1. 新卒採用において外銀の必勝策というのはなかなか見当たらない…
初っ端から弱気な見出しで申し訳ないのであるが、現役の外資系金融の社員とかOBに聞いてみても、今就活生に戻って外銀を受けたとしても必ず内定をもらえる自信は無いということが多い。
もちろん、40歳以上の現役或いは元外銀マンの時代は中途採用で外銀に行くケースが多かったので、厳しい新卒採用の洗礼を受けていないことも多い。中途採用は、職歴がメインであるし、面接でも現在の職務に関することが大半なので、ある意味新卒よりも内定を読みやすい。
しかし、特に現在の外銀の新卒採用の場合には、とにかく競争率が高い。学歴や英語力は前提条件だし、筆記試験ではなく、ジョブや面接を通しての判断なので、好き嫌いとか面接官が誰といった運の要素には必ず左右される。
このため、外銀内定のための必勝法というようなものは見出し難いが、それでも、ある程度の対策を立てれば、そこそこのところまでは行くだろうという対応策はある。そうすると、複数応募すれば、少なくとも1社からは内定をもらえる可能性を相当程度高めることは可能であろう。
そこで、以下、難関の外銀対策について、最低限やっておきたい項目について検討してみた。
2. 基礎的な準備事項
①英語力
これは当然である。帰国子女や留学経験者以外であれば、TOEIC900以上は取っておきたい。商社、国内系証券IBD、コンサルあたりだとTOEIC800点台であれば何とか恰好はつくのであるが、外銀の場合は英語面接の可能性がある。そうなると、TOEIC800点台だと苦しく、TOEIC900以上の水準、或いは、ベルリッツで面接特訓コースでも別途受ける必要がある。
今では、ちょっといい会社・いいポジションに就こうと思えば、英語力は必須という感じになっているかも知れないが、その中でも面接リスクを踏まえると、外銀の場合には高度な英語力を磨いておきたいところだ。
②ファイナンス、会計スキル
外銀を本気で目指すのであれば、これは苦にならないかも知れない。
これらの世界が好きじゃないと、仮に内定をもらえたとしても、入社してから先が苦痛であろう。
やはり、外銀を目指すからには相場とか企業金融が大好きである必要がある。
有名大学の中でも上位層の学生からすると、このあたりの準備は大したことは無い。簿記2級、証券アナリスト試験(CMA)あたりを取っておけば良いが、これらは大学1年生のうちに楽に取得できる。
むしろ、課題は実践的な興味・関心であり、実際に少額の株式投資或いはFX投資をするなどして、自らの相場観を語れるようになっておきたい。例えば、グローバル・マーケッツとかリサーチ系であれば、「今年の日経平均株価の高値、安値予想と理由」「お勧めの銘柄と理由」について質問されても、スラスラと自分の考えを話せるようになっておきたい。
これは、正解がある世界でないので、興味さえあればそれ程難しい話ではない。しかし、本当は相場に興味が無い場合には、ボロが出やすいところである。
IBDの場合には、「気になるM&Aのディールを10個言え」に余裕で対応できる位、ディールについて日頃から関心を持っておきたい。ここでの留意点は、決して暗記のテストでは無いということだ。ひたすら成立したディールを整理して覚えるよりも、自分が興味のある会社に焦点をあてて、ストーリーとして語れるようになるのもおススメだ。
例えば、Googleを軸に、過去にやってきたM&Aのディール(YouTube、アンドロイド、ネスト、モトローラ、ディープマインド等)の成否について自分なりの考えを整理しておけばいいだろう。そして、FB、アマゾン、ソフトバンクのM&Aの事例との比較などをやっておけば、話のネタになるだろう。
なお、有名進学高から東大にサクッと楽勝で入学した秀才組については、公認会計士試験を2年生で合格しておけば良い。さすがに、外銀でも3年生の就活時点で公認会計士を持っていればそれなりのインパクトはあるはずだ(もちろん、だからといって内定を確実にもらえるとまでは言えないのだが…)。
③Webテスト、フェルミ、ケース、経営戦略対策
要するに、コンサル向けの対策を外銀でもやりますかという話だ。
正直、外コン的なスキルは本来不要なのだが、とにかく今では競争率が高まっているので、筆記試験での足切りリスクも高まっているし、面接でもこの種の知恵試し的なことが聞かれる場合もあるようだ。
また、これを準備しておくと、外コンとかにも使いまわしができるので、一通り対策を立てておいても損は無いだろう。
④ネットビジネス、起業
事前にできる対策の内、唯一外銀の人達よりも優位に立てる点があるとすれば、ここだろう。外銀の場合、兼業・副業は原則禁止だし、SNS等の情報発信も制限されている。
また、日本の場合、ネットセクターは時価総額で見てまだまだマイノリティなので、IBDにおける優先順位が低く、この分野で詳しい人はあまりいない。
従って、学生時代に個人ブログで月間PV10万とか、起業してVCから1000万円以上出資してもらった実績でもあれば、結構目立つはずだ。
起業となると、プログラミングが出来ないと誰かを巻き込まないと行けないので、難しいかも知れないが、個人ブログであればコストもかからないし単独でも可能だ。アフィリエイト等で月に10万円くらいでも稼げる実績を作れたら、他の外銀志望者には無い有用な武器となるだろう。
3. ES、面接、ジョブ対策はどうか?
①志望動機、ガクチカ、自己アピールとかはロジック重視で良い
正直、外銀の社員はこんなところに余り関心は無い。何故なら、志望動機なんて「金」或いは「スキル」に決まっているからだ。ところが、流石に外銀も免許ビジネスであるので、大義名分というのがあるので、他と同様に処理しなければならない。
このため、コンサル的な、結論ファースト、理由①②というロジック中心の文章で分かりやすく書けばOKである。
内定者のESとか別に大したことは書かれていない。
ハイスペックでプライドの高い外銀マンは少々のことでは驚かない。
どこかの体育会で全国何位とか、ゼミ大会で表彰とか、学園祭でどうこうと力説しても、「あっそう」という程度である。
箱根駅伝で区間賞とか東京六大学野球で首位打者クラスであれば、「おっ」と興味を持ってくれるが、そうでなければ、さらりとロジカルにまとめた方が印象がいい。
②面接、ジョブについて
どちらかというと、重要なのはこちらである。
外銀というとアグレッシブなイメージがあるが、全体的にはソフトないい人が好まれる。
真っ先に落とされるのは、意外かも知れないが、ジョブで人を押しのけて発言したり、失礼な態度を取るタイプである。
これは、結局外銀は客商売なので、好かれることが前提である。そして、IBDなんか特にそうだが、チームプレイである。従って、「俺が、俺が」的なスタンドプレーヤーは、一緒に働きたくないので要注意である。
ゴールドマン・サックスなんかはパートナーシップの伝統があり、誰かが×点を付けると終了なので、発言内容よりも態度や協調性に留意すべきである。
4. できれば外銀の若手社員に指導してもらいたい
この種の外銀の厳しい新卒採用を勝ち抜いてきたのは、比較的若手の外銀の社員である。従って、できれば、外銀の若手社員を引っ張ってきて、有志の自主ゼミなどをやってもらえれば嬉しい。
外銀の若手はとにかく激務なので、なかなか難しいかも知れないが、慶應の一部の学生は、外銀の若手を招いてこの種の自主ゼミを開いているようである。
それがあるのと無いのとでは大きな違いであるので、何とかそういう機会を見つけて参加したいところである。
5. 外銀全落ちに備えて、予めしっかりとしたバックアッププランを考えておく
以上のように、周到な準備をしたところで、内定確実とは言えないところが外銀の辛いところである。従って、精神的なプレッシャーを避けて、自然体でジョブや面接に臨むためにも、十分なバックアッププランは建てておきたい。
ある意味、外銀志望というのは、「お金があればいい」ということなので、代替策を見つけることは可能なのである。
①国内系証券会社のIBD
まあ、言われなくとも最近では多くの外銀志望者が併願しているだろう。ここで頑張れば、30歳位でVPで外銀に転職という途も残されている。相当頑張る必要があるが、VPで外銀に転職できれば、厳しいアナリスト・アソシエイト時代をスキップできるので、結果として新卒で落ちてよかったという場合もある。
②国内系運用会社でPM(ポートフォリオ・マネージャー)を目指す
金融キャリアの中では、最後に残された穴場はここである。
リーマンショック以降、外銀の年収水準はグローバルで低下したが、バイサイドの場合は必ずしもそうでもない。フロント職であれば、年収3000~5000万円くらいなら十分に可能であるし、PMで成功してヘッジファンドに転身すれば年収数億もあり得る話である。
もっとも、デメリットは外資系バイサイドに転職するまでの期間が長く、その間は薄給に甘んじなければならないことであろうか?
③ベンチャー・ストックオプション、起業
本来、日本経済の観点から言うと、トップ層が外銀に行くのではなく、有力ベンチャー或いは自ら起業の方に来てくれることが望ましい。
規制業種の典型である外銀と、ネット系ベンチャー企業との間にはギャップがあろうが、お金的にアップサイドを狙えるのはこちらである。
一旦大手の事業会社とかコンサル経由でもいいが、外銀志望者がこちらに流れてきても悪くないはずだ。
④大手渉外法律事務所の弁護士狙い
東大法学部生の場合には、この手がある。外銀に全落ちすると、法科大学院とか予備試験に切り替えれば良い。東大法学部の優秀層であれば、予備試験はともかく、東大の法科大学院進学は楽勝なはずだ。
そうなると、4大法律事務所への入所は可能であり、30歳では年収2000万円位には到達できるだろう。そこから先、パートナーになれるのは1/5以下の世界かも知れないが、パートナーになれると年収5000万~1億円以上を長く続けることができる。
また、4大法律事務所に入所すると、海外留学できるのでそれを機に30前半で外銀に再度挑戦という途もある。
最後に
今、外銀に内定するのは至難の業なので、必勝法というのは無いかも知れないが、相応の対策を立てれば内定率をある程度高まることは可能である。
外銀対策は、他の人気業種(商社、外コン)でも流用できるので、しっかりとしたバックアッププランを建てた上で、プレッシャーを回避して臨みたい。
外銀は、外コンと比べると、人柄重視なところが多いので、一度外銀の若手社員から対策について指導してもらうことが望ましい。情報通の外銀志望者の友達を作っておきたいところだ。