西野亮廣著「新・魔法のコンパス」の書評とオンラインサロンについて

1. ビジネス界でも注目される西野亮廣氏の新刊

2019年5月25日に角川文庫から「新・魔法のコンパス」が発行された。
これは3年前に10万部を突破した大ヒット作「魔法のコンパス」を大幅に書き直した上で文庫化した書籍だ。

西野亮廣さんは、1980年生まれの芸人で相方の梶原雄太と「キングコング」を結成し、かなりの人気者になったのだが、2005年にテレビから離れて、絵本作家やビジネス書の執筆とかを兼業して活躍しているようだ。

特に、オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」は国内最大のオンラインサロンであり(2019年4月時点)、会員数は23000人を超えている(2019年4月時点)。

2. 内容以前に、読みやすく表現力が大変優れている

まず、本書の特徴は、大変読みやすくわかりやすく表現されている点だ。
意図的であろうが、文庫本なのにフォントは大きめで行間も広くて読みやすい。
このため、1時間ちょっとくらいでサクサクと読めてしまう。

このあたりの表現力の高さは、やはり長年のお笑い芸人としてテレビやライブで培われたノウハウに依拠しているのであろう。

悪く言うと、上から目線的で小学生に説明をするような口調であるという見方もできるが、インテリ系のサラリーマンとかも会社からは「わかりやすい文章を書け!」と口うるさく指導されているし、長々とした退屈な仕事での文書に飽き飽きしているので、こういった読みやすい表現は歓迎なのでは無いだろうか?

就活でも転職でも、とにかくわかりやすいプレゼンテーション能力というのは最も求められるスキルの1つなのだが、出来ない人は年配の人でも結構多い。
このため、西野亮廣さんの表現力というのは、インテリ系サラリーマンにとっても大いに参考になるのではないだろうか?

3. 内容上のポイントは、稼ぐためには如何に「レバレッジ」を掛けることができるか

①お金を稼ぐ秘訣は「レバレッジ」である

本書は、「お金」「広告「ファン」の3章構成で、直接的にネットSNSを利用したビジネスで如何にして大きく稼ぐことが出来るか、また、自分はかつてどのようにして成功したかということを書いている。

ただ、本書のポイントは、ネットビジネスに限らず、ビジネスで成功するためには「レバレッジ」を掛けることの必要性を説いているのだと思う。

この「レバレッジ」という考え方は、西野亮廣さんのオリジナルではなく、ビジネスで成功した人達に共通の真実であり、例えば、資産70億円、年収10億円レベルの与沢翼氏などはYouTubeや書籍などを通じてこの「レバレッジ」の重要性を力説している。

<与沢翼氏の稼ぎ方>
https://career21.jp/2018-10-23-144549

また、与沢翼氏に限らず、最近YouTube界隈で人気(チャンネル登録者数が2019年6月時点で11万人超え)の就活・ビジネス系のユーチューバーのUtsuさんも、サラリーマンでは大手でも大して稼げない理由について力説している。

<Utsuさん:大企業と中堅企業の年収差は小銭です>
https://career21.jp/2019-06-10-092322

西野亮廣さんは本書の「お金」の章で、このレバレッジに関して、いかに有限な時間をうまく効率的に使って稼ぐかについて語っている。

②2章の「広告」も同じ。いかに広告を用いてレバレッジを掛けることができるか

「広告」の章では、実際に西野亮廣さんが、過去の書籍の売上で稼いだ1億円以上にも上る印税を全て広告費につぎ込んだエピソードとその狙いが掛かれている。

個人経営者や自営業者の場合、いかにして、自分のビジネスを拡大するために「経費」をつぎ込めるのかがカギとなるのであるが、この点、「経費」というのは全て会社が負担してくれているサラリーマンには理解し難い概念である。

西野亮廣さんの読者層は、サラリーマンとか零細自営業者が多いような気もするが、そうであればこのあたりは他の人の話としては理解できるかも知れないが、自分にあてはめるのは難しい気もする。

3. 問題は、いかにして最初の1/100の領域を作れるかということ

この手の成功者の、稼ぐためのコンテンツというものは、既に名前が知られている人が如何にして、その知名度やコンテンツにレバレッジを掛けて大きくしていくかということが語られている。

本書の冒頭の「お金」の章でも、上位1/100になれる領域を組み合わせることによって、自分のビジネス領域を拡げていくのが成功ストーリーである旨語られている。
それは、全くその通りであろう。

ただ、問題は読者というかファンの大半は、有名人では無いということだ。
第2章の「広告」を使って、ビジネスを拡げていく前の段階にいるのだ。

西野亮廣さんは既にお笑いの世界で成功しTVを通じて有名人であったことが出発点である。ところが、ほとんどの人はそのスタート地点に辿り着けない人が大半である。

もちろん、イケダハヤトさんとか、最近ではマナブさんとかブログによって一般人から著名人になれた人もいる。しかし、ブログで著名人、広告を使ってレバレッジを掛けようということを考えるようになれる人は、1/100どころか、1/1000もいないのではなかろうか?

従って、世の中の多くの一般人は一個目の1/100に入れるように四苦八苦しているのであり、これについてのノウハウを紹介して成功しているのがイケダハヤトさんだったりマナブさんだったりするのであろう。

同じく、プロブロガーの立花岳志さんも、「魔法のコンパス」に関する書評でその旨触れている。

<立花岳志>
https://www.ttcbn.net/books/lifestyle_books/72363

何らかの途で、とりあえず上位1/100に入れるために有用なコンテンツがあれば、それは有用であろう。西野亮廣さんも、一般人から有名人になるまでの過程を一般人でも応用できるように語ったくれれば、参考になる人は多いのだろう。

4. オンラインサロンについて

西野亮廣さんは、会員が23,000人以上いるオンラインサロンの運営者である。
月会費は1000円と少額であるが、これだけで、月に2300万円、年間で2億7600万円もの売上が期待できる。

他方、オンラインサロンについては最近何かと批判的な意見も多い。
詐欺的だとか、新種のマルチ商法だといった厳しい意見もある。

しかし、それは本書の最終章の「ファン」でも書かれているが、「期待値」について乖離があるからである。月会費の金額と、オンラインサロンの内容から、期待値よりも下回るアウトプットしか見られなかった場合には、不満となり、暴れだしてサロンの悪評を拡げたり退会してしまうのである。

特に批判が多いのが、「こうしたら稼げる」系のコンテンツであり、そういった場合、サロン加入者は本当に稼げるようになることを期待するので、大抵の場合は期待を下回ってしまうのである。

この点、西野亮廣さんのオンラインサロンは、月会費は1000円と安く、コンテンツ量も西野亮廣さん自らが毎朝記事を投稿しているので、内容と金額を比べると期待値以下になることは少ないだろう。また、そもそも「こうしたら稼げる」をうたっているわけではない(タイトル自体が「西野亮廣エンタメ研究所」である。)

従って、オンラインサロン運営側としては、「稼げる」とか「〇〇という結果が得られる」というノウハウ系は運営が難しく、他方、エンタメ目的のコンテンツであれば、そこまで不満や退会が増えないのではないだろうか?

オンラインサロン利用者としては、大抵の場合、一月当たりの会費は数千円位だし、つまらないと思えばいつでも辞められるので、興味があればとりあえず入って見ても問題無いのではなかろうか?この点は、入口で数十万円も取られてしまう悪質な情報商材との違いである。

5. 西野亮廣さんのファンとしては、とりあえず土俵に立てることを目指すべき

本書は、ネットSNSの世界で如何にしてレバレッジを掛けて成功するための方法を大変わかりやすく書いている。

内容自体は特に目新しいことは無いかも知れないが、表現技術は卓越しているので、ビジネスマンも大いに参考になるし、単純に読み物としても面白いと思う。

ただ、本書では当然の前提となっている、一つの分野での上位1/100(本当は1/1000?)というのが何といってもハードルが高い。とりあえず、一つの分野で1/100に入れば、そこから先は、もう一つの1/100を作って、広告を駆使してそれらを拡大していくノウハウは一般人でも応用可能であるので、まずはここまで到達したいところだ。