1. 信金中央金庫(信金中金)とは?
①信用金庫の元締め的な大手金融機関
信金中金というのは、一般人の馴染みは薄く、学生も金融機関志望者なら聞いたことがあるという程度の知名度では無いだろうか?
しかし、信用金庫の統括的な金融機関である信金中金は、総資産が40兆円近く有り、債券、ファンド、プロジェクト・ファイナンスと機関投資家としての存在感は高い。このため、国内・外資系を問わず、証券会社や運用会社からすると、重要な取引先の金融機関の1つであり、金融業界におけるプレゼンスは結構高い。
<信金中央金庫の会社概要>
https://www.shinkin-central-bank.jp/about/profile/company.html
また、政府系金融機関ではないが、特別法に基づく金融機関であり、純粋な民間金融機関とは異なる雰囲気を持つ。
資産規模は大きいのだが、役職員数がとにかく少なく(1200人程度)、総合職の採用者数も毎年せいぜい30人程度である。東大、一橋、早慶の歴史のあるゼミだと、辿っていくと信金中金勤務の先輩が見つかるかも知れない。
なお、昔は「全国信用金庫連合会(略して全信連)」という名称だった。
メガバンクじゃ面白くない、ちょっと変わったところがいい、という金融機関志望の就活生からすると、穴場と言える面白い金融機関かも知れない。
②信金中央金庫(信金中金)のビジネスモデル
信金中金のメイン業務は、「信用金庫のサポート業務」と「マーケット運用・貸出」が2本柱である。信金中金の採用HPを見ると、「信用金庫のサポート業務」は更に、「信用金庫の業務サポート」と「信用金庫の経営サポート」に2分されるようである。
<信金中金公式採用ページ:ビジネスモデル>
http://www.scb-saiyo.com/mission_business.html
その名の通り、信用金庫に関連する業務がメインなので、中小企業金融や地域金融への業務に関心が高い就活生向けであろう。反対に、大企業向けのコーポレート・ファイナンスとかグローバルな金融業務を志望する学生には不向きであろう。
もっとも、前述の通り、信金中金はわが国でも有数の機関投資家であるので、市場運用業務に携わるチャンスもある。したがって、一見地味に見えるが面白い業務を展開していると言える。
2. 信金中金の年収について
① 全体観
金融機関志望の就活生が気になるのは、何といっても年俸水準だろう。
信金中金の場合、メガバンクや大手生損保と比較すると、残念ながら見劣りしてしまう。
大体、メガバンクの8掛け位と考えれば良い。このため、地銀やりそな銀行よりは多いと言えるだろう。
<参考:りそな銀行>
https://career21.jp/2019-05-17-091200
その代わり、ワークライフバランスは良く、評価や昇格についても管理職になる位までは年功序列であり、業績評価による年収の差はほぼ無いと考えて良いだろう。「信用金庫をサポートする」という、半分公務員的な使命感があるため、そのような雰囲気を好む人にとっては居心地がよいと思われる。
② 入社年次、役職に伴う年俸水準の推移
最初の3年間は、300万円強でスタートし、3年目で400万円程度である。
4年目で少し上がり、年収は500万円を越える。その後は8年目位まで緩やかに上昇し続け、28~29歳で600万円程度となる。
入社9年目には調査役に昇格できるため、30歳ちょいで年収は800万円位となる。
年収が1000万円に到達するのは、30代後半から40歳位で昇格できる審議役になってからである。従って、40歳で1000~1100万円位が目安となる年収である。
そこから先は、部店長ということになるが、ここまで昇格できると年収は1500万円程度に上昇する。
3. 信金中金でのキャリア、転職について
①元々、外資系金融に転職したいという学生は来ないのだろうが…
当然ながら、外資系を志向するような職員は基本的にいないと思われる。外銀において信金中金出身者にはまず出くわさないだろう。
やはり、メインは全国を転勤しながら、終身雇用というのが大半である。
なお、海外にも駐在員事務所は存在し、現在のところ、ニューヨーク、香港、上海、バンコクに拠点がある。かつてはロンドンにも拠点があったが、閉じてしまったようだ。
海外勤務をしたくて信金中金に来た職員は少ないであろうから、海外勤務を希望すれば実現する可能性もあるのだろうが、海外の手当ては商社やメーカーのように手厚くはないようだ。
もっとも、行ける機会があるのであれば、海外経験をするのも悪くないように思われる。
さすがに、信金中金は大丈夫な気もするが、何が起こるかわからない世の中になっており、終身雇用のつもりで就職しても、20年後、30年後のポジションが保証されるとは限らない。従って、いざという時に備えて、英語、運用、融資とスキルを磨くことを意識した方がいいだろう。
②中小企業サポート、地方創生関連の土地勘は身に付く?
あえて転職とか独立・起業をしたいという人は、信金中金には多く無いと思われるが、業務の性質上、中小企業金融とか地方創生的なテーマには比較的近い位置にあると思われる。中小企業と地方経済というのは、今後の日本経済にとっての課題となる分野であるので、何らかの専門性を身に付ければ将来活躍できる可能性があるかも知れない。
4. 信金中金への中途採用と転職エージェント
上記の通り、信金中金は就職先として魅力的であるが採用者数が特に多くはない。また、就活時代にはその存在に気付かなかった人もいるだろう。それなら、中途採用はどうかというのが気になるところである。この点、信金中金は中途採用もやらないことは無いが、採用者数はそれ程多くはなく、常時求人があるとは限らない。
そこで、戦略としてはなるべく多くの転職エージェントに登録して、気長にチャンスを待つということになる。国内系なので、リクルート、doda、マイナビ、パソナキャリア、エン・ジャパン、JACあたりには広く登録しておきたい。
また、金融に強いエージェントの中で、コトラ、アンテロープにも登録をしておいた方がいいだろう。
<コトラ>
<アンテロープ>
更に、大手の中ではJACは外資や金融にも強いので、ここも利用したい。登録はこちら(JACの公式サイト)
以上の様に、広く登録をしておくと、信金中金の案件がたとえ来なかったとしても、他に優良案件に遭遇できる機会が拡がるので、面倒だがやっておきたいところである。
最後に
信金中金は、一般的な知名度こそ低いが、運用資産額が大きく金融業界の中ではプレゼンスの高い金融機関である。単純な年収だけだとメガバンクには若干劣るが、ワークライフバランス等の定性面を加味すると、十分に魅力はあるのではないだろうか?
ただ、情報量が少ないので自ら積極的に取りに行く必要がある。政府系金融機関のように内定するのが特別難しいわけではないので、ゼミの先輩とかに話を聞いておきたいところだ。
ここ数年のメガバンクの採用抑制に加え、2020年初頭に発生したコロナウイルスの問題によって、特に22卒以降の新卒採用市場はかなり不透明であると懸念されている。そうなると、安定性が高く、新卒採用者数が少ない信金中金も急激に難化する可能性がある。したがって、真剣に入社を考える際には、十分なOB訪問や企業研究を行う等、しっかりとした事前準備が必要になるだろう。