1. 金融機関よりも任天堂の方が転職力がある?
3メガバンクが2021年春に入社する新卒採用数を、前年の2020/3卒よりも15%削減するそうだ。超低金利による収益の圧迫と、AIの進化に伴う店舗や関連する人員の余剰感が生じていることが背景だ。
<3メガバンクが新卒採用を15%削減>
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03906/
そういった場合、文系の学生は金融以外の選択肢も模索する必要が生じるのであるが、その中で任天堂は、好き嫌いが分かれるだろうが、かなり魅力のある企業だと考えられる。
① Googleでさえ参入したがるゲーム事業。将来の選択肢は広い
ゲーム事業は収益性が高いので、非ゲーム企業でも参入したがるところは少なくない。ソニーのプレイステーション事業もそうで、今となっては大昔の話であるが、非ゲーム企業のソニーはゲーム事業に新規参入し、今でも多額の収益を稼いでいるのである。
マイクロソフトのX-boxも然りである。
専用のゲーム端末が不要な、スマホゲーム事業となると、既に大手のネット系企業が参入し成功しているし、今後も、資金力を有する新興ネット系企業が新たにスマホゲーム事業に参入することも十分考えられる。
そうした中、ゲームの企画・開発・運営スキルを身に着けられ、ネームバリューも高い任天堂にいると、将来転職によるステップアップのチャンスは十分にあるのではないだろうか?
② 転職しなかったとしても、ワークライフバランスに優れた生活を京都で送ることができる
これは京都で生活したいか否かによるが、任天堂の場合、大半の社員は京都勤務である。そして、部署や時期にもよるが、総じてワークライフバランスに優れ、定年まで余裕をもって過ごすことができる。もちろん、東京よりも京都の方が任天堂のステータスは高い。
2. 任天堂の年収について
特に金融志望の学生からすると、気になるのは給与水準であろう。
任天堂の場合、横並び・年功序列型であるので、評価による差は付きにくいが、そこそこの水準の年収を実現することができる。
任天堂の場合、基本給の水準はそれ程高くは無く、ボーナスと残業代の割合が比較的高い。
このため、初年度でも年収500万円を越えることは可能である。
2~3年目には、年収は500~600万円、4~5年目で600~700万円位となる。
なお、制作系の部署と事務系の部署とでは、残業時間に差があるため、残業時間が少ないとこのレンジの下の方になってしまう。
そして、35歳の主任クラスで900~1000万円となる。残業代にもよるが、30代で1000万円に到達することは十分に可能だ。
そして、40代で課長になると1200~1400万円、部長になると1500万円以上となる。もちろん、課長位には昇格は可能であるが、部長にはなかなか昇格できないのは金融機関と同様である。
全体的には、メガバンク並みとは言わないが、8掛け以上はあるのではないだろうか?
ワークライフバランスの良さを考慮すると、決して悪くは無い水準ではなかろうか?
福利厚生についても充実しており、カフェテリアプラン、住宅補助の他、ゲームやスマホの購入援助や英会話学校の補助、若干変わっているものとしては、野菜(サラダ)の食べ放題といったものまである。また、女性社員に対しては、産休・育休の体制は整っている。
3. 任天堂のキャリアプラン、転職について
①ゲームというのは実は汎用性の高いスキルである
メーカーの場合には業務における互換性が低く、一般的にはあまり転職力はつかないのであるが、任天堂の場合は「ゲーム」という汎用性の高いスキルが習得できるし、ネームバリューもある。このため、企画・制作の業務経験を有する社員は、メガバンクよりも転職力は高いのではないだろうか。
②特に任天堂の場合、他のゲーム企業では習得できない固有のスキルを得られる可能性がある
ゲーム会社の数は多いが、任天堂は世界一のゲーム会社だけあって、他では習得できないスキルを身に着けられる可能性がある。
例えば、キャラクターの創造・運営ノウハウがある。マリオとかポケモンはグローバルで著名なキャラクターとなっている。ゲームの面白さ以前に、著名な人気キャラクターを有すると、いくらでもキャラクターがキャッシュを稼いでくれる。
この点、パズドラとかモンストは大成功を収めたのであるが、残念ながら人気キャラクターを創造できなかったので、飽きられてしまうとそれっきりである。
任天堂に入社すると、キャラクタービジネスの創造・運営スキルに絡める可能性がある。
また、スマホゲームが普及すると、スマホ自体がゲーム機になるので、ゲーム機を開発・製造するメーカーにとっては逆風なのではないかという意見もある。しかし、任天堂のSWITCHはバカ売れしており、そうなるとスマホのゲームしか開発できない企業は全く太刀打ちできなくなる。
もちろん、ゲーム専用端末はリスクファクターにもなり得るのだが、これにまつわるスキルは他では得られないので、この事業に関わると排他的なスキルを得られる可能性がある。
②転職先は結構多い
任天堂はいかにも終身雇用に適した企業のようにも見えるが、若手でやる気が有り余っている者にとっては少々物足りなく、ステップアップのために転職する者もいる。
可能性としては、冒頭で述べたように、管理職以上でマイクロソフトとかGoogleのような外資系に行くという選択肢があるだろう。
また、サイバーエージェント(Cygames)、LINE、コロプラといったベンチャー系のスマホゲームを営む会社にも行ける。最近では、アカツキという会社も好調である。こういったところに、幹部クラスで転職すれば相応の待遇を用意してもらえることも十分あり得るだろう。
④自らゲーム会社を起業するのは厳しいかも知れないが…
ゲームの場合には、現在ゲームの新規開発コストとプロモーション費用が高騰しているので、ゲームベンチャーを起業するのは難しいが、ゲームの周辺分野での起業であれば可能性はあるだろう。
⑤もちろん、最後まで任天堂に勤めるという選択肢もある
この点、任天堂でゲームの開発スキルをつかめば、その将来は明るいし、ずっと会社に残ってまったり過ごすのも悪くない。
4. 任天堂への就職について
①採用人数が少ないので、もともと、簡単に入れる会社ではないが…
任天堂はもともと社員数が少なく、単体だと2200人位である。新卒採用数も、総合職だと事務系は20人位しか採用してもらえない。
また、採用実績校を見ても一流大学多い。2019/3卒業生のケースだと、東大4人、京大4人、阪大6人、早稲田5人、慶應3人、MARCH3人、関関同立14人となっており、京都の会社だけあって、関西の大学が強いようだ。
もっとも、任天堂の場合、採用基準は単なるスペックだけではないだろう。外銀・外コン・総合商社、国内金融コース別採用組だからといって簡単に採用してもらえるわけではない。任天堂という独特のカルチャーにフィットしないといくらスペックが高くても採ってもらえるとは限らない。
このため、ぎりぎりのタイミングで金融志望から切り替えても、なかなかうまく行かないであろう。早い段階での準備が必要となる。
②中途採用枠もあるが、熱心な転職活動が必要
中途採用も随時やっているようだが、何と言っても採用者数は若干名の世界である。したがって、有力転職エージェントに数多く登録してアンテナを高く張っていないとなかなかチャレンジできないであろう。