三井住友トラストとUBSが富裕層向け事業で提携。プライベートバンキング・ビジネスは就活や転職の観点から将来有望か?

1. 日本ではうまく行かない富裕層向け金融ビジネス

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190607-00000039-reut-bus_all

三井住友トラスト・ホールディングスは2019年6月7日、UBSグループと、日本での富裕層向けの資産運用事業で提携すると発表した。

2021年をめどに、UBS証券(東京)の富裕層向け事業を切り離して、証券会社を新設し、新会社の株式の49%を三井住友トラストが取得するようだ。

また、これに先立って、三井住友トラストとUBS証券の折版出資で、富裕層向けにカウンセリングやセミナー開催などを行う会社を設立する。

日本のリテールビジネスに詳しい銀行や証券会社の社員は、「またか」という感じで、特に驚きはなく冷ややかに見ているのではないだろうか?

何故なら、1998年の金融ビッグバン以降、資産運用型ビジネスが注目され、大手の銀行も証券会社も20年以上、富裕層向けビジネスを研究・実行してきたのだが、日本ではなかなかうまく行かないということを認識してきたからだ。

すでに、三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券(旧メリルリンチ日本証券個人顧客グループが営むPB部門を会社分割により承継)とか、三井住友銀行とバークレイズなど、国内系大手金融機関と外資系金融機関のPB部門との提携に掛かる話はあるが、どこも大して上手く行っているようには思えない。

2. 他の国々ではうまく行っているのに何故日本では成功しないのか?

外資系金融機関の富裕層向けビジネス(PBビジネス)を展開する事業部門は、時折、日本への進出を試みる。それは、中東とかアジアとか、日本以外の他の国々では富裕層向け金融ビジネスは伸びているからだ。

しかし、日本の場合は事情が違う。それは、単純に富裕層の数が少ないからだ。
個人金融資産が1800兆円、富裕層の世帯数は120万以上ということが強調されたりもするが、富裕層向けの「金融」ビジネスにおいては、金融資産1億円では全然足りず、少なくとも金融資産10億円はないとビジネスの対象となりにくいからだ。

<NRIによる富裕層の調査>
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2018/181218_1.pdf

何故なら、一般の人が購入できないような私募ファンドの場合、最低投資単位が1憶円だとすると、金融資産5億円でもギリギリ位である。金融資産10億円だとしても、資産を特定のファンドに集中させるわけには行かないので、1億円のファンドを2~3本買って
もらえばそれで終了ということになってしまう。

金融資産1億円以上の世帯数が120万以上といっても、そのうち5億円以上の世帯数は8.4万世帯と一気に減少してしまう。10億円となると極々わずかになってしまう。

格差社会だとかが強調されたりもするが、日本の場合、そこそこの資産家はいても、「超」富裕層となると極端に少なくなってしまうのである。

例えば、アメリカのスポーツ選手とか芸能人、ミュージシャンとかだと年収100億クラスであるが、日本にはそんなレベルの人達は見当たらないことからも、超富裕層の数は少ないのだ。

また、富裕層ビジネスについては、金融機関の場合、コンプライアンスの要請が特に厳しい。これは、2004年にシティプライベートバンクが行政処分によって免許を剥奪されてしまった大スキャンダルがあったこともあり、極めて厳しい管理態勢が顧客審査・顧客管理に求められる。

従って、資産数多くクラスの富裕層と浅く広い取引をするというビジネスモデルは効率性の観点から取り得ないという事情もあるだろう。

さらに、最近のIT系の起業家はともかく、超富裕層には中小企業オーナー、開業医、地主が多く、こういった人達は高齢でコンサバティブなため、外資系とかプライベートバンクのようなものを余り受け付けないという見方もある。

いずれにせよ、「超」の付く富裕層の数が少ない日本においては、なかなか富裕層ビジネスで成功することは難しいのである。

3. 就活、転職における視点

富裕層ビジネスというと聞こえが良く、就活生にとってはカッコよく見えるかも知れない。しかし、実態は以上の通りであって、そちらの方でキャリアを積んでいこうと思っても、将来明るい未来が待っているとは限らない。

外資系金融機関の富裕層向けビジネス部門(PB部門)に転職しようとも、転職先が、UBS、クレディスイス、ロンバーオディエ、ピクテ、ジュリアス・ベア位であり、多くは無い。

給与水準も歩合的要素があり、大きく稼ぐには、厳しい環境下、優良な顧客を数多く開拓しなければならない。

それでも、富裕層向け金融ビジネスに興味がある人は、こちらの過去記事をご参照ください。

<プライベート・バンクにおける年収とキャリアについて>
https://career21.jp/2019-03-19-134155

結局、日本で厚みがある顧客層は、プライベートバンキング・ビジネスには不十分だが、通常の個人投資家としては十分な資産規模のあるセグメントだ。

金融資産額でいうと5000万~数億位だろうか。

結局これは、銀行や証券会社の一般的な大口顧客層ということになる。そうであれば、運用会社で個人投資家向けのファンドに掛かるビジネスに従事した方が、年収/キャリア的に得策と考えられるだろう。