ファーストリテイリング、入社3年で年収3000万円?優秀な若手の採用は難化?

1. くら寿司の新卒1000万円、ソニーの730万円に続き、今度はユニクロ?

ユニクロ運営会社のファーストリテイリング社は、優秀な若手の確保に向けて2020年春にも人事制度を見直すようだ。これによると、入社後最短3年で子会社の幹部などに抜擢し、年収は1000万円を越え、欧米勤務の場合には最大3千万円程度にもなるという。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46464260S9A620C1MM8000/

令和になってから、人事・雇用に関するニュースがどんどん出てきている気がする。
特に最近目立っているのが、新卒或いは若手社員に対する給与水準の引き上げのニュースである。

くら寿司の新卒1000万円が最初で、続いてソニーの730万円のニュースが報道され、今回はユニクロである。

2. しかし、よく見るとこのユニクロのニュースは特に目新しくない

ところが、このユニクロの年収3000万円の話というのは、実はそれほど目新しい話ではないのではないか?

まず、この3000万円というのは新卒の初任給の話ではない。
入社後、「最短」3年であり得るというだけの話なので、該当者が出るかどうかはわからない。この点は、一旦当該コースで採用されれば必ず1000万円スタートが約束されるくら寿司とは全く異なる話である。

また、「3000万円」というとインパクトのある金額であるが、これは「欧米勤務では」と書かれている。国内勤務の場合には、3000万円の可能性はかなり低そうだ。

さらに、もともとユニクロはオーナー企業であって、中途採用の年俸水準など、柳井オーナーの判断で何とでもなる。既に、部長クラスの中途採用では年収4000万円位の採用事例もあるようで、この辺の柔軟性はある会社である。

3. ユニクロの狙いは優秀な若手に対するPR戦略?

今でもグローバルで成長を続けているファーストリテイリング社のオーナー社長である柳井さんの野心はとどまらない。今後も成長を続け世界のアパレルのトップ企業になるためには、優秀な人材の確保が不可欠だ。

このため、優秀な人材の中でも人気が高い若手社員の採用については、国内だけでなくグローバルな争奪戦が予想され、ユニクロとしても採用戦略についてアピールしておきたかったのではないだろうか?

従って、ユニクロの入社後最短3年で年収3000万円」というのは、くら寿司やソニーのニュースをきっかけに、黙ってはいられなかったのだろう。

4. グローバルで通用する若手社員の採用は今後激化するか?

少子高齢化に伴う国内市場の縮小化は避けられそうもないので、日本企業としてはグローバルで稼いでいくしかない。また、AI/ITを著しい進展によって、既存の業界の競争ルールとかドメインも変容していくと考えられるので、新しい事業を創造できる人材も必要となる。

しかし、日本の場合、グローバルといってもそもそも英語ができる人材が少ない。例えば、金融機関でも即外資系で働ける人材の比率は1割も無いだろう。

そして、さらに普遍的なスキル、典型的な尚はプログラミング関係であるが、を保有する人材の価値は高い。

そういった、グローバル経験があり、かつ、何らかのスキルを持っている人材というのは、実は国内系企業だけではなく欧米アジアの企業も欲しい人材である。
このため、この手の人材で特に若手社員の価値は今後更なる上昇が予想され、採用は難化していくだろう。

例えば、くら寿司の1000万円というのは、「初任給」「外食産業」という条件下ではインパクトのある金額である。

しかし、これは海外(アジア)の幹部要員ということなので、海外の場合だと外食産業であってもマネージャークラスの場合には1000万円というのは特に競争力のある金額ではない。

ソニーの730万円の場合は、その意味では更に大した金額では無いだろう。何故なら、海外では院卒の優秀なプログラミング能力の高いエンジニアには、初任給1500万円以上というのは珍しくないからだ。

5. 就活生側からすると、これは嬉しい話では?

今後、グローバル人材に対する需要はますます高まっていくことが予想される。
既に就活の世界でも、外資系企業は当然として、総合商社でもグローバル・リーダーシップの素養の無い学生が内定を取ることは難しくなっている。

昔は、商社でもグローバルメーカーでも、就活時には英語はできなくてもOKで、入社後に会社が鍛えてくれるという時代があったが、今はそのような余裕はないようだ。

もっとも、就活生でグローバル・リーダーシップがあって、更に、普遍的なスキル(プログラミング、ファイナンス、Webマーケティング等)があるような学生は極めて限定されるので、相当な競争力を持ちうるだろう。

従来は、そのような学生も一律初任給で他と同じように取り扱われたが、今後は入社時点から異なる出発点が用意されていくのだろう。

従って、小学校からの長い長い受験戦争を勝ち抜いてようやく大学に入ったのに休めないのは気の毒だが、大学入学後に英語やスキル磨き等を頑張れば、そうおうの報酬は受けられるようになるのではないだろうか。

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