金融庁の老後2000万円問題と、50歳からの資産運用/資産形成について

1. 海外株式?投資信託?初心者の50歳にはハードルが高過ぎじゃないか?

金融庁の老後に必要な貯金が2000万円という話題が、各所で拡散している。政府は一旦撤回したのであるが、メディアにとってはツボであったのか、既に経済誌とかWEBでも2000万円作るための情報が溢れている。

その中でも、有力な経済メディアである東洋経済や日経ヴェリタスが50代を対象とした資産運用に関する特集を行った。

運用に詳しい人が読むと、それなりの内容なのであるが、果たして初心者の50歳の人達には到底理解できる内容では無いのではないか?

2. そもそも、ファイナンシャルプランナーとか記者は資産形成に成功したのか?

海外株式とか、好パフォーマンスの投資信託リストが紹介されていたりするが、50歳になって投資をしたことが無い人にはついて行けないだろう。仮に頭で理解できたとしても、そこから証券会社に足を運んで口座を新規開設するところまで行けるのであろうか?

マネー雑誌とかムック本で「1億円を貯める」といったものが街の書店に並んでいる。積立投資額と利回りによるシミュレーションが掛かれていたりするが、机上の計算のように思えてならない。

そもそも、その記事を書いたFP(ファイナンシャルプランナー)は1億円も持っていないのではないだろうか?経済誌の記者も同様である。

外資系金融に長年勤めると、1億円以上持っている人はザラにいるのだろうが、教科書的な運用を積立で国際分散投資によって資産形成をした人はあまり聞いたことがない。

その理由としては、規制(自己投資ルール)が大変厳しいので、株式や債券のような有価証券投資をすることが制限されているということもあるが、実際は、ボーナスと退職金とRSU(ボーナスの一部の株式支給分)をごそっと銀行預金に回して金融資産を増やしていったケースが多いのではないだろうか?

3. 50歳の初心者は、まず正確な現状把握をしておきたい

運用経験の無い50歳の人が、これから2000万円を貯めようと、焦って運用に走る前に、まず、正確に現状把握を行っておきたい。

特に大手サラリーマンの場合、分厚い退職金や企業年金があるからか、安心していてこのあたりの知識に疎い人が多いかも知れない。

①現状の資産額

銀行口座が分散している場合には、足し算していくらぐらいあるか。
また、同時に借入金(住宅ローン、教育ローン等)も銀行の返済表を見て確認しておきたい。

②定年までいた場合の退職金と年金の額

これ以外に知らない人が多い。50歳を過ぎるとこの手のセミナーをやってくれる会社もあるが、そうでなければ会社のイントラネットから「退職金規程」を見つけて、計算するとおおよその額が掴めるはずだ。

また、ねんきんについても日本年金機構から毎年「ねんきん定期便」が送られてくるので、
年金見込み額を確認しよう。

<ねんきん定期便>
https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/teikibin/20150331-05.html

③余力があれば、所得税の計算をできるようにしよう

サラリーマンで確定申告の経験が無い、あっても、住宅ローン減税のために1回だけやったことがある程度の場合には、自分の額面給与からどのようにして手取り額が算出されるのかわからない場合が多い。
何故なら、年末調整で会社が対応してくれるからだ。
今後、お金を人任せにしておくとやっていけなくなるかも知れないので、所得税の仕組みについては一度基本を理解しておきたい。

4. 現状の資産、退職金と年金の見込みが確認出来たら、次は家計の見直し

正確な現状把握ができると、月々、或いはボーナス支給時期にいくらくらい貯金にまわせるかについて家計診断をすることになる。

まず、自分の家計の毎月の支出状況を把握してみよう。サラリーマンでボーナスポーションが大きい場合には、ボーナスで月々の生活費を補填しているケースがある。
そうすると、本来は月々は赤字であるにも関わらず、ボーナスに依存して実力以上の暮らしをしている場合があるので要注意だ。

金融機関で随時開催しているイベントでFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみるという手もあるが、自分自身でもできるだろう。
だいたい、節約のパターンというのは決まっていて、通信費(携帯代金)、生命保険代(若い頃に保険のおばちゃんの言いなりで掛け過ぎの場合がある)、外食費、レジャー代といった項目である。

反対に、住宅ローンとか、最低限の保険代、光熱費、普段の食費、教育費等はなかなか削ることが難しい。

もちろん、一気に削ろうとするとストレスになるので、無理のない範囲で節約して貯金にまわせる額を数万円でも捻出したい。

5. おすすめの資産運用/資産形成術

50歳の運用初心者がいきなり変動商品で運用を始めるのはお勧めできない。
(最悪なのは、FXとか仮想通貨のような投機的な運用商品である。)

まずは、元本保証の金融商品で始めるべきである。
その点、おすすめなのが一番単純で小学生のようだが、銀行の積立定期である。
例えば、ソニー銀行とかがやっている積立定期なんかいいのではないだろうか。
https://moneykit.net/visitor/dc/dc06.html

次に、ボーナスとかでまとまったお金を貯めることができる場合には、個人向け国債がお勧めだ。特に狙い目は、キャンペーン開催時である。キャンペーン開始時には100万円あたり5000円のプレゼントというお得な機会があるので、こういったものを利用したい。
個人向け国債は証券会社じゃなくとも、銀行や郵便局でも買えるので、便利である。

そして、退職金が入った場合にはお得なのが、信託銀行がやっている特別金利である。退職金を預けてくれる場合には、特別に高い金利を提供してあげましょうというサービスだ。
但し、注意しないといけないのは投資信託等の変動商品と抱き合わせになっている場合だ。それだとリスクが高いので、サービス上乗せ金利は低くとも預金だけのサービスを選択したい。
<三菱UFJ信託銀行の退職金プラン>
https://www.tr.mufg.jp/lp/20190425001/?page=index.html&ad_id=21574&ad_type=3&gclid=CjwKCAjw3azoBRAXEiwA-_64OlRMfuQ6iCYLtbOwdZBCZCc8cYuDg8NFwLo4sAJ2dZ6n4ZDZQY0T7RoCdt4QAvD_BwE

<三井住友信託銀行の退職金プラン>
https://www.smtb.jp/personal/second-life/time-deposit.html

そして、以上が出来て、変動商品への投資の余裕が出てきた場合には、
iDeCo(イデコ)とNISA(ニーサ)である。こちらは税制が優遇されているのが特色である。

もっとも、元本保証でないので、十分理解してから始めるべきである。

<iDeCo(イデコ)>
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/

<NISA(ニーサ)>
http://www.jsda.or.jp/nisa/

最後に

運用というと聞こえがいいが、そもそも元本が少ないと、そこからのリターンも知れている。
従って、運用による利益によって貯金を作ろうとは考えずに、まずは元本を十分に作っていくことを重視したい。

個人向け国債については持っていない人もいるかも知れないので、広い意味の投資の入門編ということで、銀行や郵便局で聞いてみたらどうだろうか?

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