日本銀行への就活、年収、キャリア、外銀・外コンへの転職状況と就職難易度

1. 日銀の就活における位置付け

日銀というと、中央銀行であり、キャリアとしての最高峰という捉え方をされるかも知れないが、実は微妙なポジションにある。

東大法学部内部のヒエラルキーにおいては、実は日銀は必ずしも高位ではない。それは、「試験」が無いからである。東大法学部においては、伝統的に、法曹(司法試験)>官僚>民間企業という序列があった。法曹>官僚というのは、司法試験の方が国家一種試験よりも遥かに難しいからである。

そして、財務省、経済産業省あたりの上級省庁組からすると、日銀は試験が無いので、格下だという捉え方である。もちろん、他の民間企業である、メガバンク等の大手金融機関や商社よりは上位にランクされるかも知れないが…。

最近では、弁護士や官僚の人気低下に伴い、外銀・外コンが東大法学部の中でも人気が上昇してきた。このため、外銀・外コン>日銀、ということであり、「民間企業」というカテゴリーにおいても、日銀は最上位の位置づけではない。ここが、微妙なところである。更に、近年ではアップダウンはあるものの、商社の人気が東大生の間で高まってきている。このため、商社の中でも最高のブランドである三菱商事の評価は高いので、日銀の方が商社よりも明らかに上ということも言えないだろう。このあたり、20世紀と比較すると、就活における価値観も変わってきているようだ。

<東大法学部の就職と課題>

https://career21.jp/2019-03-06-065024/

2. 日銀の年次、役職と年収推移について(総合職)

① 全体観

日銀の場合、民間の金融機関と比べると横並び・年功序列の傾向が強い。企画役補佐まではほぼ全員一律で昇格できる。企画役から先は昇格格差があり、第一選抜で企画役にならないとその後の出世レースで逆転することはほぼ不可能となってしまう。

年収水準については、生涯賃金ベースで見るとメガバンクとほぼ同じくらいである。ただ、傾向としては若いうちはメガバンクの方が若干よく、企画役に昇格できれば若干日銀の方がメガバンクより若干良いというイメージであろうか。

② 年次、タイトルと年収推移

初年度の年収は残業代とボーナス込で400万円程度である。この点はメガバンク他大手金融機関と同じである。2年目には450~550万円、5年目で550~650万円というペースでこのあたりの昇給テンポが民間大手金融機関よりも若干遅い。

7~8年目の30歳時点では700~800万円位となる。
そして、30歳を過ぎると少しピッチが上がり、入社10年次の32歳位で1000万円に到達し、ほぼメガバンク並みとなる。ここまでは横一律であり、同期間での違いは残業代の多寡位である。

ところが、企画役への昇格から同期間での差が出来始める。
最短だと、入社12年経過後の35歳位で企画役に昇格できる。この時点で年収は1200万円位となる。企画役に昇格すると、その後もじわじわと上がり続け、45歳時点で1400~1500万円位の年収となるが、これぐらいで頭打ちである。

企画役から上は、参事役の部長、局長ということになるが、当然昇格のハードルは高くなる。日銀の部長、局長となると相当なステータスだが、総裁や理事という役員級の年俸が抑えられているため、民間企業と比べて見劣りしてしまう。この点、役職員の給与等が法令で決められてしまう政府系金融機関のつらいところだ。特に、2011年の震災の頃に、トップのポジションの年収が下げられてしまったので、局長とか部長の年収が、仕事の責任やステータスに比して特に割に合わない水準なのではないかと思われる。

<日本銀行の年収>

https://heikinnenshu.jp/other/nichigin.html

具体的には、日銀の部長で1700万円、局長で1900万円というレベルであり、大手金融機関の部長職と比べると負けてしまう。

なお、日銀の場合、ほとんど知られていないが手厚い年金制度があり、この点は、確定拠出年金(401K)中心の民間金融機関よりは優れている。
住宅については、一等地に社宅があり格安で借りられるが、建物や施設は正直ボロい。それが嫌なら、賃貸ということになるが家賃補助制度は無いので、ここは弱点である。

3. 日銀に入ってからのキャリア、転職について

①意外に外資系金融機関で見られる日銀出身者

意外なことに、外銀において日銀出身者はチラホラ見られる。採用人数がメガバンクや大手証券会社と比べて圧倒的に少ないことを考慮すると、結構な割合なのかも知れない。

業務的には、外銀のIBDでもグローバル・マーケッツとも被らないのであるが、海外への留学を機にアソシエイトレベルでポテンシャル採用で入ってくる人たちがいるからだ。

日銀の場合、当然海外一流校に枠があるので、ハーバード等のトップ級のビジネススクールやロースクールに留学させてもらえるため、アソシエイトレベルであれば、十分外銀に中途採用で転職することはできるのだ。実際、ゴールドマン・サックスのIBDにも元日銀という人はパラパラといた。

また、海外留学を起因としたポテンシャル採用以外にも、リーマンショック前にはコンプライアンス部門に入ってくる人たちもいた。中には、外銀のコンプライアンス部門のMDに就任した人達もいた。もっとも、リーマンショック以降は難しくなったかも知れないが。

②留学を機に、外コン(MBB等の戦略系ファーム)に転職する者も…

以上の様に、日銀の場合、外銀に転職をするというキャリアが存在する。同様に、マッキンゼー、BCGあたりも、東大・日銀・海外MBAというスペックが好きなので、戦略系コンサルに転職する者もいる。

③出世をすれば天下り的な転職も?

参事役まで昇格できれば、地銀とかその他の金融機関に50代半ば以降、天下り的な形で転職する人もいる。日銀出身者が頭取となる第一地銀も存在する。もっとも、この点については世間の風当たりも強くなってきているので、将来的にはあまり期待しない方がいいかも知れない。

多数は終身雇用ではあるが、結構外資系に転職する人達も存在しているのだ。この点は、何といってもスペックが格段に高いからだろう。

4. 就活における考え方と就職難易度

日銀の総合職の採用者数は、直近5年間は140~160人程度である。もっとも、この数字は特定職・一般職を包含したものなので、いわゆる総合職はずっと少ない。

総合職については2019年度が34人である。2018年度は33人、2017年度は33人、2016年度は33人、2015年度は32人と、安定して30人程度である。

このように、総合職については極めて少数しか採用しないし、何といっても東大(特に法学部)が幅を利かせている世界なので、東大生以外は、京大、一橋、早慶であっても肩身が少々狭いかも知れない。このため、当然であるが就職難易度は非常に高い。(もちろん、どうしても日銀が好きだというのであれば狙うべきだろうが…)

外銀・外コンに入れたらそちらがいいし、政府系金融機関という括りに惹かれるならば、農林中金の方が給与水準は高い。また、国内系というのであれば、国内系証券会社のコース別採用でIBDとかグローバル・マーケッツを目指した方がよい。

今後、大手金融機関が採用者数を抑制していくと予想されるので、金融志望の学生としてはあまり高望みをしたりせず、確実に内定を取れるところから押さえていった方が賢明だろう。

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