総合商社に全落ちした就活生が就職浪人の前に対応しておきたいこと

1. 英語が得意な早稲田、慶應の学生でも総合商社の全落ちは良くある

総合商社、特に、五大商社の人気は高く、英語が得意(TOEIC860以上)な早稲田や慶応の学生でも、全落ちしてしまうことは珍しい話ではない。

2. 就職浪人すれば翌年リベンジできる場合も無くはないが…

総合商社の場合、特有のビジネスモデルであり、他に行きたい業界があるわけでは無いので、就職浪人をして、翌年再挑戦するのはどうかという相談を受けることもある。

確かに、体育会とか留学とかの事情で十分な準備が出来ずに総合商社に全落ちしてしまった場合には、相応の準備をして翌年無事内定を取るケースはある。
大学の浪人と同様で、長い人生、1年位余分にかかったとしても希望の会社に就職できるのであれば問題はない。

しかし、注意しなければならないのは、大学受験の浪人と違って、決まった答えがある受験とは違って時間を掛ければ解決できるというものではない。また、大学受験の場合には浪人してもハンディは無いが(医学部は除く)、就職浪人の場合には一般の学生よりも不利になることが考えられる(同じくらいの評価であれば、就職浪人が落とされる)。

このため、就職浪人をするのであれば、適切な準備をしないと無駄な1年間で終わってしまうリスクがある。

3. そもそも、全落ちした原因をきっちりと把握できているか?

就職浪人をして、翌年度に総合商社から内定をもらえるためには、今年度に全落ちした原因、要するに敗因分析がきっちりと行う必要がある。そうでないと、同じことの繰り返しで再度全落ちしてしまうだけだ。

全落ちした学生に対して、質問の仕方を変えて、「同じ早稲田、慶応の学生で、どういった学生が総合商社から内定をもらえたと思う?」と聞くと、以下のような答えが返ってくる場合が多い。

(1)体育会
(2)帰国子女
(3)コネ
(4)話がうまい

しかし、この分析は正しいとは思えない。確かに、(3)のよほど強力なコネがあれば内定をもらえるかも知れないが、そういったコネのある内定者の比率が低いので、心配することはない。

(1)の体育会もあまり妥当ではない。確かに、有利に働く場合もあるが、むしろ最近では体育会が効かなくなっているはずだ。体育会枠というのはあるが、それは金融機関のリテール営業の世界では有力だが(東京海上日動、野村證券、日本生命等)、総合商社とか外銀とかではそれほど効かないことが多い。

(2)の帰国子女は、確かにグローバル人材が求められているので有利なことは多いかも知れないが、帰国子女は誰でも内定をもらえるかというとそうではない。自分自身が英語力があるのであれば、これも気にしても仕方が無い。

(4)はある意味正解であるが、何をもって「話がうまい」と評価してもらえるかについて、もっと具体的に詰める必要がある。

4. 総合商社が採用したい人材について再考してみる

そもそも、総合商社はどういった学生を採用したいかについて考えてみる。

(1)一定のスペックがあること(学歴フィルター+最低限の英語力)
(2)仕事ができそうか(能力)
(3)一緒に働きたいと思えるか(性格、人柄)

総合商社に限らず、どこの企業でも基本的にはこの3つは必要なのだが、総合商社の場合には競争率が高いので、一つ間違うと落とされやすい。

(1)については、早稲田か慶応で英語が得意(TOEIC860以上)であれば、この点はクリアできる。

(3)も重要なファクターである。総合商社は、バリバリの年功序列型のコンサバな企業である。従って、超ハイスペックで能力が高くても、ホリエモンのような態度では落とされてしまう。また、総合商社はプライドが高く、他社との併願状況を気にするので、「第一志望である」旨のアピールが弱いと、落とされてしまう場合があるので要注意だ。
もっとも、総合商社にどうしても行きたくて就職浪人までしようという話なので、この点については、大丈夫としよう。

そうなると、課題は(2)仕事ができそうか(能力)のファクターをクリアできるかどうかである。
これを以下、ブレークダウンして検討する。

①そもそも総合商社の企業分析ができているか?

実は、早稲田、慶応の経済・商学系の学生でも、これが出来ていないことが多い。
企業分析というのは、新卒向けのホムペやパンフレットを眺めることではない。
IR用の会社説明会用資料と中期経営計画を読み込んで理解することが、本当の意味での企業分析である。

この企業分析が不十分であるので、後述するが、志望動機とか希望部署とか自己アピールが薄っぺらく、ちょっと質問で突っ込まれるとグダグダになって面接の段階で不合格が決まってしまうのだ。

まず、大前提として、総合商社のビジネスモデルを理解する必要がある。
ここをイメージだけで、「企業と企業とをつなげる」とか「日本企業のプレゼンスを高める」とか「途上国の人々を助ける」といった方向に行くと泥沼に陥りやすい。

<総合商社のビジネスモデル>
https://career21.jp/2019-01-27-093752

そして、総合商社は業務内容、収益構造が企業毎にかなり異なる。この点を十分に把握しないと、「商社の中で、何故当社じゃないとダメなのか?」という典型的な質問で大した回答ができない。

商社によって、地域(北米、アジア、欧州、アフリカ、中東、南米)、業種(資源・エネルギー、自動車、インフラ、食料、繊維、化学、IT、消費、金融)、商流(上流、中流、下流)のメリハリが異なるので、ここはしっかり理解しておきたい。

非資源型で消費・生活、B to Cが得意な伊藤忠に行って、「資源やりたい」「プラントやりたい」と言ったり、典型的なエネルギー・資源型の三井物産で「消費・小売りに興味があります」と言ったりすると、内心で面接官に「こいつわかっていないな」と思われてしまう。
(もちろん、総合商社だから何でもやっているのだが、非主流の領域をやりたいというと説明が面倒になる。)

東大の経済学部で、外銀と商社の内定を総取りした学生は、この点をしっかりと理解しており、周りの学生が総合商社間の違いを分かっていない様子を見て、余裕で勝ったなと思ったそうだ。

中期経営計画をしっかりと読み込むと、その違いは明らかだし、違いが分かれば面白いと思うので、是非これは最初にやって欲しい。

②志望動機、希望部署、自己アピール等の一貫性

本来であれば、学生の段階で求められる要素ではないかも知れないが、総合商社の採用は落とすための試験なので、ゲーム的な要素が入ってしまう。

要するに、志望動機、希望部署、自己アピールという定番の質問項目の論理的な一貫性、説得力を問うゲームだ。

前述の企業分析が不十分であると、自ずと、ここは苦しくなりやすい。
そもそも、商社で落とされる学生の志望動機は似通っていて、薄っぺらい。

・グローバルで活躍したい。
・世界と人とを繋ぎたい。
・日本の企業のプレゼンスを高めたい。
・途上国を助けたい。
・新規事業やりたい。
・プロマネやりたい。

これを言うと、必ず突っ込まれるのが、「何故」という理由だ。
商社の場合、聞かれる質問はオーソドックスなのだが、「何故」ということでどんどん深堀して突っ込まれるので、薄っぺらい表明的な理由だとすぐに行き詰ってしまう。

したがって、企業分析を十分にした上で、ここは良く考えて「何故」に耐えられるものを創り上げておく必要がある。

③視野の広さ、やる気、積極性

どうしても総合商社がいいから就職浪人まで考えるわけであるが、大事なのは、自分が志望する商社のビジネスと関連性のある業界も会社訪問をして、十分な理解をしておくことだ。

例えば、自動運転関連ビジネスに興味があると言った場合、必ず、「じゃあ、トヨタに行けば?」と突っ込まれる。そういった時、トヨタやホンダを会社訪問した上で答える学生と、全く自動車会社を訪問しないで答える学生とでは、本気度、やる気、回答の深さが全く異なってくるのは明らかである。

また、海外でプラントやりたいというような場合には、エンジニアリング企業、プロジェクトファイナンスの観点でメガバンクとかJBICが関わってくるので、メーカーや金融も会社訪問をして、やる気と深い理解に基づく回答をすることが期待される。

総合商社は競争率が高いので、こういった周到な準備ができるかどうかで差が付くのだ。

5. そして、一番大事なこと

何よりも大事なことは、総合商社の人に会って教えてもらうことだ。
上記の、企業分析の深さ、志望動機等の一貫性といったことが正しくできているかは、良く知っている社会人にアドバイスをもらうしかない。

このため、インフォーマルな形で、何がダメだったのか等についてアドバイスをもらえるよう、総合商社の人に指導をもらうことが必要だ。

ゼミ、サークル、親戚、或いは就職予備校でも何でも構わない。指導力がある成功している社会人からアドバイスをもらわなければならない。商社から内定をもらえない学生同士で、ああだこうだと答え合わせをしても無駄である。

特別スペックが高い訳でもない学生が商社から内定を取った理由として、OB訪問を徹底的にやったという事例がワンキャリアなどでも取り上げられている。

それぐらい本気を出して取り組まないと、競争が厳しい企業から内定を取ることは難しいと考えた方が良い。

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