1. くら寿司が新卒で年収1000万円の幹部候補生を採用
<くら寿司 エグゼクティブ新卒採用>
http://www.kura-corpo.co.jp/company/recruit/executive/
くら寿司が、幹部候補生として英語が堪能な者(募集人数10名)を年収1000万円で採用する。
外資系金融、大手渉外法律事務所など、昔から初年度の年収が1000万円以上のポジションは存在したが、国内系企業では前例が無いのではないだろうか?
5年以上前のスマホゲーム全盛期に、DeNAとかグリーが新卒に「年収1000万」ということが話題になったが、あれは年収1000万円「も」あり得るというだけで、実際に、初年度から年収1000万円をもらえた新人がいたかどうかは定かでない。
しかし、今回のくら寿司の募集は、1000万円は確定で、「入社3か月までは月額42万円を支給。4か月以降は月額83万5000円を支給。」と具体的な支給方法まで明示されている。
2. 今の就活生は、初任給や若い時の給料にこだわる
それでは、くら寿司の年収1000万円の新入社員のポジションに、優秀な学生は応募するかというのが気になるところであるが、結構人気を集めると考える。
というのは、優秀な学生の間で最も人気・難易度が高い外銀・外コンは国内系の一流企業と比べて、初年度の年収が高い。外銀だと800~1000万円、外コンの場合には600万円程度が期待できる。
国内系金融機関も、普通の総合職だと初年度年収は400万円程度であるが、IBDやグローバル・マーケッツ等の専門職採用の場合は600万円~スタートとなり、そうなると難易度が極端に跳ね上がる。
もちろん、こういったポジションは初年度の年収が高いだけでなく、将来のキャリアを考えた上でのことなのだろうが、就活生からのOB訪問を受けていても、初年度或いは若い時の年収に対するこだわりが強いことがうかがえる。
最近では、初年度から高給がもらえる外銀とか国内系金融機関の専門職が難化しているが、他に初年度から高収入をもらえる他のポジションはあまり見当たらない。
したがって、初年度の年収にこだわりの強いトップ学生からも、一定数、このくら寿司のエグゼクティブ新卒コースに流れてくるのではないだろうか?
<就活における外資系金融の難化について>
https://career21.jp/2019-05-31-100844
3. そもそも、くら寿司の年収1000万円のポジションについて、内定をもらえるか?
①くら寿司の狙いは、高学歴のハイスペック系?
このニュースは日経新聞とか、NewsPicks等メディアで取り上げられ、話題性があるので、関心を持っている学生は多いだろう。
まず気になるのが、このポジションの難易度である。
募集条件の必須資格は、TOEIC800以上とか簿記3級とか大して難しい条件では無いが、結局は相対評価なので、どういったレベルの就活生が応募するかがカギとなる。
募集人数は10名なので、少なくとも数百名は応募するだろうから、ある程度スペックが高くないと書面で落とされてしまうだろう。
くら寿司もこのような思い切った募集をするのは、普通の採用では絶対に採用できないような学生を集めたいのであろうから、「東大法学部で帰国子女(或いは留学経験有り)」的なハイスペック系が欲しいのであろう。
②真剣に考えるのは、金融系よりもコンサル系?
新卒で年収1000万円というと、凄いのであるが、冷めた見方をすると、そこから将来更に年俸が増えないとそれほど凄い話でもない。
金融機関であれば国内系でも30歳位で年収1000万円には到達するし、外銀志望者は年収3000万、5000万、そして1億円以上を目指しているので、初年度が1000万円というだけでは動かない。
また、IBDとかグローバル・マーケッツを志向する学生は、リテール営業にも通ずる、泥臭い外食産業は好きでは無いので、あまり相性は良くなさそうである。
他方、コンサル志望者というのは、単にお金だけでなく、面白いことをやりたいという人が多いので、真剣に考える者もいるだろう。
③ポイントは、「就業経験者、1年以上ブランクがある既卒」は不可ということ
今回の募集のカギは、あくまでも新卒、就業経験が無い者に拘るということである。
すなわち、外食業の経験・スキルが如何に素晴らしくても、このポジションの対象外ということである。
従って、学生時代に外食のアルバイトに没頭していたような学生は、お呼びでないということだし、卒業後バックパッカーをやっていたような学生も要らないということだ。
あくまでも、経歴がきれいでハイスペックなポテンシャル重視ということなので、高学歴、英語堪能、賢そうに見せるプレゼン能力といった学生間の戦いであろうか?
4. くら寿司の新卒年収1000万円のポジションに応募する際に留意したいこと
①入社後、失敗したと思った場合のバックアップ・プランを用意すること
このポジションは初の試みであり、出来上がった養成システムがあるわけではない。また、既存の社員からの妬み・やっかみというのは当然あるだろう。また、外食産業の雰囲気が合わない場合もあるだろう。
入社後にすぐに転職するケースというのは、外銀・外コンでは珍しくないが、第二新卒として転職する際の市場価値は、外銀・外コンの方が高いであろうから、そこのところを意識する必要があるだろう。
②将来外食でキャリア形成していきたいか?
外食というのは、新しい業態が生まれ、ブームになり、廃れていくというパターンの繰り返しである。かつては、ロイヤルホスト、すかいらーくがファミレス文化を形成し、その後は、サンマルク、ワタミ、グローバルダイニング、牛角、ゼットン、幸楽苑、俺のフレンチ、鳥貴族、いきなりステーキなどが新たに登場しては、廃れていく。
うまくブームに乗ればその後は廃れても億万長者になれるというアップサイドはある。
このくら寿司のポジションは外食産業でのし上がっていく機会を得られるが、他の金融とかコンサルで求められるようなキャリア・スキルは身に付かない。
本当に、自分は外食産業、或いは食べることが好きなのかどうか十分に考えた上で応募したいところだ。
5. 初任給が高いポジションを別途用意するのは、今後増えるのでは?
今回、年収1000万円ということで話題となったが、他の企業もこの手は使えるのではないだろうか?別に年収1000万円でなくとも、800万円、600万円でも従来では採れないような学生を集めることができるだろう。
経団連の終身雇用終了宣言、就活ルールの廃止、通年採用の拡大と、今後は新しい新卒採用形態が拡がり、中途採用も拡がって行くだろう。
新卒採用の者の初任給が皆同じでないといけない理由は無いので、この手の動きは拡がっていくと思われる。そうなると、就活生の選択肢も増えるだろうから、お互いに悪い話ではないのではなかろうか?