることができる。だからこそ、総合商社は戦前から長期に亘って生き残って来ているのである。

総合商社は、コンサバな社風とテクノロジーには強くないという課題があるので、将来最新のIT/AI分野の成長を取り込めるか疑問であるものの、人材の質や長い歴史で生存してきたマネジメント能力の高さから、それなりの高年収は維持できるのではないだろうか?

年収というと、一橋生はもっと三菱商事の内定を取りに行くべきであろう。
何故なら、三菱商事は社長の鶴の一声で2年ほど前に給与水準を引き上げたこともあり、他の財閥系(物産と住商)より年収水準で1割、非財閥系(伊藤忠と丸紅)よりも2割は高いのではないだろうか?

もっとも、一橋生は近年、三菱商事への就職では苦戦しているようである。
これについては、過去記事で分析したが、対策はもっと単純化も知れない。

<一橋生が三菱商事、三井物産の就活で苦戦している原因>
https://career21.jp/2018-11-27-171054

というのは、先日たまたま、こういった記事を発見した。
https://meijinow.jp/jobhunting/job/35516

この土谷さんは明治大学政治経済学部から三菱商事に内定している。この記事を読むと、帰国子女かどうかは不明だが留学すら無さそうである。
彼が三菱商事から内定を取れた理由は、「OB訪問200回、インターンシップ15社参加」、これに尽きるのではないだろうか?

精神論的になってしまうが、一橋生も彼くらいに頑張れば、三菱商事に内定することは十分可能であろう。

②銀行と保険会社

留意すべきはこのセクターである。
一橋大学の学生に話を聞くと、外銀、国内系金融機関のコース別採用あたりに全落ちしてメガバンクに行く学生が多いという。また、保険会社については「コスパが良い」という認識で、東京海上日動を含め、保険会社であれば内定は難しくないとのことである。

しかし、問題は学生が20年後には銀行や保険会社の年収が今より2割位は下がる可能性があることを認識していない点だ。

銀行も保険も少子高齢化に伴い国内市場の縮小化は避けられず、店舗や人材の過剰感は強い。低金利(ゼロ金利)から抜け出せる見込みもなく、そうなると金利収入も期待できない。だからと言って、海外(アジア系が多いようだが)に進出すると、証券会社の例を見てもわかる通り、難易度が高く巨額の特損に繋がるリスクがある。

そして、銀行や保険では、外銀とか運用会社に転職できるスキルは身に付かないので、年収を上げられるような転職は難しい。

実際、銀行はこの20~30年で部店長クラスの上級管理職の年俸水準は大幅に下がっているので、次は課長・次長クラスの中間管理職の年収が2~3割減っているリスクは十分にある。

したがって、銀行・保険会社を選択する際には、このあたりを十分に意識する必要がある。なお、保険会社については、何となく大手を選択するのではなく、日本生命か東京海上日動を選択すべきであろう。何故なら、両社はそれぞれの業界でダントツトップの位置にあり、年収水準が他の同業大手よりも2割程度は高いからである。

③外資系金融機関について

外銀は、リーマンショック後は、大幅に年収水準は下がったとはいえ、今でも20代で年収2000~3000万円、30代で5000万円以上稼ぐことも可能である。
年収を軸に選ぶとすると、やはり外銀が筆頭格であろう。

もっとも、外銀の新卒採用枠は業界全体でせいぜい200人位であり、極めて狭き門である。現実的には、国内系証券会社のコース別採用を併願して、内定をもらったところに行くということになるのだろう。

外銀は、リーマンショック以降トレーディングが抑制されたので、構造的に稼げなくなっている。このため、欧州系とか米国でも業界下位は将来的に厳しそうであるが、米系の大手とかUBSあたりは何とか生き残るのではないか?

そうなると、新卒で外銀を落ちても国内系のどこかに入社して、将来VP以上で外銀を狙うというキャリアは良いのだろう。

また、学生にはまだまだ知られていないが、バイサイド(運用会社)は悪くない。
何故なら、アジアや途上国の成長、グローバルにおける富裕層の更なる富裕化の流れは継続するであろうから、運用ビジネスの市場はまだまだ成長の余地があるからだ。

外資系の運用会社は基本的に新卒採用はやっていないので、国内系の運用会社でPM(ポートフォリオ・マネージャー)を目指すのが王道だろうか。

<運用会社の年収について>
https://career21.jp/2019-01-09-072810

③コンサルティング・ファームについて

まず、コンサルティング・ファームは、戦略系、総合系、独立系とサブカテゴリーに分類されるが、イメージ程には高収入ではない。

戦略系の頂点のMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)あたりでも、30代以降のマネージャー、プリンシパルクラスで年収2000~3000万円である。新卒からだとほとんど到達不可能なパートナーで4000万円~である。

PwC、アクセンチュア、デロイトあたりの総合系ファームだと、30代のシニア・マネージャークラスで1500~2000万円、パートナーで2000万円~である。

仕事のハードさ、拘束時間を考えるととてもペイしない気もするが、就活生はその点は百も承知で、その後の転職を想定しているのであろう。

従って、ファーストキャリアとしてコンサルを選ぶというのは、その後の転職能力を考えると間違った選択肢ではないと思われるが、カギは2社目以降をどうするかということである。

「年収」を判断軸とした場合、望ましいのは、GAFA或いはマイクロソフト、シスコシステムズ、オラクルあたりだろう。タイミングにもよるが、株式ボーナス(RSU)でそこそこの資産形成も狙えることが魅力である。

また、プログラミング能力よりの専門スキルが習得できれば、外銀のIT部門という選択肢もある。他のフロント部門と比べると少ないが、VPだと年収2000~3000万円位は可能である。

④メーカーについて

理系の院卒なら理解できるが、文系で特定のメーカーにどうしても行きたいというケースはあるのだろうか?従来だと、鉄鋼、化学、エネルギー関係に体育会のコネ等で就職するということは聞いたことがある。しかし、重厚長大系に自主的に行きたい学生が今どれくらいいるかわからない。

メーカーというと、B to C系の企業で、サントリー、キリン、味の素あたりに行く学生はいる。このあたりが好きな学生はいいだろう。

「年収」重視という判断軸を前提にした場合、メーカーを選択すべきではない。
良く言われるのが、給与水準が高いと言われるメーカーでも「金融の7割」と昔から言われてきた。また、給与水準だけでなく、メーカーの場合は転職力という問題もある。

金融やコンサルの様に普遍的なスキルが身に付きにくいため、シャープや東芝のような経営難が来た場合、文系社員は転職スキルが劣るからだ。

もっとも、「年収」を判断軸とした場合でも、メーカーの中にも例外的に面白い選択肢もある。

先ずは、キーエンスだ。キーエンスの年収水準はまだまだ上昇過程にあり、20代で2000万円、30代で3000万円も可能になってきている。上場しているまともな会社なので、世間で揶揄されるようなブラック企業ではない。激務度で言えば、コンサルとか外銀の方が遥かにひどい労働環境である。ここはもう少し多くの学生が関心を示してもいいのではないだろうか。

もう一つは、任天堂である。
任天堂の給与水準自体は特に高くは無いが、ゲーム自体は極めて収益性の高い事業である。
マイクロソフト、ソニー、Googleといった他業種のトップ企業が参入したがるには理由がある。

また、今では完全に存在感を失って来ているが、DeNA、グリー、コロプラ、mixiなどのゲーム事業は今でも高収益だ。一番稼げるゲーム事業に人材を集中せずに、非ゲーム事業にハイスペック人材を投入したから上手く行かないだけで、ゲーム事業に優れた人材を投下すれば一発で稼げる企業に復活できるはずだ。
サイバーエージェントなどは今だにゲームで稼いでおり、だからこそ、Abema TVを続けることができるのだ。

従って、ゲームが大好きで将来開発したいという意欲のある学生限定であるが、ゲームに関するスキルは将来大化けする可能性はある。

4. 法学部生の可能性:大手渉外事務所の弁護士

これは法学部だけの可能性であるが、法科大学院に進学して、弁護士になると4大渉外事務所に就職をするといい。

リーマンショック以降、渉外弁護士の年収は下がったとは言え、初年度1200万以上、30歳時点で2000万円以上は今でも可能である。

問題はパートナーへの昇格である。今では5~6人に1人しかパートナーになれなくなっている。但し、晴れてパートナーになると、年収4000~5000万円から1億円を60歳まで維持することが可能だ。更に、シニア(エクイティ)パートナーになれば、年収数億もあり得る。(なお、事務所によってはパートナーにはなれるが、完全歩合制で稼げないと年収2000万円程度にしかならないケースもあるので、要注意である。)

大手渉外事務所はかつては東大法学部の独壇場であったが、法科大学院制度以降は変容しているところがあり、学歴よりもパートナーから好かれるかどうかがカギである。

渉外事務所には弁護士の中でも最優秀層が集まるので、競争は厳しい。
新司法試験に通るかどうか不安なようでは、勝ち残るのは難しいであろう。

このため、法学部の中でも既に司法試験予備校に通っていて成績優秀で、新司法試験は問題無いという自信がある層は、この途を目指すのが良いのだろう。

5. ベンチャー・起業について

①IPO前の勝ち組ベンチャーにストック・オプション狙いで転職する

ベンチャー企業といってもいろいろで、上場前のメルカリのような企業もあれば、自ら起業するケースもある。

自ら起業するのではなく、既存のベンチャー企業に就職するのであれば、シード・アーリーステージレベルだと成功確率は低く、ストック・オプション狙いであれば、メルカリのような勝ちが見えている企業を狙うべきであろう。

しかし、IPO前で既に大きくなったベンチャー企業にはVCとかが結構入っているので、付与されるストック・オプションの株数は少ない。せいぜい、1億円位か?
しかも、行使できるようになるまで2年間は待たないといけないし、成功裏にIPOできることが前提である。

そもそも、ストック・オプションをもらえるポジションはそれ程多くないので、意外にこの途は容易ではない。

②自ら起業するケース

本来、年収重視であれば、最も稼げる可能性があるのはこの選択肢である。
旧商大の位置付けの一橋からすると、もっと多くの学生がこの市場に参入すべきであろう。

一橋の起業家というと三木谷さんが有名だが、他にも成功したベンチャー起業家としては、レアジョブの加藤さん、ロコンドの田中さん、ZUUの冨田さん、freeeの佐々木さんなど実は結構いる。

起業というと、最近このようなベンチャーファンドが出来た。
荒井さんというのは東証一部上場のM&A仲介会社ストライクの創設者だ。
起業を目指す一橋生としては、こういったところも積極的に活用したいものだ。
https://jp.techcrunch.com/2019/06/10/josuiventures/

また、いきなりファンドからの出資は敷居が高いというのであれば、学生の起業サークルも悪くない。東大のTNKは、他大の生徒も受け入れているので、参画してみてもいいだろう。

<東大の起業サークルTNK>
https://career21.jp/2019-03-29-133045

自らベンチャー起業を目指すといいのは、仮にそちらでは成功は難しくても、何らかの成果を残すことができれば、就活においても十分に有効活用できるからである。

外銀でもコンサルでも商社でも、新規事業を創造できないと将来は厳しい。他方、この種の業界を志望する人達はコンサバであるし、カルチャー的に起業家とは合わなかった。
このため、需給的にも、起業家的なセンス・スキルがある学生は、就活においても人気は極めて高いのである。

従って、「年収」重視という軸であれば、学生時代に起業に足を突っ込んでみるというのは大変良い経験なのである。起業といってもネット1つ、自分一人で始めればいい話なので、お金が掛かったりリスクを背負う必要は無い。

今後令和の時代において、最高の勝ち組は、外銀でも外コンでも商社でもなく、このセグメントの人材であろう。

最後に

令和の時代になると、AI/ITの進展、少子高齢化等の状況から、現在の人気企業を追いかけても、それらが20~30年後も優良企業であるかどうかはわからない。
そうなると、終身雇用を前提としたキャリアプランはリスクが高く、いかに転職力を高めることができるかを視野に入れた戦略的な就職活動が望まれる。

外銀とか外コンは既に過当競争の段階にあるが、起業に足を突っ込む学生は有力校の中でもまだまだ少ない。他の優秀な学生の参入が始まるまでに、起業とか個人でのネットビジネスを経験し、何からのスキルや経験を取得しておきたいところだ。