1. 大手金融機関以外のキャリアプランも考えたい
東大や早慶に代表される文系のトップ学生は、外銀・外コン・国内金融機関のコース別採用・総合商社に挑戦し、ダメであればメガバンク等の大手金融機関に就職するというのが近年の傾向である。
ところが、この5年間、大量採用をしていたメガバンクも新卒採用を大幅に抑制する方向に切り替えた。
そうなると、金融機関でのキャリアを考えても、外銀や国内系金融コース別は狭き門であり、大手金融機関の総合職までも難化するとなると、他のキャリアとしての選択肢は無いか考えたくなるだろう。
しかし、内定を取れる可能性があり、安定・高給な業界・企業というのはなかなか見つからない。
https://career21.jp/2019-05-08-111317
そこで、今回は金融以外の選択肢として、広告プロフェッショナルとしての途を考えてみた。
2. 何故、広告代理店か?
それは、金融プロフェッショナル以外で、将来転職に有用なスキルを習得することが可能だからである。
広告・宣伝というのは、どんな業界・会社にとっても必要であるし、モノやサービスの機能面での差別化が難しくなると、宣伝・広報・ブランドといったスキルの重要性が将来高まると考えられるからである。
特に、将来成長が見込まれるAI・IT関連の業界においても、広告・宣伝は重要な機能の1つであり、広告・宣伝に係るプロフェッショナル・スキルを有していれば転職の可能性が高くなると考えられる(Google、Facebook、Yahoo等はいずれも広告がメイン業務である。)。
従って、広告・宣伝のプロフェッショナル・スキルを取得して、転職を前提とした上で、ADKや東急エージェンシーを就職先として考えることは十分な理由があるだろう。
3. 何故、ADKと東急エージェンシーか?
広告業界におけるトップは、電博であるが、両社については何といっても内定を取るのが大変難しい。従って、電博にフォーカスするのはあまりにもリスクが高い。そこで、電博の次に位置する、大手のADKと東急エージェンシーを狙おうという発想だ。
広告代理店というのは、電博のイメージが強いが、中小企業も多く、ピンキリの業界である。将来、転職スキルを身に着けようと思えば、ある程度の優良案件に関与でき、一定以上のネームバリューが必要になる。
そこで、ADKと東急エージェンシークラスであれば、案件の内容やネームバリュー的にOKだろうということである。
4. 将来のキャリアプランについて
勿論、無理に転職を考える必要は無いし、その会社で出世を狙うという考えもある。ただ、後述するが、両社ともに30歳を過ぎると給与的に伸び悩むという問題点がある。そこで、より上の待遇を求めるのであれば、転職を考えた方が良い。
もっとも、理想的なのはGoogle、Facebook等の外資系インターネット企業である。給与水準、ステータス的に申し分ない。
それ以外には、外資系事業会社、国内系大手事業会社の広告・宣伝部門も考えられる。
更に、ベンチャー企業への途も開かれている。リスクを取る代わりにストック・オプションで大成功したいという山っ気のある人は、IPOを目論む勝ち組ベンチャー企業に上場前にもぐりこむという手もある。
Wantedlyで検索を掛けると明らかだが、広告・宣伝系のポジションは少なからず存在し、じっくり探せば面白いポジションが見つかる可能性は十分にあるのではないだろうか。
5. ADKと東急エージェンシーの年収水準について
① ADKの年収水準
ADKの場合、最初の3年間は残業代が青天井である。
このため、初年度から年収は500万円を突破できる。
そして、入社3年目には、残業代次第だが600万円に到達可能である。
ところが、入社4年目以降は鈍化し、入社5年目で650~700万円程度となる。
30歳になると700万円は超えるかも知れないが、そこからの伸びは極めて鈍い。
金融機関でいう課長(調査役)に該当する部長になると、750~850万円程度になるものの、1000万円にはまだまだ到達できない。
40歳位で、金融機関で言うところの次長・担当部長クラスに該当する局長クラスでようやく1000万円、その上の副本部長・本部長クラスで1200万円~というところだが、なかなかそこまで出世するのは容易ではない。
本来は、もう少しADKの給与水準は高かったのだが、リーマンショックを境にボーナスの水準が大きく下がってしまったのが原因だ。今では、決算賞与という制度があるが、それは決算次第であり、不安定要素である。
また、家賃補助といった福利厚生が特に無いので、この点を踏まえると大手金融機関と比べると厳しい状況にある。
② 東急エージェンシーの年収水準
東急エージェンシーの年収水準についても、割とADKと似ている。要するに、若い時は残業代で稼げるが、30歳を過ぎると鈍化してしまうということだ。
近年の働き方改革によって残業代が抑制されると、実質的に年収が減ってしまうため、この点は不安要素である。
東急エージェンシーの場合も、残業代がメインであるが、初年度から500万円を突破し、3年目には600万円、30歳で800万円位になる。
しかし、残業代が付かなくなる30代半ばになると、年収がかえって減ってしまう人もいる。残業代が多い32-34歳位で1000万円近くいっていた人が、残業がつかなくなると、年収が200万円位減ってしまったというケースもある。
管理職である、部長(金融でいう課長)の年収が850~900万円、その上の局長になると1000万円~というところであろうか。ただ、部長にはなれても、局長クラスにはなかなか昇格できない。
この両社を比べると、業界ステータス的にはADKが上だが、年収的には同じか、若干東急エージェンシーの方が良いのではという話もある。
6. ADKと東急エージェンシーからは内定をもらえるのか?
電博はともかく、上位校の学生であれば、ADKか東急エージェンシーからは必ず内定をもらえるかというと、残念ながら答えはノーである。
両社ともに採用人数は少なく、給与水準的には電博に見劣りするが、それでも大手代理店なので学生からの人気が高いからである。
そうなると、ネット系代理店とかベンチャー企業、或いは異なる業界も併願する必要がある。ここが広告代理店を狙った就活の難しいところである。
最後に
金融やコンサルだけがキャリアではない。
広告・宣伝というのは確固たるスキルであり、普遍性が高く、将来も有望なプロフェッショナル・スキルとなる。
このため、この業界を狙ってみるのも面白いのだが、最大の問題点は内定を取るのが難しいことである。ADKや東急エージェンシーも難関であり、ダメだった場合に他というわけには行かない。
電博に加え、この両社からも内定を取り損なった場合のプランBをどう考えるかについて詰めておかないと、リスクが高くなってしまう。