1. 「みずほらしくない人」とは?
「みずほらしくない人」とは、みずほFGが2019年の採用から使用し始めたキャッチコピーのようなものである。
https://www.mizuho-fg.co.jp/saiyou/special/ebook/index.html
「みずほらしくない人」とはどういう人材かということであるが、一言でいうと、「創造性のある人」「自分の頭で考えることができる人」「言われたことしかできない人でないこと」といったイメージであろう。
要するに、少子高齢化で国内市場の縮小は避けられないので海外でも稼がなければならない、AI/IT系の進化によって労働や店舗を効率化しなければならない、フィンテック時代に備えて新規事業を創造しなければならないといった、外部環境の変化に対応できる人材が欲しいということだろう。
もう少し、具体的なスキルに着眼して整理すると、以下のようなイメージになるのだろうか?
〇グローバル・リーダーシップを有する人材
〇AI等に強いプログラミング・スキルを有する人材
〇ベンチャー/起業の素養(経験)のある新規事業創造能力を有する人材
確かに、この手のスキルを有する人材は、従来みずほFGにはあまりいないタイプであろうし、今後必要になると考えられるので、こういったタイプを「みずほらしくない人」と称して重点採用することは間違っていないだろう。
2. 「みずほらしくない人」は他の業界・企業も欲しい人材ではないか?
みずほFGが「みずほらしくない人」を重点採用すること自体は合理性があると思われる。
しかし、問題はそういった人材をみずほFGが採用することができるかということだ?
というのは、この種の、グローバル、AI、新規事業想像力といったスキルを持った人材は、他の金融機関、コンサル、商社、メーカー、サービス業、ベンチャーも欲しい人材である。
そういった採用競争が厳しい環境下において、みずほFGがこの手のスキルを有する「みずほらしくない人」を十分に採用できるかどうかはわからない。
3. 「みずほらしくない」就活生の立場からするとどうか?
反対に、被用者側である「みずほらしくない」就活生の立場からすると、みずほFGは魅力があるのだろうか?
「みずほらしくない」スキルを有する就活生は、他の業界からも強いニーズがあるので、他の業界以上にみずほFGに行くメリットが無いと、行く意味は無い。
例えば、外銀、コンサル、総合商社と比較して、就活生がみずほFGを選ぶだろうか?選ぶとしたら、どういうところが魅力か?と考えると、なかなか難しそうである。
要するに、みずほFGが「みずほらしくない人」が欲しいというのはわかったが、そういった就活生に、従来とは異なる「みずほらしくない」処遇をしてもらえるかの提示が無いのが問題なのだ。
くら寿司とかソニーとかは、特定のスキルを有する人材には、他の就活生とは異なる金銭的な処遇をすることで採用しようとしている。
したがって、みずほFGが本気で「みずほらしくない人」を採りたいのであれば、初任給1000万円は不要だが、せめて600万円位は用意すればいいだろうか?
あるいは、初任給は同じだとしても、最初の配属先を確約するのはどうだろうか?
グローバル経験とか起業スキルのあるような人材は、さすがに、リテール営業に回されるリスクがあるのであれば、みずほに限らずメガバンクには行かない。
さすがに、高度なプログラミング能力を有する人材は専門職コースがあるが、文系のハイスペックな就活生に対する配属先確約の対応が不十分では無いだろうか?
4. もっとも、ハイスペックな就活生に対する処遇の充実は今後進展する可能性はある
以上のような状況から、「みずほらしくない」スキルを持った就活生は、専門職採用以外には関心が無いだろう。
もっとも、これは現状での話であって、令和になって以降、終身雇用の廃止、新卒採用の多様化、高額の初任給での採用、老後貯蓄2000万円問題等、雇用、働き方に関するニュースがどんどん出てきている。また、経団連の就活ルールはもう廃止となる。
したがって、来年度以降、新卒採用の多様化は、初任給の金額の多様化も含めて一気に進展する可能性がある。日本企業、特に金融業界は横並び意識が強いので、変化は速いかも知れない。
そうすると、同じ大学の学生であっても、みずほFGが求めるようなスキルを有する場合とそうでない場合とで、従来以上に大きな格差が付く可能性がある。
例えば、同じ慶応大学経済学部でも、プログラミングできない、起業ネット系は弱い、英語ができないと初任給400万円でリテール営業配属となる。他方、英語が堪能で起業経験・Web系知識が高い学生は、初任給600万円で最初から本社に配属という場合がある。
このため、長い間受験勉強を頑張ってきて、やっと大学に入れたと安堵するのも束の間、早速就活に向けたスキル磨きをしなければならなくなる。かわいそうな気もするが、ここで頑張らないとせっかく頑張って大学受験で成功したことが薄まってしまう。
そうなると、高校或いは中学から早慶の付属を目指して、大学入学前から就活のためのスキル磨きをするという選択肢もでてくるのであるが、雇用・就活等についてはここ数年が変革期となることが予想されるので、情報収集を十分に行い、適切な打ち手を採ることが求められるだろう。