序. 経営共創基盤(IGPI)とはどんな会社なのか?
経営共創基盤というのは、非上場であるし、一般的な知名度は決して高くはない会社かも知れない。経営共創基盤は2007年創業の新しい会社である。英文名はIGPIであり、Industrial Growth Platform, Inc.の略である。
一言でいうとコンサルティング・ファームなのだが、事業と財務の両方を取り扱い、チエだけではなく、ヒトとカネも提供するという特徴を有している。また、対象とする企業も、一般のコンサルティング・ファームや投資銀行は大企業のみをクライアントとするのに対して、経営共創基盤は大企業からベンチャー・中小企業まで幅広くカバーするのも特徴としている。
なお、創業者は元コーポレートディレクション代表取締役、元産業再生機構COOの富山和彦氏である。
<経営共創基盤の特徴>
http://igpi.co.jp/careers/newgraduate/three_min/
1. 金融機関からも転職可能なユニークなコンサルティング・ファーム
プロフェッショナル・ファームの代表的な業界というと、金融とコンサルが思い浮かぶ。
しかし、この両者はそれぞれ個性が強く、業界の掟も大きく異なる。このため、両者間での転職というのは例外的である。よって、金融は金融業界、コンサルはコンサル業界(或いは事業会社)の中でキャリアアップしていくことが多い。
ところが、経営共創基盤(IGPI)はユニークなコンサルティング・ファームであり、コンサル経験を全く有しない金融キャリアの者も広く採用しており、管理職(マネージャー)以上での転職も可能である。
なぜなら、上記の通り、経営共創基盤は事業と「財務」の双方をカバーし、チエだけではなく、「カネ」の問題も解決することを強みとしているコンサルティング・ファームだからだ。
実際、創業者の富山和彦氏と共に代表取締役を務めている村岡隆史氏は、旧三和銀行⇒モルガンスタンレーIBDの出身で金融畑だ。
2. 金融プロフェッショナルがわざわざコンサルにキャリアチェンジする意味
①金融からキャリアチェンジするには、ハードルは決して低くは無いが…
もちろん、金融機関からも転職可能と言っても、プロフェッショナル・スキルを有する者に限られ、リテールやバックオフィスの経験しか有しないものは書面通過すらできない。また、債券とか株式のトレーディング業務の様に、企業の課題解決とは直接関係の無いフロント部門のものも難しいだろう。そうなると、基本的には、IBD出身者でないと難しいということになり、金融からコンサルにキャリアチェンジをするハードルは低くはない。(第二新卒のポテンシャル採用の場合は除く)
②外資系金融機関への転職の問題点
それでは、金融プロフェッショナルとして外銀又は外資系運用会社に転職した方がいいのではないかということであるが、国内系金融機関のIBDからでもVP以上で外銀に転職するのは難しくなってきている。日本の場合は、例外的に新卒で入社した者がVPに昇格していくことの方が多いからである。
また、外銀の場合は相場環境や本社の収益性に大きく左右されるため、安定性の観点から30歳を過ぎて外銀に転職というのを躊躇する人達もいる。
もちろん、外資系金融の方が年収水準はコンサルよりも遥かに高いので、年収重視の価値観の場合にはこのキャリアを選択するのが良いだろう。
③企業経営に参画するという憧れを実現…
金融機関で働いていると、事業会社での経営に従事したいという憧れを有する人達はいる。しかし、金融機関のスペシャリストであっても、事業会社の経営者のポジションに就くことは難しい。
しかし、コンサルの場合には将来事業会社の経営幹部に就くことも可能であり、キャリアの拡がりという点で、コンサルに憧れている金融プロフェッショナルもいる。
この点が、金融機関からコンサルに転職をする最大のメリットかも知れない。一般的に、30歳を過ぎると金融からコンサルへの転職はかなり現実味を欠くが、経営共創基盤の場合には可能性があるのが魅力である。
3. 経営共創基盤の年収について
① 新卒の場合
実は経営共創基盤は新卒採用も行っている。もっとも、新卒採用を始めてから10年経つか経たないかであるため、管理職の大半は中途採用の者である。
結論的には、年収という点においては新卒で入社するのはあまり得策ではない。やはり、中途で入った方が前職の年収が基準となるし、また、昇格のスピードという点でも、新卒で一つ一つ昇格していくよりも、早いからである。
ちなみに、新卒の場合だと初年度は基本給400万円+ボーナス(1年目は少ない)で年収500万円程度であり、MBBは当然として、総合系ファームよりも見劣りする。
その後、3年目にシニア・アソシエイトに昇格すると年収は700万円位になる。
そして、30歳でアソシエイト・マネージャーに昇格すると、年収はトータルで1000万円程度となる。
このため、新卒で入社するのは大変(半分位は東大か京大)な割に、年収だけを見ると国内系金融機関のIBDや総合商社に見劣りしてしまう。
② 中途採用の場合
中途採用の場合には、もう少し年収水準は高くなる。ありがちだが、中途採用の場合には、前職の年収が考慮されるので、同じタイトルでも結構な違いがあり、不公平感もあるようだ。
ボリュームゾーンのマネージャーの場合、ベースとボーナスを合わせて1300~1500万円位が目安となる。1ランク上のディレクターになると年収は2000万円前後(1700~2300万円)になるが、ディレクターで入るのはハードルが高い。
マネージング・ディレクターになると、年収は数千万円も可能となるが、到達することは難しい。
戦略系ファームと比べると、7掛け位しかないと言われることもあるが、中途でマネージャークラスだと総合系ファームとはそれほど変わらないのではないだろうか?マネージング・ディレクターになると、総合系ファームよりもアップサイドはあるのではないだろうか。
4. 経営共創基盤でのキャリアにおける留意点
以上のように、年収という点だけを見ると、国内系証券会社のIBDとか総合商社の方がコスパはいいかも知れない。また、アップサイドを見ると、外銀には到底敵わない。
しかし、コンサルという別のキャリアに挑戦でき、将来は事業会社の経営幹部の途も拓けるということを考えると、非金銭的な魅力はあるだろう。
但し、注意しなければならないのは、ここは地方のバス会社とか、傾いた老舗メーカーの再生案件のように、必ずしも収益性が高くない社会的公共的な案件が多かったりもする。
そして、インターネット、デジタルフォーメーション系の、将来ネットベンチャーに行けそうな案件は、総合系ファームの方が得意かも知れない。
従って、収益至上主義的ではなく、社会的公共的な案件に共感を示せる者でないとカルチャーにフィットしないかも知れない。
5. 経営共創基盤への転職とエージェントについて
経営共創基盤はコンサルなので、常時積極的に中途採用を行っている。転職エージェントとしては、コンサルに強いブティック系があり、アンテロープ、ムービン、アクシオムといったところは一通り登録した方が良い。
<アンテロープ>
<ムービン>
<アクシオム>
また、大手の場合には、外資にも強いJACも併用するのも悪く無いだろう。登録はこちら(JACの公式サイト)会社の採用情報から直接応募をすることも可能だが、競合状況とかフィードバックをもらえないので、面接が複数回想定されるコンサルにおいてはエージェントを使うべきだろう。
最後に
コンサル経験を一切有しない、金融プロフェッショナルがマネージャー以上で転職できるコンサルティング・ファームはここくらいしかないのではないだろうか?
中途採用については、広く、常時門戸を開放している。
将来事業会社の経営幹部を目指したい金融プロフェッショナルは検討してみても良いだろう。