2019年に東大の文1と文2が逆転。これによる進路や就活の影響について予想してみる。

序. 2020年には文1が文2を再逆転

2019年度の大学入試において、東大の文科Ⅰ類(文1)を、文科Ⅱ類(文2)が逆転したことが注目された。ところが、2020年度の入試においては、文1が文2を再逆転する結果となった。

https://juken.y-sapix.com/articles/11032.html

もっとも、その差は僅差である。この要因としては、前年度に文2が難化したことの反動と捉える考え方もあり、来年以降は再び、文2が最難関の座に返り咲く可能性もある。

従来は、東大文系と言うと、文1が明らかに最難関だったので、このあたりの変化について以下検討したい。

1. 2019年度入試においては、東大の文1と文2が逆転。文2が文1を上回る

2019年度の大学入試で密かに話題になったのが、国内文系の最高峰として長年君臨してきた東大の文科Ⅰ類(文1)を、文科Ⅱ類(文2)が逆転したというニュースだ。
文2が文1を、合格者最低点、最高点、平均点の全てで上回ったという。
(なお、まとめ記事についてはこちら)
https://matomame.jp/user/FrenchToast/c09b6d19b6e5e7897205

2. いずれは文2が文1を逆転しそうな兆候が既に存在していたようだ

何故、2019年度入試において、文2が文1を逆転したのかという背景については、文1に合格した大変の学生が進学する法学部が、法曹と官僚の人気低下に伴い、それに連動して法学部の人気が低下していったからというのが定説のようだ。

その兆候として、東大法学部の学内における進路振り分けの際に、定員割れをしていたというニュースが既にメディアでも取り上げられている。
https://diamond.jp/articles/-/27489

他方、世の中の流れとして、若い時から高給がもらえ、スキルが身に付く職業が人気となっている。その典型が、外資系証券会社(外銀)と外資系コンサルティング・ファーム(外コン)であるが、経済・社会の動きに敏感な東大経済学部(文2)の学生は入学後早い段階からきっちりと準備をして対応している。

東大法学部の場合、法律の専門科目は単位を取るのが大変なので、法曹や官僚を目指さず外銀・外コンなどの民間企業を目指すのであれば、これは負担となる。

そういった点でも、文1の人気が低下していったのだろう。

3. 東大の文2が文1を逆転したことによる進学・就活への影響

文2が文1を逆転したといっても、その影響がすぐに拡がるわけではないだろう。逆転したのは2019年が初めてで、文2>文1が固定化されたわけではなく、長い間文1がトップであった歴史もあるからだ。実際、2020年度入試においては文1が文2を再逆転する結果となった。

もっとも、法曹と官僚の人気低下という逆転の背景となる状況は、今後も継続すると見込まれ、5年後、10年後を見ると、文2>≒文1という傾向が固まっていくのではないだろうか?

そういった場合、どういった影響が出るかということだが、従来文1から法曹・官僚を目指すような受験生のうち、トップ層は、文系自体に見切りをつけ医学部に進路転換する者も出てくるのではないだろうか?
灘、筑駒、開成といった超トップ校では、本当は経済の方に興味があっても、偏差値・ブランド的な観点から、文系トップ層は文1を受験するようだ。

しかし、文1が文系トップというブランドを失ってしまうと、より実質面を重視して、医師免許という職業に紐づいた医学部を志向しても不思議ではない。もちろん、文系なので理3というわけには行かないだろうが、千葉大学医学部、横浜市立大学医学部、筑波大学医学部、慶應大学医学部、慈恵医大あたりなら射程圏では無いだろうか?もちろん、早めに転換する必要はあるのだろうが。

就職という点においては、トップ学生の法曹・官僚離れがより顕著になっていくだろう。法曹については、東大法学部の場合、大手渉外系法律事務所のパートナーという勝ちパターンが残っているので、それほど極端に法曹志望者は減らないかも知れない。
しかし、官僚についてはステータス、収入、天下り、やりがいと何を取っても更に悪くなる要素はあっても、良くなる要素は見当たらない。このため、東大生の官僚離れは行きつくところまで行くのではないだろうか?

そうなると、法曹・官僚志望者がどこに流れるかというと、結局、外銀・外コンということになるのだろう。日本人、特に受験秀才の場合は一番難しいものに挑戦するのが好きだからである。
外銀の場合、経済環境によって雇用事情は大きく左右されるが、欧州系の投資銀行は厳しい状況にあり、新卒採用の枠が拡がるとは思えない。そうなると、一学年につき業界全体で100人程度の枠を巡って厳しい競争が展開されることとなる。

外コン、特にマッキンゼー、BCGに代表される戦略系については、従来は業界全体の新卒採用者数が数十人レベルであったのが、今ではMBB、ATカーニー、ローランドベルガーあたりの合計で100人以上になっているようだが、更なる採用枠の拡大は難しいのではないだろうか。

一番望ましいのは、東大法学部の優秀層が起業やベンチャー企業を目指すようになると、日本の産業界も活性化されるかも知れないが、そこに至るにはまだまだ時間がかかりそうだ。

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