1. 意外にも、今でも東大・京大生のベンチャー企業への関心度は高いようだ
有力就活情報サイトのワンキャリアの調査によると、東大・京大生の間では今でもベンチャー企業への関心度は高く、何と約2割もの東大・京大の就活生がベンチャー企業を就職先の候補として真剣に考えたという。
<就活中の東大・京大生のベンチャー企業選び>
https://career21.jp/2019-06-06-164720
2000年前後の第一次インターネット・ブームや、2005~2006年の第二次インターネット・ブーム、あるいはリーマンショック後のアベノミクスによる日本株高騰時のインターネット・ブームといったタイミングでは理解できるが、ややベンチャー企業に盛り上がりを欠く今でも東大・京大生がベンチャー企業を就職先として真剣に考えるというのは面白い。
2. しかし、不可解なのは「新規事業」開発とか経営企画が人気なこと
少子高齢化に伴う国内企業の縮小が確実視される中、海外で稼いだり、新たな収益源を獲得することが日本企業には求められるので、新規事業を創造できる人材は最も必要とされる人材であるとも言える。
しかし、ベンチャー企業で「新規事業」とか「経営企画」というポジションが東大・京大といったハイスペック学生から人気であるのは妙な気もする。
というのは、ベンチャー企業の場合、大手ベンチャーでもスタートアップ・ベンチャーでも、新規事業とかM&Aの前に、現行の本業があるはずである。
ベンチャー企業であれば大企業以上に、本業に成長の余地があるはずなのに、何故わざわざ本業を飛び越えて新規事業を始めたり、或いは、他社からM&Aで買ってくることに興味を示すのだろうか?
例えば、DeNA、グリー、mixiというのはゲームが本業であってほとんど全ての利益をゲームが稼いでいる。それにもかかわらず、ゲーム以外の新規事業開発が人気なのは何故だろうか?
また、最近少し勢いは落ち気味かも知れないが、メルカリも利益のほとんどを本業である国内のフリマビジネスで稼いでいる。新規事業も手掛けているようだが、撤退しますというニュースを聞くことが多い。それでも、メルカリで新規事業に関与するメリットは何なのだろうか?
思うに、新規事業とか経営企画が人気なのは、東大・京大生の間ではコンサルが大人気であり、新規事業開発とか経営企画というと企業内コンサル的なイメージがあるのかも知れない。
しかし、ベンチャー企業でも大企業でも、稼ぐ、要するに利益をあげることが目的であり、それが本来評価の対象なのであるから、もう少し利益志向になっても良いのではないだろうか?
3. 新規事業開発とか経営企画とかは、よくよく見るとバックオフィスでは無いのか?
確かに、新規事業とかM&Aは聞こえがいい。知的で泥臭くなくカッコいいように見える。営業で得意先を開拓したり、資金調達に東奔西走したり、伝票の山に囲まれて事務作業をするというイメージではないので、スマートな感じがするのかも知れない。
しかし、事業開発とか経営企画というのは、自らがプログラムを書いたり、クライアントを開拓したりすることができないし、必要とされる人材を採用したり、必要な資金を調達する仕事は他の部門にやってもらわなければならない。
企画書は自分たちで作成するかも知れないが、それを実行するためには他の部門にお願いしなければならないし、予算配分を巡っては社内で揉め事が起きがちなので調整をしてあげなければならない。
そうすると、それはバカにされがちな大企業の中間管理職の得意な社内調整の仕事と類似しており、実はそれほど創造性がない仕事かも知れない。
また、事業開発とか経営企画という部門は収益部門では無いので予算が小さいことが多い。そうなると、社内でのステータスが高いとは限らず、他部署から大してリスペクトしてもらえず言うことを聞いてもらいにくいというストレスが貯まるかも知れない。
4. とはいえ、事業にどっぷり浸かる自信は無い場合には、CXOを目指すのはどうか?
以上のようなことは何となくわかっていても、学生時代に営業活動をした経験があるわけではないし、かといって、プログラミングができないのでプロダクト開発の仕事はできないから、いきなり事業部門にどっぷりと浸かる自信は無いというのは理解できる。
そういった場合には、(新規)事業開発とか経営企画を狙うのではなく、よりバックオフィス的かも知れないがCXO職を狙ってみるのはどうだろうか?
なお、自ら起業するわけではないし、プログラミングできないという場合だと、CEOとかCTOは除かれるので、狙うは、CFO、CHRO、CMOあたりであろうか。
要するに、財務、人事、マーケティングの専門家を目指すということであるが、事業開発・経営企画よりも確固たるポータビリティの高い専門性を若いうちに習得が可能である。
事業開発・経営企画というのは、大企業の総務部門とも似ており、何でも屋的部署であり、大した専門性が身に付かないというリスクがある。また、だからといって社内コンサルと認めてもらえるほどの専門家集団とは認めてもらえず、コンサル企業から本物のコンサル経験者が突然中途採用で上に降りてくるかも知れない。
そのように考えると、CXOをファーストキャリアとして選択するのは悪くない。大企業と違ってベンチャーなので、社内異動の可能性は高いので、財務、人事、マーケティングで良い社内評価を得れたら、その後に満を持して事業開発・経営企画に行くこともできるし、事業部門に異動することも可能である。
従って、東大・京大のハイスペック学生がベンチャー企業を狙うのは、望ましいことであろうが、ファーストキャリアは新規事業・経営企画ではなく、地味目かも知れないがCXOを目指してみるのはどうだろうか?
<起業に興味がある学生はCXOを目指すのはどうか?>
https://career21.jp/2018-12-28-065100