留学、起業、経営者?三菱商事に入社後のキャリアの可能性について

1. 就活における国内系企業のトップとなった三菱商事

就職人気ランキングというのは、その時の経済・社会環境等によって左右されるものである。
国内系企業においては、1980年代のバブル期においては、今は無き日本興業銀行(興銀)が最高のステイタスであり、当時は商社冬の時代であった。

そして、バブル崩壊後の1990年以降は金融人気が全般的に後退し、大手キー局、電博あたりが実質的には最難関であっただろうか?最近では大手キー局はネットに押され後退気味という見方もあるが、まだまだテレビの影響力は強く、入社最難関企業の1つである。
商社人気はこの時はまだそれほどでもない。

そして、21世紀に入り、資源価格が高騰していくにつれ、商社の人気度が復活し、その中で特に資源比率が相対的に高く、歴史的にもブランドバリューの高い三菱商事が国内系企業のトップに君臨することになった。

<ワンキャリアの東大・京大生の就職人気ランキングより>
https://www.onecareer.jp/articles/1907

2. 就活生は三菱商事に入社後のキャリアを真剣に考えているか?

ほとんどの就活生にとって、三菱商事は最難関なので、入社してから後のことよりも取りあえず内定をもらうことで必死であろう。

また、外銀・外コン内定組は、別ルートが用意されるので、内定を取るのに四苦八苦ということは無いかも知れないが、そもそも、外銀・外コンの内定をとりながら、三菱商事を選択するというのは意味不明なところも多く、入社後にこんなはずではなかったと後悔するリスクもあるだろう。

<外銀・外コンの内定を蹴って三菱商事を選択して後悔する話>
https://career21.jp/2019-01-27-094153

そこで、結論的には三菱商事に入社すると多くの可能性があり、明るい未来が待って入ると考えていいのであるが、そのあたりをもう少し具体的に見て行きたい。

3. 三菱商事に入社した後のキャリアについて

①ゴールドマン・サックス等の外銀に転職するケース

「就活時に外銀の内定を取りながら、中途で外銀か?」という人もいるかも知れないが、就活時には外銀には興味が無いものの、力を持て余している若手社員は外銀で勝負したくなる場合もあるだろう。

もっとも、ここで留意しなければならない点は、三菱商事であっても外銀で評価されるスキルは身に付かないということだ。当然かもしれないが、外銀(投資銀行⇒証券会社)は規制業種であるので、決まった職種しか行えない。そして、VPに昇格するまでの期間、新入社員や若手社員の間では熾烈な競争が展開されるので、業務経験や実績が無いと途中で入っていけないのだ。

就活時においても、外銀内定持ちは三菱商事で優遇されるかも知れないが、その逆は無い。いくら国内系企業最高のステイタスの三菱商事にいるからといっても、それだけでは外銀に中途採用してもらえるに足る切符にはならないのだ。

それでは、三菱商事からどうやってゴールドマン・サックス等に転職するのかという話であるが、それは、留学である。三菱商事の場合は米国のトップ5のMBAに多数のOB・OGを送り込んでいるので、社費であるにせよ私費であるにせよ、トップ校に入りやすい。

そして、ハーバードMBAでも取得すると、30歳過ぎでアソシエイトとして外銀に中途入社することは十分に可能である。

但し、注意しなければならないのは、30過ぎでアソシエイトといっても業務自体は未経験であるので、新卒採用組のアナリストやアソシエイトからは「未経験アソ」ということで風当たりは強い。したがって、入社してからのプレッシャーは高いのでここは踏ん張り時である。

外銀でアソシエイトとして採用されると年俸は2000万円スタートにはなるだろうから、私費で留学しても元は取れそうである。

②マッキンゼー等の外コンに転職するケース

三菱商事に限らず、総合商社から外コンに転じる人はいる。
ここでいう外コンとは戦略系であり、マッキンゼー、BCGあたりである。
三菱商事から、年俸水準を大幅に落としてまで激務の総合系ファームに行く必要はないだろう。

外銀との違いは、職務経験・実績が求められないので、採用プロセスは面倒であるが、留学してなくても20代であれば中途で入社できる可能性はある。

もちろん、米国のトップ5MBAに留学すれば、外コンに転職できる可能性はグッと高まるであろう。

もっとも、コンサル未経験でマネージャークラスでの中途採用は厳しいので、外銀と比べると給与水準が落ちるので、ここは考えどころである。本当にコンサルとしてのキャリアを進んでいきたい場合に外コンに行くべきであろう。

③カーライル等のPE(プライベート・エクイティ)ファームへの転職について

PEというのは日本では未発達のビジネスであり、市場規模は米国と比べて極めて小さい。
このため、人材マーケットも外銀IBDと比べるとかなり小さな特殊な世界となってしまうのだが、この世界では三菱商事の存在感はある。

PEの場合、事業会社に投資をするので、ある程度事業会社の経験を有することがプラスに働くからである。例えば、以前カーライルの日本代表をされていた安達保氏は三菱商事出身である。
https://www.carlyle.com/ja/about-carlyle/team/tamotsu-adachi

また、PEファンドは外銀同様に、トップMBAが大好きなので、この辺りに留学すると入りやすい。

PEの場合には、VPになると年収は5000万円以上、MDだと1億超も可能であり、最近だと外銀よりも安定して働けそうである。

カーライル、ブラックストーン、KKR、ベインキャピタル、TPG、ペルミラあたりが対象企業(ファンド)となろう。

④大手ベンチャー企業のCXO

これは、自ら起業する場合ではなく、既存の大手ベンチャー企業にCXOとして参画し、ストック・オプションをもらうというケースである。

三菱商事からこのパターンの成功事例はメルカリCFOの長澤氏である。
https://industry-co-creation.com/management/6390

自ら起業する場合には、学歴とか三菱商事という社歴はそれ程関係ないかも知れないが、大手のIPO前のベンチャー企業の場合だと、高学歴でグローバル経験のある一流企業の社員というのは何かと重宝されることも少なくない。

この場合の留意点は、勝てる可能性が高いベンチャー企業をいかに選定し、そのポジションに就けるかである。

まだまだ、事例は少ないだろうが、今後三菱商事を含め総合商社からIPO前の大手ベンチャーに幹部候補として転職するというケースは増えるのではないだろうか。

⑤三菱商事からの出向、社内ベンチャー等

これは、外部のベンチャー企業に転職をしたり、自ら起業する場合ではなく、三菱商事の事業との関係で創業とか、出向するケースである。

最も華々しい成功は、ローソンの新浪氏であろう。
また、スープストック東京の運営会社であるスマイルズなどのケースもある。

これは、三菱商事ならではであり、魅力的なキャリアパスと言えるだろう。

⑥三菱商事で出世を目指す。

上記のように、三菱商事に入社した後は、いろいろなキャリアにおける選択肢がある。
しかし、上記のような成功事例はハロー効果があるかも知れないが、実際にそのような成功を収めるケースはそれほど多くは無い。

ほとんどの社員はそのまま三菱商事に最後までいるケースが多い。

とは言え、これは夢が無い話ではない。三菱商事で部長以上になれば関連会社の役員になって雇われであるが経営者になれる機会はある。また、海外現法のCEOになれる可能性も十分にある。従って、他の企業と比べて経営人材になれる可能性は十分にあるし、何といってもその間の給与水準が日本企業においては格段に高い。リスク面を考慮すると相当恵まれているだろう。

問題は、出世に時間がかかることで、管理職として活躍できるのは早くても40歳を過ぎてからである。このため、待てない人は、勿体ない話かも知れないが、転職の途を選ぶのであろう。

4. アップサイドを狙うには留学がお勧め?

今更感もあるし、費用も高騰しているMBA留学であるが、それでもトップ校に進学できると、外銀・外コン・PEという途が大きく拡がることは間違いない。

今では日本人が進学するのは難しいと言われる、ハーバード、スタンフォード等のトップ校も三菱商事だと行ける可能性が高い。

従って、アップサイドを狙いたい、三菱商事に入社したあとパワーを持て余している若手社員は、留学を考えるのは悪くないと思う。

5. 反対に、安易なベンチャー起業は止めた方がいい?

大手ベンチャー起業への幹部としての転職ではなく、全くゼロから起業を行う場合には、学歴とか三菱商事という社歴はあまり効かない。

むしろ、三菱商事は良くも悪くも、バリバリの年功序列であり、組織力で勝負する会社であり、ベンチャー起業とは真逆の雰囲気である。

また、総合商社で出来ないビジネスは無いのであるが、GAFAのようなAI、インターネット系の世界での利益は取れておらず、そちらの世界はあまり強くなさそうである。

最優秀層の学生が入社するようになったので、入社してみると聞いていた以上にコンサバなカルチャーにショックを受け、自ら起業しようという人も出て来るかも知れないが、その際には冷静に判断しないと勿体ない。

起業は何時でもできるので、留学して、外銀・外コンに行ってからでも出来るし、我慢すれば将来は社内の新規事業に経営幹部として参画する可能性もあるのである。

最後に

非常に多くの選択肢がある、三菱商事入社後のキャリアである。
留学を経験すると、更にキャリアの選択肢は拡がりそうである。

弱みがあるとすれば、ネット系ビジネスであろうか。将来この分野でアップサイドを狙いたいという場合には、社内人脈だけでは不十分であろうから、そちらの世界の住民たちと交流し、自分自身のスキルを磨いておきたい。