文系学生の三菱重工への就活、年収、キャリア、転職について

1. 金融機関以外の選択肢も真剣に考える必要が生じるかも…

東大、一橋、早慶等、文系のトップ学生は金融機関への就職割合が高い。これは、何といっても年俸水準が高いということ、ステータス・就職偏差値・世間体的に良いということ、プロフェッショナルスキルが身に付く(場合によるが)といったことなどが理由として挙げられるだろう。

しかし、先日の三菱UFJ銀行の新卒採用者数削減の公表等、今後メガバンクを始めとした大手金融機関が新卒採用者数を大幅に減少させるおそれが生じている。

<三菱UFJ銀行の採用者減の話>
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/syukatsu/syukatsu10-31/

これについては、ここ4~5年間の間の採用人数が多すぎたという見方もできるが、大手金融機関が採用者数を急激に揃って減少させるとなると、有力校の学生でも金融機関から内定をもらえない者も出てくるだろう。

また、少子高齢化に伴う国内市場の縮小やIT・フィンテックによる将来の仕事の効率化を考えると、学生としても大手金融機関には行きたくないと考える者も出てくるだろう。

そうなった場合には、就活に先立って、金融機関以外の選択肢を考えざるを得なくなる。

2. とはいえ、金融機関以外の選択肢は簡単には見つからないが…

金融機関以外と言っても、なかなか良い選択肢は見つからない。
メーカーや非金融のサービス業は総じて、給与面で大幅に金融機関よりも見劣りする。半分とまでは行かないにせよ、金融機関の7掛けとか2/3あたりが多いのでは無いだろうか?

また、給与分で見劣りする分、安定性においてメーカーが金融機関よりも勝っているとは限らない。何故なら、少子高齢化の問題や、国際競争力の低下といった問題は、メーカーにも共通の問題だからである。

このため、メーカーに切り替えると言っても、給与、将来性、労働条件等で優れた企業を探すとなると、なかなか見つからない。

3. 三菱重工の魅力

なかなか好条件のメーカーを見つけるのは容易ではないが、三菱重工は有力候補となるのではないか?

まず、何といっても三菱グループの中核企業であり、ステータスが高く、ネームバリューがある。
そして、安定性は今のところ高いと言えるだろう。

また、ロケットから宇宙サービスといった巨大プロジェクトに関わることが可能な、日本企業屈指の高い技術力を有するメーカーなので、カッコいい仕事ができるという期待感がある。

給与面については、メガバンク等よりは劣るが、長い目で見ると大して変わらないという見方もある。私は今から20年以上前に、東大卒の元三菱重工の転職エージェントと会ったことがあるが、彼曰く、「三菱重工は就職先、再就職先の世話など、70歳まで面倒を見てくれる。」という。今でも言えるかどうかはわからないが、終身雇用であり長い間面倒を見てくれるという優しさがある(もっとも、今後はどうかわからないが…)。

4. 三菱重工の年収について

① 三菱重工の年収に関する全体観

三菱重工は何といっても横並び・年功序列型の提携である。同期間の業績による年収差は産業時間を除いて見られない。また、残業代といっても、ワークライフバランスは優れており、金融やマスコミのように多くを残業代で稼ぐというモデルではない。

そして、極めてゆっくりと時間をかけて上がり続けていく。このため、20代は当然として、30代前半位まで特にCompetitiveといえる給与はもらえない。

② 三菱重工の入社年次、タイトルに伴う給与の推移

文系の場合、ほとんどが学部卒であろうから、初年度は全て込で350万円スタートとなる。3年目で450万円位にはなるが500万には到達しないだろう。4年目以降も、同じようにゆっくりとしたペースで昇給していき、6年目の28歳位で550万円位、10年目の32歳位になっても700万円に届くか届かないか位である。

そして、30代もゆっくりと上がり続け、40歳時点で900~1000万円になる。
40歳を過ぎて課長に昇格すると、年収はようやく1100万円位になり、課長のままだとMAXで1300万円位だろうか。

その1ランク上の部長になると、年収は1400~1600万円位となるが、部長になれるのは同期でも1割程度と厳しく、なかなか昇格することは難しい。

5. 三菱重工でのキャリア、転職について

文系の場合、三菱重工で大型プロジェクトに関わったとしても、特段競争力のあるスキルを身に着けることができるわけではない。経理、人事・労務、総務、法務・内部統制といったところが習得できるスキルであろう。

B to C型の消費財メーカーと違って、広告・宣伝というマーケティング的なスキルは身に付かない。また、ネット関連とか新規事業関連というスキルでベンチャーに行くということも考えにくい(むしろ、その対極のキャリアであろう。)

従って、転職を考えるというよりは、終身雇用は当たり前で、定年後の再就職の世話まで三菱に面倒を見てもらって、70歳まで働くというのが勝ち組ではないか?

6. 三菱重工に向いている人

メーカーなので、その会社の商品に興味があることが前提だろう。宇宙、ロケット、飛行機、造船といった重厚長大の世界に憧れのある人。
また、大型プロジェクトに関わる充実感・達成感を得たいという人には良いだろう(もちろん、プロジェクトの一員になれるに過ぎないのだが…)

それから、長い目で人生を考えることの方が、短期で転職を繰り返しキャリアアップを図るよりも好きだという人向きであろう。

なお、三菱重工は200人程度の総合職の新卒採用を実施しているが、その大半は技術系なので、文系の枠は20~50人位しかない。従って、皆が金融、コンサル、商社を見ている今なら良いが、金融やコンサルが採用を抑制することになり、文系がまとまってこちらを見るようになると入社は厳しくなることに留意しておいた方が良いだろう。

  • ブックマーク