1. 年収チャンネルとは?
年収チャンネルは、スーパー・フリーランス集団であるStockSun株式会社が運営するYouTubeの人気番組で、チャンネル登録者数は4万5千人である(2019年6月10日時点)。
番組内容は、就活生や20代のビジネスマンを対象に、各業界、各企業、各専門職の年収水準を紹介し、就活やキャリア形成の参考にしてもらおうという趣旨の内容である。
2. 6月8日公開の、特別編「20代の若者にどうしても伝えたい事」について
表題の番組は、2019年6月8日(土)に公開された特別編であり、通常5~6分の番組であるがこの特別編は約18分と長めになっている。また、通常はゲストスピーカーを招くことが多いが、特別編では代表者の株本氏自身が語っているところが特徴である。
視聴回数は4万回を超えている(2019年6月10日時点)。
<年収チャンネル特別編:「20代の若者にどうしても伝えたい事」>
https://www.youtube.com/watch?v=KxMyCeB_Rro
3. 特別編「20代の若者にどうしても伝えたい事」の概要
大変わかりやすいし、本質を突いた内容となっているので、就活生は是非参考にして欲しい。なお、この番組の1日前に、人気のユーチューバーのUtsuさんが同趣旨の番組を公開しているので、こちらも参考にしたい。
<Utsuさんチャンネルの6月7日公開番組の趣旨>
https://career21.jp/2019-06-10-092322
①年収チャンネルが考える、現行の就活の仕組みの問題点
そもそも、就活生はESとか志望動機とかに労力を割かなければならない仕組みになっているが、志望先企業をピンポイントで絞ってそこから内定を取るのは不可能なはずである。結局、就活生としてはある程度の業種や条件を基に、内定を取るために活動しているだけなので、いちいち企業毎に大した志望動機があるわけがない。
採用側の企業もそのあたりは知った上でやっており、純粋に就活生の能力ややる気、適性では決まらないゲームになっている。
また、そもそもリクルーターということで若い社員が面接に駆り出されたりしており、大したことが無い(成功実績があるわけでもない)面接官に判断されること自体がナンセンスである。
(※もっとも、株本さんは学生時代にそのように考えて就活したところ、就活は惨敗したそうなのでこの点は要注意である。)
②就活生の企業選びの判断軸の誤り
外銀・外コン・総合商社に内定をもらえるのなら、そちらに行けばいい。
また、自分の進みたい方向が明確であれば(Ex. どうしても自動車業界に行きたい)、そのままそちらを目指せば良い。
ただ、問題なのは第一志望に落ちて、中途半端に企業規模だけで決めてしまうことである。
それが何故まずいかというと、給料も大してもらえないし、スキルを持たないまま年を取り、将来キャリア的に弱い立場に立たされてしまうからである。
③終身雇用が廃止になると、大手のサラリーマンはハイリスク・ローリターンに
今までであれば、そこそこの大企業に行けば、30歳で600万、40歳で800万と大した給料はもらえないが、最後まで面倒を見てもらい、退職金や年金もついてきた。
しかし、経団連が終身雇用終了宣言をしたように、今後は60歳までそこそこの給料がもらえるということは無くなってしまう。
さらに、AIテクノロジーの進化に伴い、市場価値が低い、「個」としての能力が高くない中高年のサラリーマンは、転職も独立もできずに路頭に迷ってしまう恐れがある。
要するに、これからは、スキルを持たない単なる大手のサラリーマンは、大した年収が稼げない上に、リスクまで高い地位に陥ってしまうことを留意しなければならない。
④大手サラリーマン不遇の将来で、求められる就活の「判断軸」とは?
それは端的に、「稼ぐ力」をつけられる企業・ポジションかどうかである。
「稼ぐ力」については、「ビジネス戦闘力」という言い方を過去の番組でもしてきたが、如何にヒト、モノ、カネを動かくすことができるかという能力である。
それは、市場価値が高い人材、「個」の能力が高い人材になるということである。
AIによって仕事を失われるということがよく言われているが、将来は知識階層と単純作業しかできない層に二分化していくことが予想され、単なる連絡調整的な職種は淘汰されていくだろう。そうした中で、知識階層に入れるために、十分な経験、実績、スキル、人脈を作って「個」の能力を高めることができるかが重要なのである。
反対に、「個」として高い能力さえもっていれば、転職でも、起業でも、フリーランスでも、手段を問わず生き残っていくことが可能なのである。
⑤具体的に「市場価値」を高める方法とは?
「市場価値」を高める方法について、もう少し具体的にいうと、例えば、3つの得意分野を作るということである。
例えば、株本さんの場合には、「フリーランス」、「Webコンサルティング」、「脱毛サロン」という3つの専門領域がある。
これは、1つの専門領域、例えばWebコンサルティングだけであれば、そこでナンバー1になるのは大変難しい。しかし、3つの領域を掛け合わせると競合がグッと減り、その中で第一人者になることは可能である。
⑥どういった「判断軸」で企業選びをすべきか?
以上の点を踏まえて、以下の点に着眼した上で企業選びをすべきである。
まず、ビジネス戦闘力を高めることが出来るかどうか?3つの専門領域を作ることができるかどうかというのが最初のチェックポイントである。
次に、ビジネス戦闘力を高めてもらえそうな上司かどうかである。もっとも、これは事前に選択することは難しい場合も多いが、そのような視点を持ち続けることである。
そして、入社後は自らのビジネス戦闘力を高めるよう努力しつつ、社内にとどまらず、社外に有用な人脈を築いていくことが重要である。
4. 課題:ビジネス戦闘力が付けられるかどうかの見極めをどうするか?
①ビジネス戦闘力という軸に異論はないが…
上記のように、得られるスキルや経験ではなく、企業規模だけに着眼して妥協して就職するのは大変危険である。
終身雇用の廃止、AIの進展によるコモディティ人材の排除という流れは不可避であろう。そういった環境下、「個」の能力が低い、市場価値の低い人材になってしまうことは何としても避けなければならない。
従って、いかにビジネス戦闘力、「個」の力、市場価値を高められるかどうかを就活の最重要の判断軸とすべきというのは至極全うな考え方であろう。
②ビジネス戦闘力が向上する企業・職種の選択は学生には難しい…
但し、就活において、その企業に就職すればビジネス戦闘力が付くかどうかを見極めるのは、学生にとっては容易ではない。
どういったスキル、ビジネス経験、業種等が将来価値があるかどうかは一義的に決まるわけではなく、産業・企業分析能力、転職市場の実情等、多様な判断材料が無いと見分けることは難しい。
その点については、成功している様々な人達に接したり、相談したりするのが良いが、そのような機会に恵まれるとは限らない。
③特に、プログラミング能力を有しない文系学生のスキル選択は難しい…
特に、プログラミング能力を有しない、文系の学生が市場価値を高めることが可能なスキルの種類というのが気になるところである。
良くあるのは、財務/経理、人事/労務管理、法務/知的財産あたりは典型的な文系の習得可能なスキルであるが、これだけでは不十分であろう。
そうなると、他に掛け合わせる専門性は何にするかが悩みどころである。
将来性ということであれば、AI/Web系の分野が堅そうであるが、それでは、ヤフー、楽天、LINEで、人事、財務、法務系のポジションに就けば市場価値は高いかというと、そうでもないだろう。さらに掛け合わせる専門分野が必要となろう。
また、「営業」というのも典型的なスキルであるのだが、製薬業界のMRのリストラが報道されている通り、営業×製薬業界、というスキルの組み合わせでは足りないということであろう。
それでは、プログラミングがそこそこできるMRはどうか?プログラミング×営業×製薬、となるがこの組み合わせでも不十分な気がする。
市場価値が高まるような専門スキルの組み合わせを、いかにして選択すべきかというのはなかなか難しい問題だ。
このあたりについて、また、年収チャンネルの番組で取り上げてもらうことを期待したい。