1. 銀行員の転職事情:東洋経済6/22号の「銀行員の岐路」より
週刊東洋経済の2019.6.22号の特集記事は「銀行員の岐路」である。その中で、銀行員の流動化が加速している旨の記事があった。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/20808
①50前後の銀行員の転職活動も活発?
そこで、興味深い記述として、40代後半から50代前半の銀行員の転職は、若手層と同様に活発であるというのがあった、ここでは大手転職エージェントのJACのコメントがあり、役職定年が近づく中、求人市場が活発なうちに転職を模索しようという人が増えているそうだ。
しかし、銀行に限らず、40歳を過ぎてからの転職は大変厳しい。能力が高かったとしても、国内系金融機関の場合にはポジションが詰まっているため、課長以上の求人は大変少ないからだ。
ましてや、50歳を過ぎると更に厳しくなる。50歳となると部長級のポジションになるし、それ位の年齢というのはバブル採用の頃に該当するので、採用するよりも減らしたいニーズの方が強いのではないだろうか?
2. 50前後の銀行員に対してニーズのあるポジションとは?
①法務やコンプライアンスの知見のあるベテラン行員
大手転職エージェントのJACのコメントによると、法務やコンプライアンスに知見のあるベテラン行員は、新興フィンテック企業などから引き合いが強いという。
新興フィンテック企業といっても、決済系、ロボアドバイザー系、仮想通貨系、バランスシート・レンディングといろいろなジャンルがある。運用、証券系の知識・スキルを銀行員は持っていないであろうから、決済系、バランスシート・レンディング系であろうか?
金融免許(登録)が必要な業種の場合には、内部管理態勢の構築が求められ、関連業務の業務経験者を置かないと金融庁は納得してくれないので、確かに、このポジションは50前後でもニーズがあるかも知れない。
もっとも、年俸水準は大抵の場合、1000万円にも満たない。せいぜい、700~900万円位ではないか?メガバンクで50前後であれば、年収は1200~1500万円はあるだろうし、福利厚生等を考慮すると経済的にはあまり魅力がないだろう。(もちろん、ストックオプションを付与されれば別だが…)
フィンテック系はWantedlyで検索すれば、それ関連のポジションが見つかるので、興味があれば使ってみればいいと思う。もっとも、Wantedlyを使用している50前後の銀行員で、法務・コンプライアンスの知見がある人というのはあまりいないかも知れない。
②M&Aや企業会計などの専門家
また、東洋経済の同記事において、金融に特化した転職エージェントのKANAEアソシエイツのコメントによると、「40~50代でも、M&Aや企業会計などの専門家であれば、総合商社やプライベートエクイティ(未公開株)ファンド、事業法人の財務担当、さらには新興フィンテック企業」の求人ニーズが強いという。
しかし、これは要注意である。40代と50代では上記のポジションにおいて、競争力がかなり異なってくる。誰でも、若い人の方を好むので、余程の実績でもない限り、50歳を過ぎてのM&Aや企業財務のポジションは容易ではない。
このくらいの年代だと、MDクラスになってしまうし、外資系国内系を問わず、年上の部下を持ちたくないというのが多数派なので、VPクラスだと採りたくはない。
なお、「総合商社」とあるが、総合商社はこの年代の中途採用は基本やっていない。おそらくこれは、総合商社の子会社での採用ではないかと思料される。
また、プライベートエクイティというのはせいぜい数十人しか従業員がいない組織なので、求人数は多くない。求人があったとしてもアソシエイトレベルが多く、外銀IBDの若手で決まってしまうことが多い。プライベートエクイティ関連で割とあるのは、投資先企業でのCFO的な人材であり、そうであれば年を取っていても問題無いので、昔から割とあるポジションである。その場合だと、年俸1500万円程度は期待できる。
事業法人の財務担当というのは、その事業法人の規模感による。大手の事業法人の場合だと、他業界からの転職となると当業界に対する専門性が弱いので、同業他社とか監査法人(公認会計士)からの転職者の方が競争力が強くなってしまう。
また、IRとかM&Aということになると、それは証券会社の仕事であるので、銀行員の競争力は下がってしまう。
従って、大企業、人気企業の財務担当のポジションに50歳前後の銀行員が就くのはそれほど簡単では無い。もちろん、事業法人の規模や質を落とすと可能性は拡がるが、その場合は年俸等の雇用条件が悪くなってしまう。
まとめ
業界、職種を問わず、50代での転職はかなり大変だ。その年代のポジションは詰まっているし、若い人を志向する傾向はどこでも強い。
また、銀行員に限らず、証券会社(外銀含む)であっても、事業会社への転職はそれ程容易ではない。やはり、50歳以上にもなってその業界の経験が無いというのはネガティブな要因になるからだ。
従って、銀行員(金融機関)の50代の転職事情はそれ程楽観視できるものではない。
真剣に転職を考えるのであれば、なるべく多くの転職エージェントをあたって、情報を最大限入手した上で転職活動をすることが求められる。