フィンテック系ベンチャー企業がそれなりの金額を調達している。
ここ数年、フィンテックという言葉が流行り始め、経済紙が時々特集を組んだり、投資信託でもフィンテックを投資対象としたテーマ型投資信託も販売されている。
また、このニュースのように、フィンテック系ベンチャー企業で二桁億円を調達済の起業も複数登場している。
証券ビジネスをプラットフォーム化するFinatextがKDDIなどから60億円を調達
他には、Folio、お金のデザイン、ウェルスナビが事業会社、金融機関、VCから数十億円規模の資金調達に成功している。
フィンテック系のベンチャーは既存の金融機関にとって脅威か?
経済紙の中には、フィンテックによって金融機関の仕事が奪われてしまうというトーンの記事もあるが、現時点ではあまりそうは思えない。
第一の理由が、こういったフィンテック系のベンチャーは既存の金融機関の本丸、主たる収益源を攻めていないからである。
例えば、こちらのFinatext社のケースであれば、主として個人投資家を対象に株式の手数料を無料で提供するというサービスであるが、既にネット証券が浸透し、既存の大手証券会社にとって株式の単純なブローカレッジ業務は収益の1割程度しかない端っこのビジネスである。
株式関係では、引受ビジネスやブロックトレードのようなビジネスは今でもそれなりの収益性があるが、Finatext社のサービスは引受ビジネスやブロックトレードを脅かすものではない。
証券会社における個人部門の最大の収益源は投資信託ビジネスである。投資信託の販売手数料が個人部門における収益の2-3割、投資信託における代行報酬(いわゆる残コミ)が2-3割を占めているが、ここはネット証券では全く歯がたっていない。
すなわち、営業社員という人が営業しないと投資信託は売れない商品なのだ。ネットという受身のビジネスでは買ってもらえないのだ。
ここをAI、AR/VR他何でもいいが高度なIT技術を使って、投資信託のネット販売を成功させるようなフィンテック系のベンチャー企業が登場すれば、既存の大手証券会社にとって脅威だが、残念ながらそのような企業は見当たらない。
そもそも、事業会社の大手と組んでも金融ノウハウは無い。
そもそも、フィンテック系のベンチャー企業自身が、既存の大手証券会社を脅かそうという気概はないと思われる。何故なら、FinatextはKDDIと、FolioはLINEと組んでいるがいずれも大手の事業会社である。KDDIやLINE自身には金融ノウハウは全くないし、大企業であるので頑張って野村證券や大和証券に勝とうというモチベーションは無い。
このテッククランチのコメントを見ても、
「5年以内に『ミレニアル世代向け証券会社No.1』となることを目指す」とあるが、この世界で5年間というのはものすごい先であり、ベンチャー企業にしてはすごく弱気だ。
結局、フィンテック系で一番将来が有望なのは、ビットフライヤーを始めとする仮想通貨交換ビジネス関係なのだろうか?