1. 三菱商事からの最大の就職者数を誇る慶應でも容易ではない…
これは、三菱商事から内定を得た慶應の学生に関する、以下の話の続きである。
<留学は外資、商社等への内定の有力な決め手となる話>
https://career21.jp/2019-07-02-134507
三菱商事は現在、就活における最難関企業の1つであるところ、慶應大学は三菱商事に最多数の学生を送り込んでいる。
2019年3月卒業生に関する情報であるが、慶應大学から三菱商事には29名が就職している(2018年3月卒業生の慶應から三菱商事への就職者数は39名である。三菱商事の新卒採用者数が2018/03卒は171人であったが、2019/03卒は130人と大幅に減少したため、慶應からの就職者の数も大幅に減少となった)。
ところが、三菱商事は慶應の学生の間でも人気が高く、彼の周りは全員三菱商事に落ちたという。
この点について、学部別に見ると、経済学部は就職者数が1032人で三菱商事の内定者は9人、商学部は就職者数838人で2人、法学部(政治学科)は就職者数567人で5人、法学部(法律学科)は就職者数482人で7人という状況である。
もちろん、全員が真剣に三菱商事を目指すわけではないが、法・経・商学部の就職者に占める割合は1%程度である。実質的には、慶應の法・経・商学部の場合だと、応募者10人に対して1人位のイメージであろうか?
しかし、慶應からの三菱商事への内定者は、一部外銀・外コン内定組はいるがそれらは少数であり、必ずしも全員が突出したスペックがあるとも限らない。
言い換えれば、慶應の学生であれば、相応の対策を立てれば三菱商事の内定も不可能では無いと考えられる。
そこで、彼や他校からの内定者等の状況を参考に、三菱商事から内定をもらうための条件等について、以下考えてみた。
2. 慶應の学生が三菱商事から内定をもらうために必要となる基準について
まず、前提であるが「慶應」の学生というのがポイントである。
慶應は三菱商事への最多学生供給先なので、学歴フィルター全開の三菱商事については相対的に有利な位置にある。このため、同じ条件・スペックを有していても、他校の場合だと内定をもらえない場合もあり得るだろう。
慶應の学生を前提とすると、三菱商事から内定をもらうためには、以下のような条件・スペックがカギとなると思われる。
以下の基準がMECEとは言い切れず、人によっては、別の切り口もあるかも知れない。それが明確な回答があるとは限らない就活の面倒なところであるが、大体のところ、このようなものでは無いだろうか。
(1)英語、グローバル・リーダーシップに関する能力
(2)コミュニケーション能力
(3)ビジネスセンス、特殊技能
これらは、大雑把な括りであるので、以下、各基準について具体的に検討する。
3. (1)英語、グローバル・リーダーシップに関する能力
①英語力について
まあ、これは三菱商事に限らず、総合商社、或いは他業種のグローバルなポジションを狙う学生にとっては常識であろう。帰国子女、留学経験も無く、TOEICスコア無しでは、グローバル企業の典型である三菱商事に臨んでも無駄であろう。
留学経験があるのが望ましいが、無い場合にはTOEICスコア860以上、できれば900以上位は取っておきたいところだ。
これは、十分条件では無く必要条件であろう。
②グローバル・リーダーシップについて
これは上記の英語力と似て非なるスキルだ。異文化の下で育った人達と如何に強調して、共通のゴールを設定し、それを推進して行くことができるかという能力だ。
ここが、帰国子女・留学経験者と、国内の英語学校だけで英語を学んだ者との違いである。
もっとも、三菱商事の場合、外銀と違って、英語の面接が無いのでこの能力を就活プロセスで直接試されることは無いので、非留学組もしっかりとした英語力があればここは何とかなるだろう。
ただ、帰国子女・留学経験者だと、ES、面接でありがちなグローバル・リーダーシップ経験についてネタが十分にあるということだ。
3. (2)コミュニケーション能力
これは上記の英語力等と比べると、抽象度の高いスキルである。
しかし、学生から見ても、コミュニケーション能力の巧拙は簡単に見分けがつくだろう。
このスキルは、就活だけではなく、ビジネスシーンや中途採用においても有用なスキルなので、就活のタイミングで磨いておいて損は無い。
コミュニケーション能力は、①話す能力と②聞く能力に大別できるだろう。
①話す能力(プレゼンテーション能力)
先ずは、話す能力、プレゼンテーション能力である。
如何に端的に、自分が思ったこと、伝えたいことを相手に理解してもらうための能力である。
この能力は、就活対策開始の段階で、横一線でスタートする訳ではなく、当然話す能力が高い学生もいれば、苦手な学生もいる。
ただ、就活の場で求められている話す能力は、ビジネスで必要とされる範囲で足りるので、エンターティメント性とか聴衆を魅了するレベルまでは求められていない。
学生のレベルでは、これができていない学生が結構多い。また、必ずしも学歴と連動する訳でもない。話す能力を高めるためには、最低限、わかりやすく理路整然と話すことを目指すべきであろう。
というと、結局、コンサル的な、結論ファースト、理由①②という話し方が手堅いだろう。
そのためには、YouTubeでTEDを見たり、書籍を買ってみてイメージをつかむのが最初だ。あとは、ロジカル・シンキングの本を買ってみて、自分で練習していく他は無い。
話し方は癖がついているので、修正していくのは練習をしないと行けないし、時間もかかる。
現実的に良い練習法は、とにかく社会人に数多く会ってみて、実際に話してみることだ。フィードバックをもらえれば尚良い。
あってもらう社会人はフォーマル・インフォーマル問わないが、積極的に数を打つことが必要だ。積極的、行動的な人間は商社でも好まれるので、自らが動いてみるべきだ。
②聞く力
実は、差が付きやすいのはこちらだ。
先ほどの話す能力、プレゼン能力というのは、それなりに上手な学生はいる。
しかし、聞く力については、また別の能力となる。
社会人、特にゴールドマン・サックスとか野村證券のIBDだと、「クライアントの話をよく聞け」ということをうるさく教育される。日本人の場合は、本音と建て前が強かったりするので、相手の話をよく聞いて真の意図やニーズを如何に取り込むことができるかというのが重要なのだ。
就活生の場合で、特に人気企業になればなるほど、「何とか自分をアピールしないと」という強迫観念から、一方的に長々と自分のアピールに傾倒しがちであるが、それではダメなのである。
面接官の話をよく聞いて、相手が本当に聞きたい事に対して、適量(ここが重要!)で回答できるということが求められる。
相手が1話す度に、10答えるようではダメなのである。的確に問いに答えることができれば多少の間があっても構わないのだ。
ここは難しいところだが、GDとかでも長々と自己アピールや自論を展開する学生を見ると不愉快だろう。結局は、それと同じで、相手のいうことをよく聞いて理解して、適量答える、喋り過ぎない、といった匙加減が求められるのである。
特殊能力が無くても、何故か超難関企業からの内定を次々とゲットする学生がいるが、そういった学生はこの聞く能力が高い場合が多い。
話す力(プレゼン能力)と聞く力が優れているということは、「地頭が良い」という印象を与えることになるので、コンサルなんかでも力を発揮できる。話す力と聞く力を合わせたコミュニケーション能力というはかなりの武器になるのだ。
問題は、聞く力というのはプレゼント違って、自分一人では練習できない。結局、数を打っていかないと行けないが漫然とやっていてもうまくなるとは限らないので、意識的に行動することが必要だ。
3. (3)ビジネスセンス、特殊技能
慶應の学生であれば、上記(1)(2)の能力が優れていれば、(3)の能力は必須ではない。他方、(1)(2)の能力、特に(2)の能力がやや弱くても、(3)の能力があれば優位に立てる場合がある。
ビジネスセンス、特殊技能というのは、三菱商事に限らず総合商社共通の話ではあるが、要するに「頭が非常に良い」人材が欲しいということで、頭脳採用枠といえるかも知れない。
総合商社というのはあらゆるビジネスを展開する力があるのだが、ネットIT、AIという分野にはあまり強くなく、事実、GAFA、中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のような分野からの巨額の利益をどこも取り込めていない。
しかし、今後は間違いなくこの分野は今まで以上に存在感が高まるので、総合商社もこの分野からガッチリと稼ぎたい。このため、ビジネスセンスがあって、頭の良い人材は一定数必要なのだ。
だからこそ、外銀・外コン内定組は別ルートで優遇しても採りたいのだ。
以上より、外銀・外コン内定組はこのスキルを有しているということになる。
もっとも、三菱商事に内定するために外銀・外コンの内定を取るというのは変な話で、そちらの方が難易度が高いかも知れない。
そこで、狙い目があるとすると、ネットビジネス・起業関係である。
というと、それは無理、SFCの話だと思うかもしれない。しかし、だからこそ狙い目なのである。
外コンは少し異なるかも知れないが、外銀とか商社を志向する学生は慶應に限らず東大も一橋も総じてコンサバである。英語、Webテスト、フェルミ、ファイナンス・会計などの範囲が決まったことの学習は得意であるが、自ら訳のわからないネット系ビジネスとか起業に足を突っ込むことは余り好きではない。
他方、SFCの学生は、三菱商事のような雰囲気は合わないので、ここに需給の隙間が生じるのだ(もちろん、SFCでもネット、起業に強いのは少数であろうが)。
慶應でも実質倍率10倍位の三菱商事に正面から挑んでは、とにかく競争率が高いので、埋もれがちである。そこで勝ち抜くためには、人がやらないことを攻める必要があるのだ。
別に、ネットビジネス、起業といっても、アフィリエイトで月100万稼ぐとか、VCから少なくとも千万単位の出資を受けると言った実績までは不要である。それ位の実績があれば、逆に、三菱商事に応募しないので、そこまでハイレベルなものは求められない。
例えば、個人ブログを開設して真面目に投稿すれば月間PV数万位は可能だし、そうすると、SEOとかWEBマーケティングに関する知識や問題意識が付くので、就活ツールとしては十分である。やってみると、今まで見えてこなかった世界が拓けてくる。
ネットベンチャー企業でバイトをしたり、起業サークルに首を突っ込んでみて、ネット界隈に強くなってみることが重要だ。別に嫌なら辞めればいいだけの話である。
また、個人でブログを始めるのはコストもかからないし、リスクも無い。
総合商社、金融機関を含め、大手のサラリーマンは副業・兼業が禁止されているし、ブログSNS等の情報発信が基本禁止なので、こちらの世界は弱い人が多いので、大したレベルでなくとも興味を示してもらえる可能性は十分になるのだ。
反対に、MARCHあたりになると、三菱商事の総合職は全学部で1人いるかいないか位なので、内定を狙うとしたら、イチかバチかこのネット起業系を攻めるしかないだろう。
最後に
三菱商事は慶應からでも内定を得るのは難しい。しかし、周りを見渡すと、特殊技能があるわけではないのに、三菱商事から内定をもらった学生はいるだろう。
そういった学生は多分にコミュニケーション能力が決め手となっている可能性があるので、この分野は磨いておきたい。
また、さらに内定の確率を高めたいのであれば、英語や会計といった分野の学習に加えて、ネット・起業関係に挑戦してみたい。