1. Utsuさんとは?
Utsuさんとは、転職・就活系の人気YouTuberで、Utsuさんのチャンネル登録者数は、21.6万人にも及ぶ(2021年10月14日現在)。
Utsuさんは1976年1月生まれの45歳。地方のFラン大学出身にもかかわらず、独自の発想力と営業力で若くして外資系IT企業の幹部に上り詰めた。
一見、胡散臭いような雰囲気もあるが、的確でわかりやすいアドバイスが若者の間で共感され、就活生だけではなくビジネスマンが視聴しても有益なコンテンツを提供されている。
現在は、YouTube運営の他、会社経営も行っているようだ。プライベートでは、離婚を経験され(本人が番組内でバツ2と語る)、娘さんがいらっしゃるようだ。YouTubeで料理をしている動画(カレーを作っていた)を見かけたが、ご実家がレストランということもあり、料理も得意なようだ。
2. 2019年6月7日公開の「大企業と中堅企業の年収差は小銭です」の概要
これは、UtsuさんのYouTube番組の人気動画で、2019年6月7日公開されたが、現在では再生回数が10万回にも及ぶ人気コンテンツだ。
<Utsuさんチャンネル:「大企業と中堅企業の年収差は小銭です」>
https://www.youtube.com/watch?v=__ldt0dnffM
約6分の動画なので、是非視聴をお勧めするが、その概要は以下の通りである。
・UtsuさんのTwitterやYouTubeのコメント欄で、「金が良いから大企業に行く」旨のコメントをしばしば見かけるが、それについてコメントしたい。
・確かに、大企業の方が中堅企業よりも給料は高いかも知れない。しかし、その差は年収ベースで100万円程度、生涯賃金ベースで1億円程度の違いは「小銭」、要するに大した違いではないと認識した方が良い。
・年収1000万円といっても、手取りは月に60万円程度。年収2000万円でようやく手取り月収は100万円を超えるが、その頃には結婚していたり、住宅ローンを抱えていたりで、大して自由に使えるお金は無い。
・Utsuさんが飲みに行くような(高級店)には、サラリーマンなんていない。ほとんどが経営者であり、彼らは高卒が多く若い時から頑張ってきた人達である。
・確固たるスキルや人脈を持って、会社を経営し、人を雇ってビジネスを回すと、大手のサラリーマンよりも遥かに多くのお金を使えるようになる。
・自分は大企業に行った方がいいと言っているが、それは経験を買うためである。若いうちから高いところからビジネスを見られる経験が将来役に立つからである。
・大企業に行ったところで、たかだか稼げるお金は知れている。それよりも、大事なことは、30歳、40歳になった時点で、どれだけ人脈、スキル、アイデアを持てるようなビジネスマンになれるかである。
・従って、お金のことを考えるのであれば、大企業のサラリーマンになっても稼げないので、大企業と中堅企業の給与差という小さいところに着眼するのではなく、いかにして自分のスキル、人脈、無形資産を高めるかに着眼をしたキャリア形成をして欲しい。
3. 大手のサラリーマンになる目的は「人脈、スキル、アイデア」という無形資産を高めること
このYouTube番組でUtsuさんが言っていることはその通りである。
サラリーマンだと大企業の役員になっても、年収はせいぜい2000~3000万円のレベルである。それに、国内系大企業の場合は、年功序列なので役員になれるのは50歳位と遅く、また、自営業者の様に経費を使えないという税制面の弱みもある。
だから、お金持ちになりたければ、大企業の給料を目的とするのではなく、将来独立・起業して稼げるようになることを目的として、「人脈、スキル、アイデア」という無形資産を大企業での職務経験を通じて高めて行くべきだということである。
これは、「金持ち父さん」でも語られている通りであり、視聴者も賛同している人が多く、ポジティブなコメントが多い。
4. 大企業じゃ稼げないから、ベンチャーに行った方が「成長」できるという誤解
大企業に行ってもサラリーマンじゃ大して稼げないから、それなら、「成長」重視でベンチャーに行った方が将来稼げるようになれるという誤解をする人がいる。
大企業がダメだから、その反対のベンチャー或いは中小の方が良いという単純な結論にはならない。
このYouTube動画でUtsuさんが言っているポイントは、「人脈、スキル、アイデア」といった無形資産を高めることができるかということである。
従って、判断基準は大企業かベンチャーかという企業のサイズではなく、無形資産を高めることができるかという点である。この点については、企業の規模だけではなく、外資系か国内系か、どんな業種・業界か、業界におけるその企業の位置付けはどうか、配属される部門・職種はどうか、上司や同僚のレベルはどうかといった多くの要因によって、総合的に判断されなければならない。
その意味では、自分が将来独立して稼げるようになるための無形資産を高めることができるのは、大企業である場合もあるし、反対に、ベンチャー・中小である場合もある。
もっとも、この点に関して非常に重要な点は、大企業の方がベンチャーや中小企業よりも、無形資産を高めることが出来る可能性が高いということだ。
例えば、「人脈」という点については、大企業の方が圧倒的に豊富な顧客や取引先を有している。また、「スキル」という点についても、大企業の方が教育・研修体制がしっかりしている。それに、日本の場合は、優秀な人材は大企業を選択することが圧倒的に多いので、上司や先輩達の能力が高いのが一般ではないだろうか?
そして、重要なのは「アイデア」である。大企業の顧客や仕入れ先等は国内外の大企業が多く、扱うビジネスの規模は圧倒的に大きい。或いは、扱うビジネスが複雑であるとも言える。そうなると、「大は小を兼ねる」ということで、大企業で大規模・複雑なビジネスを経験すると、小規模・単純なビジネスは対応しやすい。他方、ベンチャーの仕事しか経験していないと、大規模・複雑なビジネス経験が無いため、対応しにくい。(ベンチャー企業から大企業への転職が難しい原因の1つがこれである。)
Utsuさんがこの動画で、大企業の「高いところからビジネスを見られる経験」が有用であるというのは、この趣旨であろう。グローバル、大規模、複雑なビジネスを経験することによって、視野を拡げ、アイデアを磨く。この経験が無形資産を高める上で非常に重要である。
また、「成長」を理由に大企業よりもベンチャーを選択する前に考えなければならないことは、ベンチャーでも「雇われ」の立場で行くのであれば、大企業のサラリーマンと同じということだ。
自ら起業をするのであれば、自分自身でビジネスアイデアを考え、プロダクトを完成し、顧客を開拓して、キャッシュを獲得していかなければならない。
他方、ベンチャー企業に入社するということは、ベンチャー起業家に乗っかるだけであり、乗っかるものの大きさが大企業よりも小さいだけの話である。ビジネスアイデア、プロダクト、顧客開拓はベンチャー起業家の借り物に過ぎない。
その意味で、本当に「成長」したいのであれば、ベンチャー企業で「雇われ」になるという回り道をするよりも、自ら起業をした方がよほど得るものは多い。
自ら「起業」する自信がないというのであれば、それはまだまだ「無形資産」が積みあがっていないわけであり、大企業で経験を積んだ方が良いのではないだろうか。
5. 大企業で無形資産の価値を高めれば、会社経営者になって稼ぐことができるか?
①大企業で無形資産を積み上げても、起業・独立はそう簡単ではない?
Utsuさんがこの動画で言う通り、たとえ大企業でも、サラリーマンでは大金を稼げない。大金を稼ぎたければ、自ら会社経営者になるしかない。
この点は、ロバート・キヨサキ著の「金持ち父さん、貧乏父さん」でも広く知られているし、SNSでも「資本主義では経営者(株主)が勝者」的な話は流布している。
しかし、大企業で頑張って「人脈、スキル、アイデア」という無形資産を高めたからといっても、会社経営者になるのは簡単ではない。
やはり、サラリーマンと会社経営者とでは、求められるものが違うからである。
長年サラリーマンをやっていると、独立と言っても、どういったビジネスモデルを考え、どういったプロダクトを売ればいいか、また、集客はどうすればいいかと、わからないことだらけだからである。
自分自身の力だけで、給与以外に、1万円を稼ぐことは有能なサラリーマンでも簡単でなかったりする。
この点については、起業・独立を意識した行動やスキル磨きが必要であり、個人がビジネスで成功するためにはSNSやブログ等のウェブの力を借りることが有用であろう。また、起業・独立で成功している人達と交流し、そのスキルやマインドを吸収することも必要だろう。
今まで大企業では、副業やSNS発信の規制が厳しく、有能なサラリーマンでもこの分野が弱い人達が多かったが、副業は緩和の方向にあるので、これを機にこの方面のスキルを磨いていくことが求められよう。
②起業・独立は苦手でも、プロ経営者という途もある
会社経営者にならないと稼げないと言われても、上述の通り、サラリーマンと個人事業主とでは求められるスキルが異なる。当然、向き・不向きはあるだろう。
しかし、会社経営者にならなくとも、プロ経営者を目指すという選択肢がサラリーマンにはある。外資系でも国内系でも、大企業でCXOや執行役員として、プロ経営者として渡り歩くというキャリアも悪くない。会社経営者ほどには稼げないかも知れないが、十分な高収入は目指せるし、起業・独立コースよりはリスクは低いだろう。
サントリーの新浪社長の「45歳定年制」が物議を醸し出したが、経団連も数年前に「終身雇用終結宣言」をしたぐらいなので、今後は大企業に入ったからといって60歳まで雇用が保証されるとは限らない。
独立・起業やプロ経営者を目指さない場合でも、「人脈・スキル・アイデア」という無形資産を高めて行くことは、全てのサラリーマンにとって必要になるのではないだろうか?