就活中の東大・京大生のためのベンチャー企業選びについて

1. 今でも東大・京大からベンチャー企業に行きたい学生がいる?

毎年、就活情報サイトのワンキャリアが実施している、東大・京大生を対象とした就職人気ランキングの2021卒版が公開された。
https://www.onecareer.jp/articles/1907

この中で、意外な感じがしたのが、2019卒の東大・京大生の内、約2割がベンチャー企業への就職を真剣に考えたということだ。もちろん、ベンチャー企業といっても、楽天とかサイバーエージェントのように最早ベンチャー企業とは言えないような大規模化した企業も含まれてはいるのだが。

今は、5年前のDeNA、グリー、mixiのような目立つベンチャー企業は無く、数少ないベンチャーの希望の星であったメルカリ、ZOZOも業績的に勢いはなさそうである。

それにも関わらず、2021卒のランキングには、ビズリーチ、フリークアウト、Speeeの3社が上位50社に入っているという。

2. 何故、東大・京大生がベンチャー企業に興味を持つのか?

東大・京大生がベンチャー企業に興味を持つこと自体は望ましいことである。将来、日本の産業界が勢いを取り戻すためにはニュービジネスの勃興が不可欠であり、そういった企業に優秀な学生が流れないことには、日本企業の新陳代謝が起こらない。

ただ、ベンチャーブームというわけでもないタイミングで、何故他にも選択肢の多い東大・京大生がベンチャー企業に注目するのだろうか?

1つには、外銀・外コン、総合商社への人気の過度の集中に少し嫌気がさしてきたのかも知れない。

また、本当にアップサイドを狙うには、外銀・外コンで競争を勝ち抜くよりも、ベンチャー起業によってEXITした方が手っ取り早いということが知られ始めたのかも知れない。

実際の就職者の大半は、金融、コンサル、商社、インフラ、情報通信、マスコミ、最上位メーカーというところに就職するので、ベンチャーへの関心度が低くないことは驚きである。

3. 5年ほど前のベンチャー企業ブームの結果は気にしないのか?

<東大から大手ベンチャー企業に就職した後のキャリアについて>
https://career21.jp/2018-12-10-091826

今から5年程前は、DeNA、グリー、サイバーエージェントがベンチャー新御三家とも言われ、東大・京大他トップ校の学生から凄い人気であった。

しかし、5年前に東大から大手ベンチャー企業に就職した者が成功できたかというと、そうは言えないだろう。上記の御三家のうち、Abema TVの問題はあるがそれなりに好調なサイバーエージェント以外、グリー、DeNA、mixi、コロプラといったゲーム系は業績不振に喘いでいると思う。

M&AをやってもWELQ問題が起こったり、海外企業の特損処理があったり、チケットキャンプの問題があったり、なかなかうまく行かない。

当時の就活生の人気を集めた理由として、大手ベンチャー企業に行って、「新規事業」に携わるということであるが、それらの企業から有望な新規事業がいくつも生まれたとは考えにくい。

大手ベンチャー企業の場合、初任給はそこそこであっても、その後の伸びは金融機関や商社と比べて鈍く、「普通に金融、コンサル、商社に行っておけばよかったのに…」と後悔している者もいるだろう。

情報収集に熱心な就活生はこのあたりの事情も知っているのだろうから、既に出来上がった大手ベンチャー企業にはそれほど興味を示さず、まだまだ成長余力のある、ビズリーチやSpeeeのようなベンチャー企業を注目するのであろうか?

4. 大手VSベンチャー企業に対する、一般的な考え方

「大手企業とベンチャー企業、新卒で就活するなどちらが良いか?」という質問に対しては、「大手企業に行った方が良い」と回答する者が多いだろう。

理由は明らかで、
(1)大手企業からベンチャー企業に転職することは難しくないが、その逆は難しい
(2)将来、大手企業と取引をする場合には、大手企業の仕事のやり方を知っておいても損は無い。
(3)大手企業の方が教育・研修体制が整備されているので、意外と成長の機会は大手の方が高い場合もある。
(4)ベンチャービジネスは失敗する方が圧倒的に多いので、確率論的な見地から、大手企業をファーストキャリアとして選択した方が堅い
といった理由が上げられる。

「誰が何と言おうとベンチャーに行く!」というのであれば良いが、実際には、大手とベンチャーで迷うケースも多く、迷うなら大手に行った方が良いというのが一般的な考え方だ。

5. それでもベンチャー企業を選択する場合、どういった企業を選択すべきか?

これに対しては、いろいろな考え方があるだろうが、1つのアイデアとして、
「初年度年収800万円欲しい」とか「ストックオプションが欲しい」といった条件交渉に応じてくれるようなベンチャー企業を選択することだ。

他に選択肢が山ほどある中、わざわざ東大・京大からベンチャーに行くのである。リスクが高い分、給与的な条件では相応な対応をするのは当然のことであり、そのあたりのフレキシビリティがあるのがベンチャー企業の良さである。

「別にベンチャーに学歴は要らないから、特別扱いはできない」というのであれば、それはもともとフィットした就職先では無いのかも知れない。

また、ベンチャー行くのであれば「ストックオプション」に見合った働きができるという自信と根拠が必要だろう。学歴以外に、特に当該ベンチャー企業で結果を出しうるようなスキル、或いは潜在力が無いと、わざわざ最初からベンチャーに行く必要は無いとも言い得るだろう。

東大・京大生のやる気に溢れた学生は、「成長したい!」という思いは強いかも知れないが、「成長させて下さい」という受身の姿勢ではベンチャーは止めておいた方がいいかも知れない。成長であれば、仕事はキツいが、外銀とか外コンであれば確実に成長できる。

以上のことから考えると、東大・京大生(21卒)の人気ランキングには入っていなかった模様だが、メルカリなんて言いと思う。メルカリは設立後の早いうちから、キーとなる人材には好条件を示してリクルートしてきたし、今でもエゴンゼンダー等のエグゼクティブ・サーチファームを使って、優秀な人材を熱心に探している。

従って、自分に確固たる自信があれば、堂々と交渉して好条件でメルカリに行くのはアリだと思う。金融(フィンテック)事業という新分野もあるし、赤字を垂れ流し続けている米国事業をギブアップして国内事業に注力すると、かえって成功するかも知れない。

最後に:本来は自ら起業をする学生が増えるのが望ましい

実は、単なる被用者(幹部ではない)として、既存のベンチャー企業に新卒で就職をするというのは中途半端かも知れない。ベンチャー企業に新卒で入っても、リスクが高い割にはリターン(ストックオプション等)は余り期待できない。

また、自分には自信があり、既存の大企業に収まる器ではないと真剣に思うのであれば、自ら起業をすれば良い話である。起業をするのは面倒くさいし、アイデアも無い。だから、とりあえず他人が作ってくれたベンチャー企業という器に乗っかろうというのは中途半端な考えでは無いだろうか?

とはいえ、アメリカのシリコンバレーのようなインフラや歴史の無い日本において、学生でいきなり起業というのも難しいのは理解できる。しかし、ベンチャー起業というのは、誰か他人を雇わなければならないという決まりは無いし、VCからお金を引っ張って大きくやらなければならないということも無い。自分一人だけで、無借金でWebサイトから始めてみるのであればリスクも無い。向いていないと思えば、外銀・外コンに志望替えをすればいいだけの話である。

このため、小さくてもいいので自らベンチャー起業に挑戦する東大・京大生が増えれば頼もしいし、産業界とかベンチャー界隈もそのようなサポートを強化すべきであろう。