1. 何故、国際協力銀行(JBIC)か?
① 前身が日本輸出入銀行(輸銀)の政府系少数精鋭エリート銀行
国際協力銀行とは、前身が日本輸出入銀行である、政府系の少数精鋭のエリート銀行である。何といっても、キーワードは「海外」と「エネルギー・天然資源」であろう。
国際協力銀行のミッションは、エネルギーや天然資源の安定的な確保と、日本企業の海外展開を応援することを目的とした政策的な金融機関である。
<国際協力銀行の機能と役割>
https://www.jbic.go.jp/ja/about/role-function/images/jbic-brochure-japanese.pdf
このため、「銀行」という名前はついても、メガバンクとは全く業務内容が異なり、リテール業務は行わず(そもそも国内には東京の本店以外には、大阪に一店舗あるのみである)、海外でもエネルギーを中心としたプロジェクト・ファイナンスがメインである。
② 役割としては、銀行というよりも商社やプラント業界に近い?
国際協力銀行が行っている業務内容を考えると、エネルギーや天然資源に係る海外インフラプロジェクトを金融面でサポートするのがメインであり、商社やプラント会社と協働することが多い。
このため、国際協力銀行を志望する者は、メガバンクや証券会社よりも総合商社とかプラント会社を併願すべきというのが筋かも知れない。
とはいえ、実際は、「海外」「プロジェクト・ファイナンス」「政府系」というステータス的なところに惹かれて、志望するトップ校の学生が多いのであろう。
2. 国際協力銀行(JBIC)の年収について
① 年収に関する全体観について
国際協力銀行の場合、年収については典型的な横並び・年功序列型であり、調査役位までは残業代以外には差が付かない。この点は、日銀、日本政策投資銀行と同様である。
重要な点は、日銀や日本政策投資銀行と比較して、年俸水準がかなり低いことである。
度重なる制度改革や公務員給与の下げ圧力の中、この10年間位で国際協力銀行の年俸水準はかなり下げられてしまった。
また、日銀や日本政策投資銀行と同様の点として、役員の年俸が民間に比してかなり抑制されているため、アップサイドは期待できないことである。
福利厚生も家賃補助等は充実しておらず、社宅がある程度であまり恵まれているとは言えない。
以上のように、国際協力銀行の年収面については、民間の大手金融機関だけではなく、他の政府系銀行と比べても差が付けられてしまっている点には留意しなければならない。
<日本銀行の年収、転職、キャリア等について>
https://career21.jp/2019-05-15-123211/
<日本政策投資銀行の年収、転職、キャリア等について>
https://career21.jp/2019-05-16-091710/
もっとも、海外には16か所の事務所が存在しているため、海外勤務のチャンスには恵まれている。海外に赴任した場合には、それなりの生活が保障される点はメリットである(もちろん駐在する国によって状況は異なるが)
② 国際協力銀行の年次、役職に伴う年収の推移
JBICの場合、法律に基づく形で役員報酬や職員給与を公開しているため、その資料を見るのが最も分かりやすい。
令和元年度版の資料によると、初任給レベルではメガバンクと大きくは変わらないが、20代の伸びは鈍い。30歳時点で500〜600万円くらいであり、大台はまだまだ遠い。モデル給与として、「35歳の調査役で年収約873.5万円」と記載してあり、その基準を鑑みても、40歳手前でようやく1000万円に到達できるかどうかというイメージだろう。
とはいえ、管理職になれれば給与は大きく伸びる面もあるようだ。マネージャークラスであれば、平均年収は1,450万円程度(平均45.2歳)だという。これならば、日銀や先ほど紹介したDBJと比べても遜色ない水準か。
年俸という魅力では他の機関にやや劣るところはあるものの、手掛ける仕事のスケール感や使命、海外勤務などを考えると魅力は十分ある。総合商社志望の就活生は、狙ってみても面白いかもしれない。
3. 国際協力銀行のキャリア、転職について
①外資系金融機関において国際協力銀行出身者はまず見られない?
国際協力銀行においては、海外、エネルギー・天然資源、プロジェクト・ファイナンスといった分野におけるスペシャリストとなる。
したがって、外銀のようなトレーディングやIBDといった領域とはスキルが異なる事になる。
また、有価証券の運用やマクロ経済動向分析を行うような業務では無いので、外資系運用会社(バイサイド)で活用できるようなスキルは期待できない。
このため、もともと採用人数が極めて少数なため母集団が小さいということもあるが、外資系金融機関において、国際協力銀行出身者にお目にかかることはまず無いのではないだろうか。
②基本的なキャリアプランは終身雇用?
業務における親和性は、IBDとかトレーディング・セールスよりも、総合商社やエンジニアリング会社の方が高いかも知れない。
英語、エネルギー、プロジェクト・ファイナンス、海外勤務経験というものがあれば、転職先を探すのはそれほど難しくないのかも知れないが、外銀とか国内系IBDで沢山お金を稼ぐというのとは方向性が異なるだろう。
また、海外進出をしている国内系大企業との業務がメインなので、ネット系ベンチャー企業とか独立起業路線とは方向性は異なるだろう。
基本的には終身雇用がメインシナリオなのだろうが、給与水準とか出世を目指してもアップサイドが限られている点は気になるところである。
4. 国際協力銀行(JBIC)の就職難易度について
日銀、日本政策投資銀行と同様であるが、国際協力銀行の新卒採用者数は特に少ない。
総合職については、15~20人程度である。2019年4月入社の総合職の人数は26人と以前よりは多いが、それでも、少数であることには違いない。
そして、政府系金融機関の特徴として、例外的に今でも国立、特に東大が強い。歴史的に政府系のステータスと就職偏差値の高さから、自信のある就職強者が集まるので、就職難易度としては最難関といっていいだろう。
もっとも、政府系のエリート銀行というステータス的なところに着目する学生が実際は多いのかも知れないが、狙ったところで内定を取れる保証は無く、むしろ、業務的には総合商社と併願するのがいいのかも知れない。特に、2020年初頭に生じたコロナウイルスの問題が、景気や雇用情勢に重大な影響を与えている。このため、トップ就活生が好む外銀・外コン・商社あたりの採用数が減少する可能性があり、そうなると、国際協力銀行についてもますます難化する可能性はある。
いずれにしても、国際協力銀行の内定を着実に取ることは極めて難易度が高いので、海外での資源・プラント事業という切り口では、総合商社やプラント企業を併願するのも一つの方策であろう。
5. 国際協力銀行への中途採用と転職エージェント
上記の通り、国際協力銀行に新卒で入社するのは非常に難易度が高い。それなら、中途採用はどうかというのが気になるところである。この点、国際協力銀行は採用活動に熱心な会社であり、中途採用についても実施しているが、何と言っても社員数自体が少ない小規模な組織である。このため、求人数自体はそれほど多くはなく、常時求人があるとは限らない。
そこで、戦略としてはなるべく多くの転職エージェントに登録して、気長にチャンスを待つということになる。国内系なので、リクルート、doda、マイナビ、パソナキャリア、エン・ジャパン、JACあたりには広く登録しておきたい。
また、金融に強いエージェントの中で、コトラ、アンテロープにも登録をしておいた方がいいだろう。
<コトラ>
<アンテロープ>
更に、大手の中ではJACは外資や金融にも強いので、ここも利用したい。登録はこちら(JACの公式サイト)
以上の様に、広く登録をしておくと、国際協力銀行の案件がたとえ来なかったとしても、他に優良案件に遭遇できる機会が拡がるので、面倒だがやっておきたいところである。