1. 大阪大学法学部の概要
大阪大学は医学部や工学部といった理系のイメージが強いが、法学部も関西では京都大学に次ぐ難易度であり(偏差値65.0、センター試験得点率83%)、文句なしの名門大学法学部として分類される。
定員は250人であり、法学科170人、国際公共政策学科80人という構成である。
2019年入学生の男女比率は、約2:1で、若干男子学生の比率が高くなっている。
https://passnavi.evidus.com/search_univ/0590/department.html?department=020
2. 大阪大学法学部の進路の概要
① 法科大学院への志望者について
司法制度改革に伴い、法曹を目指す者の大半は法科大学院経由である。
大阪大学法学部の場合、法科大学院への進学者数は約十数パーセントである。
これは、京都大学法学部や東京大学法学部と比べると少ないが、一橋大学法学部や早慶の法学部とほぼ同じくらいの割合である。
近年は、法学部の中でも優秀層は法科大学院経由ではなく、予備試験経由で新司法試験を目指すものが増えており、大阪大学法学部の場合も予備試験ルートを含めると、約2割の学生が法曹を目指すものと推察される。
なお、国際公共政策学科への進学者も4名存在している。
② 公務員への就職者について
一般に、法学部の場合は公務員になる者の割合が経済・商学部系の学部よりも高い傾向にある。大阪大学法学部の場合も、約40人が公務員となっている。比率でいうと、卒業生の約15%が公務員になるようである。
③ 民間企業への就職について
上記の通り、約2割が法曹を目指し、約15%が公務員となる。それ以外に、公共政策大学院への進学者や不明者を差し引くと、民間企業に就職する者は約140名程度、卒業生に対する比率でいうと、6割程度ということになる。
民間企業における新卒採用マーケットにおいて、大阪大学法学部の学生はかなりの稀少性があると言える。
3. 大阪大学法学部の就職状況について
大阪大学法学部の場合、就職状況に関する開示が極めて良い。1名でも就職者がいる企業・団体について全て開示してくれている。
http://www.law.osaka-u.ac.jp/undergraduate/about/after.html
大学全体での母集団が140人とかなり少ないので、就職先はかなりのロングテール化をしており、大半が就職者1名の状況にある。大阪大学は法学科と国際公共政策学科とを分けて開示しているので、ここでも学科別に整理して紹介をする。
(2018年度 大阪大学法学部法学科の民間企業への就職状況)
製造業 | 富士通(2)、コームラ、パラマウントベッド、トヨタ自動車、西堀酒造、ソニー、ジェイテクト、参天製薬、住友電気工業、旭工精、その他 |
電気・ガス | 大阪ガス(2)、四国ガス、中部電力 |
情報通信業 | 日本放送協会(2)、楽天、サイバーエージェント、ハイ・アベイラビリティ・システムズ、ベリサーブ、読売新聞大阪本社、コムテック、JSOL、コベルコシステム、電通デジタル、ピーワークス、Sky |
運輸業・郵便業 | 住友倉庫、北港運輸、JR東日本、JR東海 |
卸売業・小売業 | 住友商事、三井物産、セブンアイホールディングス、IDOM、ニトリ、ローソン、Real Style |
金融業・保険業 | 三井住友銀行(4)、三井住友信託銀行(4)、三井住友海上火災、東京海上日動火災、日本生命、三井住友FG、明治安田生命、三菱UFJ銀行、日本政策金融公庫、大樹生命、アフラック、ゆうちょ銀行、農林中央金庫 |
学術研究、専門・技術サービス業、教育・学校支援業 | 船井総合研究所、アクセンチュア、アビームコンサルティング、クニエ、シグマクシス、日本ビジネスアート、尾崎裕税理士事務所、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム、ヒューマレッジ、森ノ宮医療大学 |
その他の業種 | 野村不動産、三菱地所、セコム、JTB、ビューティークリニックこだま、社会福祉法人わらしべ会、社会福祉法人池田さつき会、リクルート、西日本高速道路 |
(出所:大阪大学公式HPより引用)
(2018年度 大阪大学法学部国際政策学科の民間企業への就職状況)
製造業 | 住友化学、SMC、パナソニック、本田技研工業、住友理工、デンソー、日産化学 |
電気・ガス | 大阪ガス |
情報通信業 | 日本放送協会、楽天、ソフトバンクグループ、京セラコミュニケーションシステム、ピーアンドアイ、ビズリーチ、シンプレクス |
運輸業・郵便業 | 京王電鉄、大阪モノレールサービス、近鉄グループホールディングス |
卸売業・小売業 | 住友商事、三井物産、丸紅 |
金融業・保険業 | 三井住友銀行(3)、三井住友海上火災(2)、アドバンスクリエイト(2)、北國銀行、国際協力銀行、第一生命 |
学術研究、専門・技術サービス業、教育・学習支援業 | アクセンチュア(2)、アビームコンサルティング(2)、船井総研ホールディングス、EYアドバイザリー&コンサルティング、マッキンゼー、KPMG税理士法人、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、PwCコンサルティング、パソナグループ、ウィザス、トモノカイ |
その他の業種 | ウィル、seak、リクルート、JFEエンジニアリング |
(出所:大阪大学公式HPより引用)
4. 大阪大学法学部の就職における課題
関西の国立大学の傾向かも知れないが、金融機関への集中度は東京の有力校と比べると低いと思われる。多様性は高く、ベンチャー企業への就職者も散見される。
大阪大学法学部位のランクと生徒数の少なさからすると、大手金融機関の総合職とか、大手メーカーやサービス業への内定は特に問題なく取れるのであろう。
課題があるとすれば、外銀・外コン、総合商社、大手マスコミといった、特に難しい企業への就職者数が少ない点であろうか?
まず、外銀・外コンについては、前年と同様に外銀はゼロである。しかし、2018年度においては、マッキンゼーへの就職者が出たことが光る。総合系ファームについては、アクセンチュア、アビームコンサルティング、PwCコンサルティング、EYアドバイザリー&コンサルティング、シグマクシスといった実績がある。
また、総合商社については、三井物産(2)、住友商事(2)、丸紅の5名であるが、三菱商事や伊藤忠が見られないのが大学のレベルを考えると少し寂しい気もする。
また、デベロッパーでは三菱地所は1名だが、三井不動産はゼロ。大手マスコミでは電通・博報堂あたりへの就職者がいないのも気になるところである。
もちろん、就職は学生の価値観の問題なので、就職難易度や就職人気ランキングが高いところを目指さなければいけないということは無い。しかし、少子化が継続する環境下、優秀な学生を入学させようと思うと、このあたりの就職状況は軽視できないとも言える。
特に、東大、一橋、早稲田、慶應といった東京の有力校と比べて、このあたりで見劣りしない方がいいだろう。
もちろん、そういった超人気企業というのはいずれも東京にあるため、立地という面で不利益な点があるのは否めない。しかし、京都大学経済学の場合には、同じ関西という立地であるが、東京のトップ校と同様の就職の成果を出している。
<京都大学経済学部の就職について>
https://career21.jp/2019-02-26-064501
国立大学の場合、学校のサポートは限定的になってしまうだろうが、OB/OGが協力するなどして、東京の有力校に負けない就職力を付けていくことが必要なのではないだろうか?